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第三章 第一異世界人発見

七話 スキルと魔法とおっさんと

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この世界には、能力を発現させるパターンが二つ存在する。

そのうちの一つが、この世界全体に空気のように存在している魔素というものに対して、自らの内にある魔素を持って働き掛け能力を発現させる魔法と呼ばれるものであり、火、水、土、風の四大属性を主とする魔法を行使する者たちの事を魔術師と呼んでいた。(もちろん、四大属性以外の魔法もあり、今回、使われる探知魔法は、空間魔法の一つとされる)

そしてもう一つの能力を発現させる方法、それは個人単位に備わる素質のようなもので、魔法のように誰にでも後付けして得る(個人の属性適正により得る能力差は発現する)事のできるものではなかった。


『♪うん、わかる。』


探知魔法の展開できない義弘は、それまで自然に感じていた危険な感覚を意識的に自らの周辺へとゆっくりと広げていった。


「うーん、こっち。そう、指差す方角、15mぐらいのところに、それほど強くはないものが二つ、感じ取れます…」


突然のおっさんの言葉にアトリは直ぐに反応した。
アトリは、斥候職でもあるシンディに目配せをした。


「うん、私には二つかどうかは、いまいちはっきりとしないけど、確かに反応はあるみたい…おっさん♪なかなかやるねぇ♪」


アトリはから合図に、直ぐに魔法展開したシンディが頷きながらそう答えながら立ち上がると、義弘の指差す方へと音もなく走り出した。


「‥へえ、なかなかに優秀だねぇ」


アトリはご馳走を前にしたように艶めかしい笑顔を浮かべると、ゆっくりと舌舐めずりをした。

それは、ほんの数秒の事である。

アトリの笑顔にぞくりと嫌な予感と恐れを感じていると、二羽の※ウサギを持ってシンディが現れる。


「このおっさん♪私より遥かに優秀だわ‥」


「あのぉ、おっさんではなく義弘かヨッシーとか…」


「何!おっさん!」


それは僅かにながら妬みを感じさせてからの苦笑いであった。


この世界の一般常識として、斥候職の持つ探査系の能力は、危険察知スキル、探査系スキル、そして探知魔法の大まかに分けて3種類。

それぞれのスキル、魔法にメリットデメリットは存在するが、概ねその能力範囲は、個人能力差に委ねられる。


能力ランクで言えば、Dレベルで初級、範囲は数メートル。壁の向こうの察知というところである。Cが中級、範囲は10m前後。Bが上級、範囲は10m以上。Aレベルに関しては人外と揶揄され、範囲も規定されてはいない。


この女性のパーティー、ギルド指名を受けるほどの実力者の集まりであり、斥候職のシンディの探知魔法に関して上級Bクラスであったりする。


「いいっすよ…おっさんで……あっ、あっちの方、あっちの方角、そう、30m位の所に少し強い反応が♪」《ハハハ、重畳重畳、なかなか上手く使えておるではないか》


「……」


山茶花のメンバーの思いを知ってか知らずか、おっさんは、能力を上手く仕えて上機嫌である。

人外。

間違いなく人外の能力である。人の能力の2倍以上発揮しながら、それでもまだまだ限界を感じさせない。


「はあ、義弘。あなた、どれぐらいまで魔物を感じられているの?」


「はあ?さて、どれぐらいでしょ?」


聞かれたおっさん。首を傾げるばかりである。



※角ウサ(回復ウサギ)
 食用に適した魔物の一つ。反撃しない狩猟しやすい割に、美味である。ただし、HP減少時、自らの体力を回復するスキルを発動するため一定以上の攻撃力がなければ討伐できない。
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