スローテンポで愛して

鈴茅ヨウ

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浮かれているかもしれない5

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 長い時間を過ごしたと思っていたが、まだ十五時を少し回ったくらいのところだった。
「あのさ…、今日ほんとに僕が好き勝手に連れまわしちゃったけど…、三上さんはちゃんと楽しかったかな?」
 バーのカウンターでお茶を貰いながら涼んでいると、副島が心配そうに聞いて来た。
「えっ…っと、楽しかったです。あのショッピングモール初めて行ったし…、一人暮らしの準備するのも、食器とか雑貨を見て回らなかったので…、それに、本屋も必要な物以外、じっくり回ることあんまりなくて…」
 言いながら、日和はだんだん自分が本当に何にもない事にショックを受ける。
「…初めて見るものとか、たくさんあったので、すごく楽しかったです」
 日和の顔に、ぎこちない笑みが浮かぶ。副島は、日和のその言葉を聞いても少し不安が残っているような表情をしている。
「それなら…良かったけど…」
「あっ、あの、俺…あんな風に、と…友達とハンバーガー食べたのも初めてだったので…すごく…たのしかったんですけど…」
 副島の人生では、そんな事は日常茶飯事だったのだろう、とても驚いた顔をしているので、日和は困ったように笑うしかない。
「俺…リアクションとか会話が上手くないから…、副島さんを退屈させたんじゃないかって、そっちが心配です」
 日和がそう言うと、副島は何か言いたそうな表情で日和を見つめていた。やっぱりつまらなかったのだと思い、日和が慌てて謝ろうと頭を下げた時、
「すいません、つまらない思いをさせてしまって」
 という言葉と、副島が何か言ったのが重なった。
「えっ?」
 日和は下げたばかりの頭を上げて、聞けなかった言葉を催促するように首を傾げた。
「…あ、うん、重なっちゃったね。いや、全然退屈なんかしなかったから大丈夫だよって言ったんだよ」
「…そう、ですか…それならよかったんですけど…」
 副島が気を使ってそう言ってくれている可能性だってある。でも、それでもそんな気遣いをしてくれること自体が、嬉しかった。
 すると、副島もカウンター側にお茶を持って出てきて、日和の隣に腰を掛けた。
「三上さんってさ、大らかというか、時の流れが人と少し違ってるんだよね。なんていうか…、あくせくしてないって言うか」
「それは…空気が読めない的なアレですか?」
「そうじゃないよ」
「…友達が全然いなくて、人付き合いの仕方を知らないので、俺にはそういうの…、よくわかりません…」
 視線がどうしても下を向いてしまう。良くないと日和は解っているのに、どうしても副島の顔を直視できない。
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