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第2話 異世界に来てみたら… 6

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 ヴェリデは懐から小瓶を取り出すと、

「過剰分はこちらへ移しておきましょう」

 そう言ってムスタとヴィオラに手をかざした。
 それから何か呪文を唱えると、二人とヴェリデ、小瓶が淡く光る。

「なに、してるんですか」

 ヴェリデに聞いたつもりだったのだが、無視をされて戸惑う。
 イグニスが小さく笑った気がした。

「過剰に魔力を注入されると、昏倒することがある。お前の魔力が暴走して、二人は過剰摂取状態になったんだな」
「ややっぱりおれのせい…ッ」
「ああやって、ヴェリデが過剰摂取分の魔力をポーションにしているんだ。瓶に詰めておけば持ち運ぶこともできるだろう?」
「…大丈夫なんですか?」
「頻繁に受けなきゃ大丈夫だろう?」
「えぇ…」

 ヴェリデが立ち上がる。

「王様、出来上がりました」
「あぁ、ご苦労だった」

 イグニスに向けて、ヴェリデは傅いて瓶を掲げた。
 ヴェリデから瓶を受け取るイグニスは、それを満足げに眺めている。
 そうしていると、後ろで二人が目を覚ました。

「目覚めたか」

 よろよろと身体を起こしながら、ヴィオラが頭を下げる。
 その後ろで、ムスタはぶんぶんと頭を振った。

「失態を犯しました…。申し開きもございません」
「不測の事態だ、仕方あるまい」
「…お手数をおかけいたしまして申し訳ございませんでした」
「構わん。我は戻るとする。ヴェリデ、魔力のコントロール方法について教えてやってから戻ってこい」

 イグニスはそう言って、部屋を出た。
 ヴェリデは後ろ姿を見送り、永遠の方を向いたときにはまた無の表情だった。

「す、すみま」
「黙れ」
「…ッ」
「人間、お前の魔力は規格外だってことを頭に叩き込め。いいか? お前の力が暴走するとお前のせいで死者が出ると思って過ごせ」
「しっ…」

 身体の芯まで凍り付きそうなほどの、冷たい声。
 恐怖でしかなかった。

「は、はい、すいませんっ」
「お前、つけたいアクセサリーはあるか?」
「え…?」
「聞かれた事に答えろ。耳飾り、ブレスレット、ネックレス、どれだ」
「あ、ええと、じゃあ…、ブレスレットで!」
「…手を出せ」
「は、はい」

 恐る恐る差し出した手に渡されたのは、小さな赤い宝石がついたブレスレットだった。

「これを付けておけ。お前の力が暴走したらある程度、それが吸い取って城に転送されるようにしてある」
「あ、ありが」
「お前のためじゃない! 仲間を殺されたらたまらないし、イグニス様のお力になるためだ」
「は、はい」

 永遠が頭を下げると、ヴェリデはフンッとそっぽを向いた。

「魔力の暴走は、だれしも起こる。とりあえず落ち着いて過ごせ。いいか」
「はいっ」
「解らないことは…、ヴィオラに聞け」
「わかりました」

 ヴェリデは忌々し気に永遠を一瞥して去っていった。
 
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