スローテンポで愛して

鈴茅ヨウ

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浮かれているかもしれない6

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ふふっ、と副島が笑った。でもそれはバカにした感じではなくて、目を細めて、まるで小さい子供や動物を見た時の様な笑い方だ。
「僕さ、こういう店で働いてるでしょ? そういう繋がりの仲間って、遊び方も派手だし、騒がしいやつらも多いから、楽しいは楽しいんだけど、正直、ちょっと疲れる時があってさ。でも、今日三上さんと過ごしてて、なんかこう、のんびりできたな~って気がしたんだよ」
 薄く笑みを浮かべて、首を傾げる様子がとても絵になるな…と関係ない事を考えながら、日和は、
「実は昨日、電話を貰ってから…副島さんと遊ぶの…、俺で大丈夫なのかなって不安で、ずっと。そう言って貰えると…ちょっと安心しました」
「ちょっとだけ?」
「はい。本当に人付き合いド下手なので…」
 そう言いながら日和が俯くと、副島はカウンターに頬杖をついて、
「それはさぁ…」
 と区切って言った。それは、今日聞いた中でも一番低めのトーンで、日和は思わず副島を見る。
 ぱちり、と、視線が合った。
「三上さんの良さに、周りが気づかなかっただけじゃないのかな?」
 さらさらの茶髪が傾げた首の方にするりと集まって、日和はそのしぐさに、なんというか、ゾクッとした。これが、水商売のコミュニケーションスキルか…! と思ったが、そんなスキルを日和相手に発揮されても困る訳で…。
「買いかぶりです、そんなの」
 首を振る。副島は面白そうに声を上げて笑っていた。
「まあでも、どう? 僕と友達になれそう?」
「はい。…俺で大丈夫って言って貰えたので、俺の方はぜんぜん、平気です。有りがたいです」
 副島は楽しそうにしながらカウンターの中に戻って、半分ほど減った日和のグラスにお茶を継ぎ足してくれた。
 その後、副島から夜ご飯も一緒にどうかと誘われたが、月曜日は朝から会議が入っていたので、早めに眠りたくて、夕方には帰るつもりでいた事を話して、断ってしまった。
 副島は、
「楽しみはまた今度に取っておこうね」
と笑ってくれた。日和はせっかくの誘いを断ってしまったのを、申し訳なかったなと思った。
 なんだかこの日曜日は、すごく充実していて、こんなに時間が経つのを早く感じたのは、初めてだったかもしれない。
 日和は、家に着いてから副島にメールを入れた。
『せっかく夜ご飯も誘ってもらったのに、ご一緒出来なくてすみませんでした。今日はとても楽しかったです。良かったら、また遊んでやってください』
 と、メールを送った。
 するとすぐに、
『こちらこそ、とっても楽しかったです。また今度飲みに行きましょう』
 と返って来た。
 副島からのメールを読んで、日和は副島にまた遊んでもらえたら嬉しいと、素直にそう思った。
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