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第2話 異世界に来てみたら… 14

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 から揚げを咀嚼しながら、永遠は慣れ親しんだ味を感じている。
 知らない世界のはずなのに、知った味を感じる不思議に、永遠はやや混乱していた。

(読み書きや話すこと以外でも、食べた時に知ってる味に翻訳されるなんてことはあるのかな…)

 そんな事を考えながら食べていると、バルコニーの階下からざわざわと声が上がってくる。

「イグニス王にお目通り致します…!」

 感極まったような声が聞こえてくる。
 永遠はもぐもぐと料理を食べながら、イグニスが座っている椅子の少し離れたところで、土下座の様に床に座り込んで泣いている女性がいた。
 種族の名前は解らないが、どうやら獣人のようで、ムスタが駆け寄っていった。
 ざわめきの中でも、イグニスの声は良く通る。
 どうやら、イグニスを守って亡くなった戦士の母親のようだ。
 永遠は気になってしまって、見てしまう。
 母親というのはどういうものなのかと、ぼんやり思った。
 やり取りが終わったのか、母親は去っていく。
 見ていると、次から次にイグニスのところで感謝の言葉をかけていく国民達。
 それは、永遠の知っている『魔王』の姿ではない。
 ファンタジー世界の魔王と、この世界で呼ばれている魔王が違うのか、はたまたイグニスが特別なのか。

「トワ様、失礼いたします」

 ヴィオラが声をかけてきた。

「ん?」

 ヴィオラの方へ振り向くと、眉がぴくぴくと動いたのを見て、永遠は慌てて口の中に詰め込んでいた食べ物を飲み下した。

「ご、ごめん、詰め込んで食べるの、クセなんだよ…」

 食事を取られてしまう事があった生活だったため、永遠は大人になっても詰め込んてご飯を食べるクセが抜けきれていない。
 人前ではなるべくやらないように気をつけていたのに、御馳走を前にして、過去の記憶がそうさせたようだ。

「いえ、お気になさらず。トワ様にお目通り希望の者をお連れしました」
「は、はいっ」

 永遠は慌てて口元を拭い、居住まいを正す。
 魔法の使えるゴブリンの長たちが数人、そこには集まってきていた。
 口々に挨拶をしてくれたが、全く持って名前と顔が一致できない。
 人間でも難しいのに…と、永遠はニコニコと会話をするより他になかった。
 しばらくそうして、ゴブリンたちに紹介されていると、ムスタがやってきた。

「トワ様、オレの仲間にも会ってもらえるか?」

 ムスタの後ろには、様々な姿の獣人がいた。

「もちろん、ご挨拶させて欲しいよ」

 獣人たちも代るがわる挨拶してくれるが、やはり名前と顔が一致しない。
 ゴブリンの個人差もさることながら、獣人の個人差もなかなかに激しい。
 永遠は切実に、顔写真付きの名簿を望んでしまった。

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