スローテンポで愛して

鈴茅ヨウ

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思わぬ再会2

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「簡単ですよ。レモンを砂糖で一週間くらい漬けて、それを炭酸で割ってるんです」
「へえ…! すごいですね…! 俺、料理全然出来ないこら、すごいと思います」
「そんなそんな。料理って言えるほどの事はしてないです」
「でも、これだけ出来たらすごいですよ」
「ふふっ、ありがとうございます」
 そんな風に話していると、店の奥の扉が開いたようだ。扉の向こうから、この店には不似合いなほどの派手なBGMが流れ込んでくる。
 何だろうと思ってそちらの方を向く。そして扉が閉まると音は消えた。それと同時に、濃い赤のスーツに黒のシャツ、金髪の派手な格好の男が走り込んでくる。
「すいませーん、オーナーをご指名のお客様来ててちょっと困ってるのでヘルプしてください…って、あれ?」
 その男は日和の顔をみて、驚いた顔をした。
 そして、日和の方も同じように驚いた。
 一瞬、二人の空気が凍り付いた。
「……ひなた…か?」
 そこに居たのは十八の時に家出して、それっきり連絡も寄越さずにいた双子の弟、日向だった。
「あれぇ? なんだ、日和じゃん! え、何でここにいるの…?」
 日和に対して、多少気まずさがあるのだろう、視線を逸らしたままで日向がそう聞いて来た。
「…それは俺のセリフだ! どこで何してるか、なんの連絡もしないでお前は…!」
「あれっ? 言わなかったっけ、僕ね、ここで十八からずっと働いてるのよ」
「……そんなの、聞いてない」
「そうだったっけ。あの時は色々あったからさ…ごめんね。…っと、積もる話もあるんだけど、今はちょっとヤバイから、また今度ね! ちょっとオーナー借りてくから!」
 副島の手を引っ張る勢いで連れて行こうとする日向に、副島は困った様子だ。
「なんだよもう。こっちだって営業中なんだよ」
「それは解ってるんですけどっ! 篠原様がきてるんだ…。来るなり『ヒロを出せ』『ヒロを連れてこい』って聞かなくて…。お願い、オーナーが早く出てくれないと、篠原様が暴れそうなんだよ。ナンバーワン宛がったって文句言うんだから、あの人…」
「篠原様かぁ…、あー、じゃあちょっとここ閉めてから行くから待たせておいて」
「はぁーい、なるはやでお願いしますよ。あ、日和、ゆっくりしていきなよ~」
 のんきな顔で手を振られて、日和は行き場の無い感情をどこにもぶつけられなくて、奥歯を噛み締めた。
 扉をあけ、看板をクローズにした副島が戻ってきて、
「すみません、ちょっと行ってくるので、これどうぞ」
 そう言いつつ、日和の前に黒ビールとチョコレートが置かれた。
「席外すので、お詫びです」
 そう言うなり、副島は止める間もなく店の奥へと消えていった。
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