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第2話 異世界に来てみたら… 9
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永遠が開いた本は異世界の言葉で書かれているはずだが、何の問題もなく読みはじめられた。
本を読み進めていくと、この世界はほとんど地球と同じだということが分かった。
違うところは、月が4つある事と、魔力というものが存在して魔法が使えるということ、現代日本の科学というものが魔法に入れ替わっているような状態であること、それから、人間以外の言葉などで意思疎通が出来る種族が複数いるということだった。
「考えてみたらそうだよな。異世界に来て、神様がチート技能として言葉がわかるようにしてくれてなきゃ、おれは下手したらあの場で食われてたっておかしくない」
背筋がぞっとする。
「それに、息が出来てるのだって、一番チート技能だよな。人間と魔物は身体の構造が違うかもしれないし…、こっちの世界の生き物に意識だけ入れてくれるようにしたのはそういうのもあるのかな…」
永遠は本から目を上げて、ヴィオラが用意してくれたお茶を見る。
「食器とかそういうのも、日本で…というか、洋画のファンタジーで見るような、見慣れたヤツなんだよな…」
ティーポットをしげしげ見つめて、ふたを開ける。
少し赤みがかった色の液体が入っている。
「紅茶だな…これ」
お皿にはクッキーが並んでいる。
「原材料がさっっっぱりわかんないの怖ェんだけど…でもまあ、こっちの世界の生き物の身体だから、飲食は大丈夫だろう…たぶん…」
独り言をぽそぽそ吐きながら、紅茶を注いで飲んでみる。
「あ、うま…っ」
味も香りも紅茶そのものだった。
クッキーも一つ、口に入れてみる。
「サクサクほろほろ…うまぁ…」
考えてみたら施設にいたころ、オヤツといえば給食のおばちゃんが手作りしてくれた素朴なお菓子がほとんどだった。
クッキーだってこんなにバターをたくさんつかったものじゃなかった。
たくさんいた子供たちを満足させるためには、金ががかる。
ただでさえ、材料費を押さえなくてはならないのに、市販のお菓子は買えなかったんだろう。
「これはあれだ…、ケーキ屋さんの焼き菓子のうまさ…」
紅茶とクッキーを堪能して、視界の端に入った本の存在を思い出して慌てて手を拭いて、本に戻る。
時折、紅茶を飲みながら、歴史の本を読み終える頃に、部屋の扉がノックされる。
「トワ様、ヴィオラでございます。失礼いたします。まもなくお夕食のお時間でございます」
「えっ、もうそんな時間!?」
「はい、まもなく」
「そっか…」
本を閉じ、永遠は大きく伸びをした。
「もう読み終えられたのですか?」
「うん、まあ」
「それはすごい。書物を読むのがお得意ですか?」
ワゴンの上を片付けながら、ヴィオラにそう聞かれて、永遠は苦笑いをした。
「本くらいしか、たのしみ無かったからね」
本を読み進めていくと、この世界はほとんど地球と同じだということが分かった。
違うところは、月が4つある事と、魔力というものが存在して魔法が使えるということ、現代日本の科学というものが魔法に入れ替わっているような状態であること、それから、人間以外の言葉などで意思疎通が出来る種族が複数いるということだった。
「考えてみたらそうだよな。異世界に来て、神様がチート技能として言葉がわかるようにしてくれてなきゃ、おれは下手したらあの場で食われてたっておかしくない」
背筋がぞっとする。
「それに、息が出来てるのだって、一番チート技能だよな。人間と魔物は身体の構造が違うかもしれないし…、こっちの世界の生き物に意識だけ入れてくれるようにしたのはそういうのもあるのかな…」
永遠は本から目を上げて、ヴィオラが用意してくれたお茶を見る。
「食器とかそういうのも、日本で…というか、洋画のファンタジーで見るような、見慣れたヤツなんだよな…」
ティーポットをしげしげ見つめて、ふたを開ける。
少し赤みがかった色の液体が入っている。
「紅茶だな…これ」
お皿にはクッキーが並んでいる。
「原材料がさっっっぱりわかんないの怖ェんだけど…でもまあ、こっちの世界の生き物の身体だから、飲食は大丈夫だろう…たぶん…」
独り言をぽそぽそ吐きながら、紅茶を注いで飲んでみる。
「あ、うま…っ」
味も香りも紅茶そのものだった。
クッキーも一つ、口に入れてみる。
「サクサクほろほろ…うまぁ…」
考えてみたら施設にいたころ、オヤツといえば給食のおばちゃんが手作りしてくれた素朴なお菓子がほとんどだった。
クッキーだってこんなにバターをたくさんつかったものじゃなかった。
たくさんいた子供たちを満足させるためには、金ががかる。
ただでさえ、材料費を押さえなくてはならないのに、市販のお菓子は買えなかったんだろう。
「これはあれだ…、ケーキ屋さんの焼き菓子のうまさ…」
紅茶とクッキーを堪能して、視界の端に入った本の存在を思い出して慌てて手を拭いて、本に戻る。
時折、紅茶を飲みながら、歴史の本を読み終える頃に、部屋の扉がノックされる。
「トワ様、ヴィオラでございます。失礼いたします。まもなくお夕食のお時間でございます」
「えっ、もうそんな時間!?」
「はい、まもなく」
「そっか…」
本を閉じ、永遠は大きく伸びをした。
「もう読み終えられたのですか?」
「うん、まあ」
「それはすごい。書物を読むのがお得意ですか?」
ワゴンの上を片付けながら、ヴィオラにそう聞かれて、永遠は苦笑いをした。
「本くらいしか、たのしみ無かったからね」
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