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第2話 異世界に来てみたら… 11
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テーブルの上の料理たちは、なんとなく見覚えがある。
フライドチキンのような揚げ物、ローストビーフのような塊の肉、白身魚のムニエルのようなもの。
元の生き物が何か解らないことが少し怖かったけれど、とても美味しそうだと思った。
「あっ、トワ様、もう来てたんだな」
そう声をかけてくれたのはムスタだった。
「あ、ムスタ。うん、すごいごちそうだね」
「そりゃそうさ、今日はトワ様の歓迎会だもの」
「えっ、そうなの?」
「あれっ、聞いてない?」
「ヴィオラは何も言ってなかったよ」
「なんだ。サプライズだったのかな。ごめん、オレがしゃべっちゃったから」
「いや、大丈夫。ありがとう、気遣ってくれて」
ムスタはそわそわと身体を揺らしている。
「どうしたの?」
「あ、うん、あの、オレが獲ってきた鳥を、から揚げにしてもらったんだ。後で食べてくれよ」
「そうなんだ! ありがとう、ムスタ」
「おう、どういたしまして」
得意げなムスタに笑いかけていると、急に食堂が水を打ったように静まり返った。
「…?」
驚いて、永遠はあたりを見回した。
すると、永遠が入ってきた扉が大きく開く。
「イグニス王の御成りである!」
ヴィオラがそう声を上げると、周りにいたゴブリンたちが膝をつき、頭を下げた。
ムスタも胸に手を当て、頭を下げている。
永遠も慌てて立ち上がろうとしたが、ムスタが小さい声で「そのまま」というので、頭だけ下げた。
「皆の者、準備ご苦労だった」
イグニスの声に、使用人たちは震えているようだった。
ちらりと近くのゴブリンを見れば、それは恐怖ではなく歓喜の震えだということがわかる。
イグニスがヴィオラに声をかける前に、ヴィオラは頭を下げてから、壁に向かって何かを呟いた。
すると、今まで壁だと思っていたところが急に消えて、地響きのような歓声が飛んできた。
「な、なに?! 何事?!」
そばにいたムスタが、
「外には国の連中がいるんだよ」
と教えてくれた。
なぜ? と聞き返そうと思った所で、
「トワ、こちらへ」
呼ばれたので慌てて立ち上がる。
そして、イグニスの隣に立った。
食堂の外は、バルコニーのようになっていた。
そして、「おぉ!!」っという、倒れそうなほどの熱狂が押し寄せてくる。
怖い、と思った瞬間、そっと腰のあたりにイグニスの手が添えられたのを感じる。
「…!」
服越しにも感じるほどの冷たい手に、肩が震えた。
イグニスが一歩前に出ると、それまで大きな地響きのような声はピタリと止まった。
「我が国の礎たる、親愛なる民たちよ」
よく通る、張りのある声に、国民たちの目が集まってくる。
必然的に永遠にも視線が注がれるので、緊張してしまう。
フライドチキンのような揚げ物、ローストビーフのような塊の肉、白身魚のムニエルのようなもの。
元の生き物が何か解らないことが少し怖かったけれど、とても美味しそうだと思った。
「あっ、トワ様、もう来てたんだな」
そう声をかけてくれたのはムスタだった。
「あ、ムスタ。うん、すごいごちそうだね」
「そりゃそうさ、今日はトワ様の歓迎会だもの」
「えっ、そうなの?」
「あれっ、聞いてない?」
「ヴィオラは何も言ってなかったよ」
「なんだ。サプライズだったのかな。ごめん、オレがしゃべっちゃったから」
「いや、大丈夫。ありがとう、気遣ってくれて」
ムスタはそわそわと身体を揺らしている。
「どうしたの?」
「あ、うん、あの、オレが獲ってきた鳥を、から揚げにしてもらったんだ。後で食べてくれよ」
「そうなんだ! ありがとう、ムスタ」
「おう、どういたしまして」
得意げなムスタに笑いかけていると、急に食堂が水を打ったように静まり返った。
「…?」
驚いて、永遠はあたりを見回した。
すると、永遠が入ってきた扉が大きく開く。
「イグニス王の御成りである!」
ヴィオラがそう声を上げると、周りにいたゴブリンたちが膝をつき、頭を下げた。
ムスタも胸に手を当て、頭を下げている。
永遠も慌てて立ち上がろうとしたが、ムスタが小さい声で「そのまま」というので、頭だけ下げた。
「皆の者、準備ご苦労だった」
イグニスの声に、使用人たちは震えているようだった。
ちらりと近くのゴブリンを見れば、それは恐怖ではなく歓喜の震えだということがわかる。
イグニスがヴィオラに声をかける前に、ヴィオラは頭を下げてから、壁に向かって何かを呟いた。
すると、今まで壁だと思っていたところが急に消えて、地響きのような歓声が飛んできた。
「な、なに?! 何事?!」
そばにいたムスタが、
「外には国の連中がいるんだよ」
と教えてくれた。
なぜ? と聞き返そうと思った所で、
「トワ、こちらへ」
呼ばれたので慌てて立ち上がる。
そして、イグニスの隣に立った。
食堂の外は、バルコニーのようになっていた。
そして、「おぉ!!」っという、倒れそうなほどの熱狂が押し寄せてくる。
怖い、と思った瞬間、そっと腰のあたりにイグニスの手が添えられたのを感じる。
「…!」
服越しにも感じるほどの冷たい手に、肩が震えた。
イグニスが一歩前に出ると、それまで大きな地響きのような声はピタリと止まった。
「我が国の礎たる、親愛なる民たちよ」
よく通る、張りのある声に、国民たちの目が集まってくる。
必然的に永遠にも視線が注がれるので、緊張してしまう。
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