スローテンポで愛して

木崎 ヨウ

文字の大きさ
上 下
21 / 108

日常が波立つ2

しおりを挟む
 土日はただ家でぼんやり過ごしたり、社内で資格を取る必要があった時は勉強して過ごしたりしていたからだ。
 帰りの荷物を増やしてしまった事を少々失敗したと思いながら家に帰って、冷蔵庫にジンジャーエールとビール、いつも使っているグラスを入れて、冷凍庫にはガーリックトーストをしまう。
 冷凍庫を開けて気づいた。少し前に買った、冷凍のチャーハンと餃子と、から揚げが入っている事に。
 味の濃いものならシャンディガフに合うかも…と思いながら、昼ご飯に冷凍のチャーハンをレンジで温めたついでに、唐揚げも温めて置いておく。
 食事を済ませて、本屋で買って来たカクテルの本を開けた。色とりどりのカクテルはどれも綺麗な色で、眺めているだけで楽しかった。
 シャンディガフの項目を読み、そろそろ冷えただろう材料たちのところへ行く。
 冷凍庫からガーリックトーストを取り出して、トースターに入れ、シャンディガフは本には一対一で割ると書いてあったので、なんとなくその通りに作ってみる。
 唐揚げとガーリックトーストにシャンディガフ。なんだか妙な取り合わせの様な気がしたが、とりあえず完成だ。
 昼間っから呑むなんて、なんて贅沢。そんな風に思いながら、日和はまずシャンディガフをひと口飲んだ。
「…あれ…?」
 ジンジャーエールの甘みの所為でビールの苦みが際立って、…美味しくない。ガーリックトーストもかじってみたけれど、なんだか油っぽくてちっとも美味しくなかった。
 勿体ないので全部飲んだが、普通にビールと唐揚げを食べたのが一番美味しかった。
「…やっぱり、プロの人がちゃんと作ったののほうが…美味しいな…」
 日和はそう呟いてから、残ったジンジャーエールを飲みながら、ぼんやりとテレビを眺めていたが、面白くないので消した。
 ベッドにごろりと転がって、カクテルの本を何となく読む。
 この本には、メジャーなものからご当地カクテル的なものも含めて、約百種類ほどのレシピが掲載されているという。この膨大な数の中から、副島はお客の好みに合わせたカクテルを選び出して作っているのだと思うと、本当にすごいと日和は思った。
足を踏み入れた事のない世界だが、こういう仕事は努力ももちろん、センスが必要なんだろうという事は、このカクテルの本を軽く読み流しただけな素人の日和にも解る事だ。
 再開発があったとはいえ、もともと老舗の飲み屋などが軒を連ねる場所で、店を続けていられるのだから、生半可な努力やセンスな訳がない。
 日和はカクテルの本を閉じて、ベッドの横に置くと、目を閉じた。
(…少しだけ眠ろう)
 暇をつぶすには寝るのが一番。深く眠ると夜が辛いが、軽い昼寝なら良いだろう。
 睡魔は案外早くやってきて、日和を思いのほか深い眠りに引きずり込んだ。

しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

結婚した次の日に同盟国の人質にされました!

恋愛 / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:1,036

弁護士事務所で運命の相手と出会いました

BL / 連載中 24h.ポイント:497pt お気に入り:609

こっち見てよ旦那様

BL / 連載中 24h.ポイント:276pt お気に入り:1,463

【R18】溺愛×悪役令嬢 reboot

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:14pt お気に入り:335

腐違い貴婦人会に出席したら、今何故か騎士団長の妻をしてます…

BL / 連載中 24h.ポイント:4,943pt お気に入り:2,461

処理中です...