スローテンポで愛して

鈴茅ヨウ

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思わぬ再会4

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「そもそも共通の友人なんかいない俺とお前の間に、誰に入って貰うって言うんだ」
「うーん? オーナーとか」
「馬鹿! 副島さんにそんな迷惑かけられるわけ無いだろ!?」
「えっ、なんでオーナーの本名知ってるの?」
「今、そんな事、関係ないッ!」
「怒鳴んないでよー」
 へらへらと笑われて、とうとうカッと頭に血が上る。けれどそこでさらに怒鳴り返したら日和の負けだ。そう思って、無理やり飲み込んだ。
「…ほんとに…お前と話をしていると、自分を見失うよ…」
 どっと疲れてしまって、日和はさっきまで座っていたイスに舞い戻った。
「…はい、どうぞ」
 いつの間に作ったのか、目の前に濃い赤紫とオレンジ色の二層に分かれたカクテルが置かれた。
「なんだよ」
「カシスオレンジ。日和、甘いの好きだったよね? 僕ね、いまオーナーに頼んでバーテンダーの修行もさせてもらってるの。だから、どうぞ、おごり」
 混ぜてね、とジェスチャーされて、すっかり毒気を抜かれてしまった日和は、おとなしくそれを混ぜながら、
「…なんで、そんな事してるんだ?」
 と、聞いた。
「あー…ははっ、三十三でホストもね、なかなか厳しいからさ。…あー、手に職、的な?」
 そう言って笑う日向の顔は、子供の頃のそれとあまり変わっていないように感じた。
「…ふぅん」
「で、まあ…、連絡しなくて悪かったよ。家出したから連絡しづらかったし…、父さんから聞いてるもんだと思ってたから」
「喧嘩するみたいに出ていって、お前がホストになって風俗で働いてるとか、そんなようなことは言ってたけど…、ハッキリとどこで何してるかは聞いてない」
 父親からそんな風に言われていたことに驚いたような表情の日向は、すぐに笑顔を張り付けた。
「さすが父さんだな…。ホストクラブは風俗とは違うのに。十八で家飛び出して、ここで二年間住み込のボーイやって、二十歳から正式にホストにしてもらえたんだ」
「…そうなのか」
「うん。なんだかんだ、日和と話すのも…十五年ぶりくらい?」
「そうだな」
「あの…ごめんね、色々と。家の事とか…」
「謝るくらいなら、ちゃんとしてくれ」
「うん…。でもなんか…、その…家にいるのとか、嫌になっちゃって」
 日向が少し困ったように笑ったので、日和は「日向はあんなに親から愛されていたのに何を言っているんだ」と思ってしまった。
「…は?」
 聞き返す声が、つい強くなる。
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