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第四章 異世界生活

一話 探索クエスト

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アラフォー無職の義弘は、媚びの功が奏じたのか、四人の美女から見捨てられることなく、その日の朝食も食べることが無事にできる。


「さて、ヨシヒロ、索敵を展開して魔物の状況を教えてくれないか」


パーティーリーダーのアトリが期待を込めて義弘に指示を出す。


「はい、昨夜からずっと索敵していて、ここからだと街のあるあたりまでだと、最大で狼みたいな奴の5匹のグループ。あとは2~3匹のさほど、強くはない魔物が点在している程度ですね♪」


おっさんの話は、とてもではないほど信じられないものであった。

昨夜のおっさんの話から、人外の能力を保有していることは理解している。
しかし、同じ人外といえども、人並み以上の人外と想像すらできない人外とではまるで意味が違う。
魔法であろうと、スキルであろうとも発動できる時間には、限度があり一晩中の行使など神か魔王ぐらいしかできる訳がなかった。


「お、おっちゃんって、もしかして、ま、魔王ニャ?」


「はい?何ですか?その魔王って?」


ラノベを読みふけっていた義弘が魔王の意味を知らない訳はない。それでも、いきなり魔王指定は余りにも理不尽。自分の行動が余りにも理不尽であるとは理解不能のおっさんである。


「はあ~…」


「な、な、何なんでしょか?」


「はあ、そうね。あなたの行動が余りにも人外過ぎて、もはや、私達には、神か魔王ぐらいにしか判断できないってことよ」


アトリの言葉の意味。それこそおっさんに寝耳に水。良かれと思っての行動が、いつの間にか魔王である。


「あのぉ、わたくし、魔王なんかじゃありませんから。人類の敵ではありませんから」


それは、おっさんの必死の主張である。

キャンプを追い出されて一人にされるよりも、おっさんに、とって遥かに大事な局面であった。

ここで魔王指定されてしまえば、これからの異世界生活、真っ暗闇確定である。


「えっと、えっと、そうです、私、魔法も使えないし、武器も使ったことないですし、それから、えっと…」


「大丈夫ニャ、誰も、おっちゃんが魔王だなんて思ってないニャ♪」


「………ほんと?」


おっさん、よく見ると周りの美女たちは、口元を抑え我慢しているようだ、ニヤニヤとした表情は隠しきれない。


「ほんとです」


口下手なローリーの言葉がおっさんを、ようやく落ち着かせる。


「ほんとに、ほんと?」


「はい」


「はああぁ~…」



おっさん、テンション一気に下がり、急に冷静になるとやたらと恥ずかしくなり、思わず両手で顔を隠した。


《クククク、面白いぞ人間クククク》


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