スローテンポで愛して

木崎 ヨウ

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日常が波立つ

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 翌日の土曜日、日和はいつもと変わらず朝は六時半に目が覚めた。
 せっかくの休みなんだからたまには二度寝をしようとゴロゴロしてみたが、眠れそうに無かった。
 趣味が無い人間は、ただ時間を浪費しているだけだな…と思わないことも無い。
 しかし、日和は幼少期に何かに興味を持つと母親にダメ出しをされて、趣味を持つことを良しとされずに勉強づけの日々だったので、
 今更何か趣味を持てと言われても困ってしまうのだ。 
 お茶しか入っていない冷蔵庫に、昨日の夜にコンビニに寄るのを忘れたことを後悔した。
 キッチンの引き出しを開ける。
 勉強しかやってこなかった日和は、当然料理も苦手で、食べ物の買い置きはあまりしない。
 引き出しから出て来たのはカップラーメンが一つだけだった。
 仕方がないので、冷蔵庫に残っていたお茶とそのカップラーメンを啜った。
 食事を終えてしまったら途端にやる事が無くなる。
 なぜか、ふと思い立ってトイレを掃除して、部屋のフローリングに雑巾掛けをしたりしてみた。
 トイレ掃除のときはあまり感じなかったが、フローリングの雑巾がけは途中で嫌になってやめておけばよかったと思った。
 なにせ、めちゃくちゃ暑いのだ。床を拭いたそばから汗が噴き出してくる。
 それでも、途中でやめる事が出来ない性格が災いして部屋中の床に雑巾をかける羽目になった。
 雑巾がけが終わるとすっかり汗だくになっていたので、シャワーを浴びたついでに、風呂の掃除もした。
 それから、ワイシャツをクリーニングに出していないことを思い出したので、外出するにはめちゃくちゃ暑いだろうと思ったけれど、買い物がてら出かける事にした。
 マンションの近くにある、個人店のクリーニング店にワイシャツを持ち込み、先週出したワイシャツを受け取った。
 買い物に行くつもりだったのにワイシャツを受け取ってしまったので、一度家に帰ってワイシャツを置き、今度こそ、とスーパーへ向かう。
 ふと本屋の前を通った時、昨日、副島のところで飲んだカクテルの事を思い出した。
 普段は本なんて仕事で必要なものしか読まないが、何となく吸い寄せられるように本屋に入る。
 カクテルの本があるかどうか、店主に聞いてみると、レシピ本があるというのでなんとなくそれを買った。
 そして、スーパーでお茶とコーヒー、カップラーメンをいくつかカゴに入れる。
 ふと、炭酸飲料とビールが目に入った。
 明日は休みだし、料理なんかしないけれど、たまには家でのんびり飲むのもいいかと思って、缶ビールとジンジャーエールを一本ずつ買い、冷凍のガーリックトーストも買った。
 今まで、こんな事をしようと思ったことはない。
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