スローテンポで愛して

鈴茅ヨウ

文字の大きさ
上 下
37 / 108

思わぬ再会7

しおりを挟む
「あれ…カシスオレンジですか?」
「そうです。さっき弟が作ってくれて。すみません、お水いただけますか?」
「はい、お待ちください」
 副島は、グラスにミネラルウォーターを注いで出してくれた。それを受け取りながら、
「あの…弟の事、すいません。気を使っていただいて…」
 と日和は頭を下げる。
「いえ、余計な事をしたかと思ったんですけど…、大丈夫でした?」
 そう聞かれたので、日和は水を飲みつつ頷いて、
「思ったより…、大丈夫でした」
 そう答えると、思わず苦笑いが零れる。
「実は…、助けて貰ったときに、名刺を頂いたでしょう? なんだか似てる名前を知ってるなって思って…。それで、履歴書確認してみて、もしかしたらって思ってたんです。そしたら…実際に二人があの感じだったんで、つい」
「そうだったんですか…」
 あの時、副島が日和の名刺を見つめていたのにはこういう訳があったのか、と納得する。
「そういえば…、副島さんって…ホストなんですか?」
 日和がそう聞くと、副島はバツの悪そうな顔をして、
「いや、今はもう引退してまして…、ここでバーテンダーしながら隣のオーナーをしてます。隠してたのは…何となくその…元ホストだったって言いづらくて…」
 日和は、副島のコミュニケーションスキルの高さが元ホストだったからなのか、と妙な所で納得してしまった。
「副島さんがホストしてたって言われて、なんか色々納得しました」
「えっ?!」
「あ、いえ、変な意味ではなくて…。その、コミュニケーションスキルの高い所とか、仕草とか…そういうのを、ホストをしてた時に培った物なんだなって思ったら、合点が行ったというか」
 副島は苦笑しつつ、頭を掻いた。
「なんか…恥ずかしいです」
 目を逸らした副島の頬は、ほんのりと紅潮していた。
「あ、あの…」
「ん?」
「日向の事、ありがとうございます。色々、していただいたんだと思うので」
 露骨に話を変えると、副島も仕事モードに切り替えて、それに乗ってくれた。
「私は何もしていないですよ?」
「いえあの、日向がバーテンダーの修業させてもらってるって聞いたので」
「ええ、少し前から突然そんなことを言い出して、時々教えてるんです。ヒュウガ、店のナンバー3なのに、勉強熱心で」
 日向の人気の高さに驚く。
 日向は子供のころから人タラシな所があり、大人や女性の懐に入り込むのが上手かったからな…などと思っていると、副島が、どうぞとグラスを差し出してくれた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

家族になろうか

わこ
BL
金持ち若社長に可愛がられる少年の話。 かつて自サイトに載せていたお話です。 表紙画像はぱくたそ様(www.pakutaso.com)よりお借りしています。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

どうして、こうなった?

yoyo
BL
新社会として入社した会社の上司に嫌がらせをされて、久しぶりに会った友達の家で、おねしょしてしまう話です。

処理中です...