スローテンポで愛して

鈴茅ヨウ

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思わぬ再会5

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「だってさ、母さんも父さんも…、褒めたり可愛がるのは日和ばっかりでさ…。僕の事はチャラチャラしてるだの、不真面目だの…、ろくな友達がいないからそんななんだだの…」
 少なくとも、日和の記憶の中では、日向をそんな風に評価しているところを見たことが無い。勘違いだろうと思って、日和は自分の記憶の中の事を話した。
「そんなわけないだろう? 日向は俺よりもテストの点数も優秀で、友達も多いのに、お前は友達も少なければ勉強も大したことないって…俺に言ってたぞ」
 それを伝えれば、今度は日向が驚く番だった。
「えぇ!? 確かに僕、友達は多い方だったかもしれないけど…、日和にテストで勝ったの一回きりだよ? それも、中学の時の一回目の中間テストの時」
 二人して、お互いの記憶の中と相手の記憶の中に残っていることが違いすぎて、驚きと戸惑いを隠せない。
「…そんなわけ…」
「ほんとに、あの時以来、僕一位なんか取ってないよ。完全に英語で躓いちゃったからいつも英語が赤点だったし…」
「…じゃあどうして…、父さんたちは…あんなことを…」
「…僕達をケンカさせたかったのかな?」
「いや…もしかしたら、双子同士でライバル視させて、切磋琢磨とか、そういうのを期待していたのかもしれないけど、方法が全く間違ってたパターンだな…」
 二人して顔を見合わせる。どちらともなく、笑いが零れた。
「僕さ、ホント言うと…ずっと日和と仲良くしたかったんだけど…、父さんと母さんの手前、どうして良いか解んなくて」
「俺は…ずっとお前だけが親に可愛がられて狡いなって…俺は頑張っても誉められないのに、日向ばっかり誉められて可愛がられて狡いって…思ってた」
 日向は肩をすくめる動作をして、天井の方に視線を向けた。
「たった二人の、しかも双子の兄に、ずっと好かれてないってしんどかったなぁ…」
「悪かったよ…。日向が話しかけてくると、同情されてるような気がして惨めな気持ちになるから…辛く当たってた」
「そうね。仲良くしたかったから話しかけてたんだけど…上手く行かなかったな」
「…まあ…俺も仲良くしようって気持ちにならなかったから…冷たくしてたんだ。…俺たちが仲良くしないように仕向けられてたようなもんだから、仕方なかったんだな」
「それもそうね。じゃあさ…今日、仲直りしようよ、日和」
 日向が自分にビールを注いだので、
「お店の、勝手に良いのかよ」
 と突っ込むと、
「ちゃんと売り値払うもん。ねぇ、仲直りの乾杯しよーよ」
 と日向は笑った。
「…別に喧嘩はしてないだろ」
「いーじゃん、誤解が解けたからこれから仲良くしましょーよっていう乾杯! ね?」
「解ったよ」
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