スローテンポで愛して

木崎 ヨウ

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思わぬ再会7

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「あれ…カシスオレンジですか?」
「そうです。さっき弟が作ってくれて。すみません、お水いただけますか?」
「はい、お待ちください」
 副島は、グラスにミネラルウォーターを注いで出してくれた。それを受け取りながら、
「あの…弟の事、すいません。気を使っていただいて…」
 と日和は頭を下げる。
「いえ、余計な事をしたかと思ったんですけど…、大丈夫でした?」
 そう聞かれたので、日和は水を飲みつつ頷いて、
「思ったより…、大丈夫でした」
 そう答えると、思わず苦笑いが零れる。
「実は…、助けて貰ったときに、名刺を頂いたでしょう? なんだか似てる名前を知ってるなって思って…。それで、履歴書確認してみて、もしかしたらって思ってたんです。そしたら…実際に二人があの感じだったんで、つい」
「そうだったんですか…」
 あの時、副島が日和の名刺を見つめていたのにはこういう訳があったのか、と納得する。
「そういえば…、副島さんって…ホストなんですか?」
 日和がそう聞くと、副島はバツの悪そうな顔をして、
「いや、今はもう引退してまして…、ここでバーテンダーしながら隣のオーナーをしてます。隠してたのは…何となくその…元ホストだったって言いづらくて…」
 日和は、副島のコミュニケーションスキルの高さが元ホストだったからなのか、と妙な所で納得してしまった。
「副島さんがホストしてたって言われて、なんか色々納得しました」
「えっ?!」
「あ、いえ、変な意味ではなくて…。その、コミュニケーションスキルの高い所とか、仕草とか…そういうのを、ホストをしてた時に培った物なんだなって思ったら、合点が行ったというか」
 副島は苦笑しつつ、頭を掻いた。
「なんか…恥ずかしいです」
 目を逸らした副島の頬は、ほんのりと紅潮していた。
「あ、あの…」
「ん?」
「日向の事、ありがとうございます。色々、していただいたんだと思うので」
 露骨に話を変えると、副島も仕事モードに切り替えて、それに乗ってくれた。
「私は何もしていないですよ?」
「いえあの、日向がバーテンダーの修業させてもらってるって聞いたので」
「ええ、少し前から突然そんなことを言い出して、時々教えてるんです。ヒュウガ、店のナンバー3なのに、勉強熱心で」
 日向の人気の高さに驚く。
 日向は子供のころから人タラシな所があり、大人や女性の懐に入り込むのが上手かったからな…などと思っていると、副島が、どうぞとグラスを差し出してくれた。
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