裏信長記 (少しぐらい歴史に強くたって現実は厳しいんです)

ろくさん

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六十四話 最後の旅へ(その二)

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「それで、その古文書の内容と俺が関係があると?」


「いやいやいやいや…、そんな事、俺は信じていないんだが‥爺ちゃんがなぁ」



『♪♪♪♪♪間もなく武生、越前武生、お降りの方はお忘れ物なきよう…』


「!おっ、到着するみたいだ♪」


タイミングよく流れる車内アナウンスに、ごまかすように話を終わらせた智のいつもの笑顔は、何の企みも感じさせないいつもの笑顔である。


『まあ、手詰まりの俺にとって渡りに舟。どう転んでも悪くはならないだろう』


一人、確信した重治は、頭の上の荷物置きに置かれた小さなボストンバッグを降ろした。





「ほう、ここは初めてだなぁ」


「まあ、JRの駅がある割には、まあまあ‥、正直いって都会とは…」


重治は、その駅舎の入口から、周りをゆっくりと眺めていた。

ゴールデンウィークはじめにしては、この年の天候は、最早、初夏。うっすらと汗さえ浮かぶ、眩し過ぎる、暑さのこもった日差しが二人を照りつける。


『ファーファー!』

その時、智と重治の二人は、駅前にある乗り合いスペースで、その迎えを待っていた。

白い軽ワゴンが、迎えですよと軽快なクラクションを響かせ、重治達の前えと停車する。


「智、待ったかい?」


運転席から降り立った男性。
その男性は、見るからに智との血の繋がりを感じさせた。


「いや、そんなに‥それより、叔父さん、お迎えご苦労さまです」


「はっははは、オヤジ、いや爺さまの言うことは、今でも絶対だからなぁ‥お迎えの御用ぐらい大したことじゃないさ」


智が叔父さんと呼んだ男性は、智の父親の兄にあたり、本来なら伊藏家の跡取りとなる人物である。


「叔母さんと恭子ちゃんは元気?正月は会えなかったからなぁ」


「ああ、相変わらず口うるさいくらい元気さ…。さあさあ、それより早く乗った乗った」


智は社交事例ともよべるようなありきたりの挨拶を済ませながら荷物を後部ハッチドアから放り込み、助手席へと滑り込む。


「チッ、後ろの席かあ、智、俺はお客様じゃ、なかったのか?」


後部シートに座席指定が決まった重治は、文句の1つも言わずにはいられなかった。

重治の旅の予習によれば、目の前の軽ワゴンの後部シートで1時間以上の山道をドライブすることになる。
特に車酔いする訳ではない重治ではあるが、初めての土地せめて景色を、愉しむぐらいの配慮は欲しかった。


「なに言ってる♪俺とお前の仲に、そんな配慮があるわけないだろうがハハハ♪」



やっぱり、むかつく奴である。親友なのは間違いない。親友だからこその無遠慮。重治にしてみれば!背中を任せられるほどの相棒に似てるからこそ、やっぱり、むかついた。


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