スローテンポで愛して

鈴茅ヨウ

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思わぬ再会6

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 同じ親に、同じように育てられたのに、日和はすっかり卑屈に育ってしまったのに、日向は穏やかで人懐っこくて人の懐に入り込むのが上手い。それはホストとしてはすごく良い武器になったんだろうな、と日和は思った。
 二人でグラスを合わせて、一口飲んだところで、奥の扉が開いた。
「ヒュウガさぁーん! すいませーんっ! 緊急事態です! ヘルプ~!」
 そう声がかかった。
「ヒュウガ?」
「僕の源氏名。ヒナタを読み替えてヒュウガ。カッコいいでしょ?」
「十八歳がつけた、って感じの名前だな」
「あははっ、ごめん、呼ばれちゃったから、ちょっと行くね。オーナーに戻ってきてもらえるように声掛けるから」
 グラスの中に残ったビールをぐいぐいと飲み干して、日向はグラスを置いて奥の扉に向かった。
「これ飲んでのんびり待ってるから、無理しないでいいよ」
 日向が作ってくれたカシスオレンジのグラスを示して、そう伝えると、
「ごめんね。あっ、暇つぶしにだれか寄越そうか? みんなやかましいし、ヤローばっかりだけど!」
 と聞かれた。
「いや、いい…。俺…基本的にコミュ障だから…知らない人と話すの無理…」
 そう返すと、日向は笑った。
「解った。ゆっくりしてってね!」
 手を振って扉の向こうへ消えていく姿を眺めながら、日和は妙な感心をしていた。
 ちゃんとやってるんだな、というか…人に頼られるような感じになってるんだな…というか。
 それにしても、子供の頃に甘い物が好きだったことを覚えておかれたのは少し恥ずかしい。
 実はあの頃だって、別に甘い物が欲しかった訳では無い。親にご褒美としてねだるのに解りやすく、勉強に関係のない物は、チョコレートなどの甘い物だったと言うだけの話だ。
 日向の作ってくれたカシスオレンジは、今の日和には少し甘くて、日和は水を貰っておかなかった事を後悔した。それでもほとんど飲み終わるころになって、ようやく副島が戻って来た。
「よかった、三上さん帰っちゃったかと思った…。…本当にすいませんでした…!」
 少しだけヨレっとした感じになった副島はすごく謝ってくれた。
「いえ、良いんです、お仕事ですから、謝らないで下さい」
 慌ててそう言うと、副島は顔を上げた。
「…僕の馴染みのお客様でね、僕が出ないとすごい辛辣なんだよね…。まあ…僕が出ても辛辣なんだけど、かなり稼がせて貰える人だから無下に出来なくて」
「大変ですね…」
 副島は苦笑いをして、日和のの手元に置かれたグラスに少し残ったカクテルを見て首をかしげた。
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