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第三章 世界の果てと見えない未来図。
第四十七話 世界の夜明けと共に(8)
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「うおぅ! 待たせたかね……入国時。いま検査も大変でなぁ」
破天荒な言葉。目つきの悪さ。でかい態度……クソ爺だよね。
正規じゃない帰国でもウイルス検査は必須。現状仕方がない。
もちろん永依の祖父。与党重鎮で副総裁を拝命する英田常勝だ。
専属ボディガードを伴わない姿。それが心配でもあるけれど。
代わりに警護する巨体。いつものレンジャー部隊長さんだよね。
背後は一見地味な二人だ。もちろん肌色も異なる黒いスーツ。
北方スラブ系の蒼白な肌色。筋肉質でうすい髪と鋭い目つき。
特徴的な痩身。ロシアの大統領は軍属で元スパイとして有名だ。
日本人に近い漢民族は高身長で大柄。ふさふさの黒髪が若くて
精力的に見える。国家主席と大統領。ほぼ同年代のはずだけど。
ちいさい身体で年かさになる閣下だ。二人の背中を押しながら
昔からの友人に接するような態度。周囲に紹介してるんだけど。
「皆ご存じの人物だろう。ウラジーミル・ウラジーミロヴィチ・
ブーチン。それに習近兵。わしはブーとシーなんて呼んどるぞ。
二人からはツネと呼ばれとる。いろいろあってからマブダチさ」
全員あっけにとられた。身体が硬直して応じるための戸惑い。
ひそひそ相談した結果だ。呼び方は大人。大統領に決定したよ。
閣下と三人あわせると好々爺に見えない。いかついジジイだ。
かなりの大酒のみで健啖家だよね。年齢足すと二百三……病気
一つもない健康体だけど。それが逆の意味でおかしなご老体だ。
深酒が進むと危うい情報も交じるらしい。大統領の極秘ネタ。
いきなり公開されたんだけど。三人一緒にいる理由……驚きだ。
政敵から毒を盛られた大統領。瀕死に近い状態だったらしい。
もちろんブーチン大統領だよ。マスコミにも姿を見せる演説。
ロシアで知名度も高い。大人気の政治家が……影武者なんだよ。
かつての所属は諜報組織。裏切りで秘密裏に逃亡した同盟国。
呑気なこちらも言葉を失くした世界の暗部。真実は時に物語を
超越するぐらい。巧くできているらしいね。感心しきりなんだ。
オマケとして追加で世界の闇も暴露されたんだ。なぜかココの
誘拐を企てた相手が国家主席の宿敵。マンガよりおバカなネタ。
五輪を担当する幹部の長男が重度オタク……ケモナーだった。
偵察衛星の盗撮行為……もはや壮大なストーカー案件である。
ココに会いたくてたまらなくなった長男。その指示で誘拐劇だ。
国家主席が笑う。親子で深海に沈んだから安心と伝えてるよ。
聴かされたココも驚きだけだ。犯人の処罰に何もリアクション
できないらしい。世界の真実は情け無用に残酷すぎて笑えない。
「サクラだったかな? バカどもが迷惑かけた詫びにならんが。
これからわしを爺ぃとでも呼べばいい。保護者代わりになろう」
ウエイトレスとして働くサクラちゃん。真摯に対応されたよ。
信じらんないけど世界を動かせる国家主席。本気なんだよね。
ちいさな身体で滅ぶ寸前。稀有な少数民族ごと保護する意識だ。
店奥の大統領はココと永依にサンボと柔道。秘伝を披露する。
おかしな状況だ。半世紀も真摯に学んだ技術が少女を魅了した。
無表情で強面だけど……子供にも真摯な紳士。親切な対応だ。
しかも艶やかに笑うカナメ先輩。興味津々スカウトされたけど
あっさりと断った。ショックで頭を抱えてうずくまる大統領だ。
夜も更けて日付変更線。跨ごうとする時刻が訪れた……世界が
激変する瞬間だ。すでに永依とココは部屋。夢のなかだろうね。
テーブルに寝かせた紹興酒と純米大吟醸。ロシア産ウォトカを
ちゃんぽんして鯨飲したらしいよ。お揃いで泥酔のご老人たち。
最初から雰囲気は竹馬の友……いつしか義兄弟。そんな契りを
結びたいと考えに至る三人だ。しばらく酒杯を重ねた結論が……
『われら三人。姓も生国も異なる。今後は兄弟の契りを結ぼう。
心同じく助けあい困窮する者を救う。上は国家に報う。下は民を
守ると誓う。同年同月同日に生まれることを得ず。願うは……』
『同年同月同日死せん事を!』突然だ。それぞれの言語で叫ぶ。
そして……その瞬間。重なるように脳内で響く機械音だった。
【ソノ願イヲ正シク了解ダ】――応じる声。世界に拡散された。
後々の世まで伝説になる。一部分が記されて残された宣誓だ。
もちろん原点は史実でもない物語『桃園の誓い』その真似事。
それを理解して『薔薇園の誓い』。残された名前が皮肉だった。
厳冬の靭公園。バラ園に花は咲かずダンジョンも西園にある。
正確に記すのならダンジョンから数十メートル。距離をあけた
カフェバーだ。性転換症の店員が集う。フィッシュオンの誓い。
破天荒な言葉。目つきの悪さ。でかい態度……クソ爺だよね。
正規じゃない帰国でもウイルス検査は必須。現状仕方がない。
もちろん永依の祖父。与党重鎮で副総裁を拝命する英田常勝だ。
専属ボディガードを伴わない姿。それが心配でもあるけれど。
代わりに警護する巨体。いつものレンジャー部隊長さんだよね。
背後は一見地味な二人だ。もちろん肌色も異なる黒いスーツ。
北方スラブ系の蒼白な肌色。筋肉質でうすい髪と鋭い目つき。
特徴的な痩身。ロシアの大統領は軍属で元スパイとして有名だ。
日本人に近い漢民族は高身長で大柄。ふさふさの黒髪が若くて
精力的に見える。国家主席と大統領。ほぼ同年代のはずだけど。
ちいさい身体で年かさになる閣下だ。二人の背中を押しながら
昔からの友人に接するような態度。周囲に紹介してるんだけど。
「皆ご存じの人物だろう。ウラジーミル・ウラジーミロヴィチ・
ブーチン。それに習近兵。わしはブーとシーなんて呼んどるぞ。
二人からはツネと呼ばれとる。いろいろあってからマブダチさ」
全員あっけにとられた。身体が硬直して応じるための戸惑い。
ひそひそ相談した結果だ。呼び方は大人。大統領に決定したよ。
閣下と三人あわせると好々爺に見えない。いかついジジイだ。
かなりの大酒のみで健啖家だよね。年齢足すと二百三……病気
一つもない健康体だけど。それが逆の意味でおかしなご老体だ。
深酒が進むと危うい情報も交じるらしい。大統領の極秘ネタ。
いきなり公開されたんだけど。三人一緒にいる理由……驚きだ。
政敵から毒を盛られた大統領。瀕死に近い状態だったらしい。
もちろんブーチン大統領だよ。マスコミにも姿を見せる演説。
ロシアで知名度も高い。大人気の政治家が……影武者なんだよ。
かつての所属は諜報組織。裏切りで秘密裏に逃亡した同盟国。
呑気なこちらも言葉を失くした世界の暗部。真実は時に物語を
超越するぐらい。巧くできているらしいね。感心しきりなんだ。
オマケとして追加で世界の闇も暴露されたんだ。なぜかココの
誘拐を企てた相手が国家主席の宿敵。マンガよりおバカなネタ。
五輪を担当する幹部の長男が重度オタク……ケモナーだった。
偵察衛星の盗撮行為……もはや壮大なストーカー案件である。
ココに会いたくてたまらなくなった長男。その指示で誘拐劇だ。
国家主席が笑う。親子で深海に沈んだから安心と伝えてるよ。
聴かされたココも驚きだけだ。犯人の処罰に何もリアクション
できないらしい。世界の真実は情け無用に残酷すぎて笑えない。
「サクラだったかな? バカどもが迷惑かけた詫びにならんが。
これからわしを爺ぃとでも呼べばいい。保護者代わりになろう」
ウエイトレスとして働くサクラちゃん。真摯に対応されたよ。
信じらんないけど世界を動かせる国家主席。本気なんだよね。
ちいさな身体で滅ぶ寸前。稀有な少数民族ごと保護する意識だ。
店奥の大統領はココと永依にサンボと柔道。秘伝を披露する。
おかしな状況だ。半世紀も真摯に学んだ技術が少女を魅了した。
無表情で強面だけど……子供にも真摯な紳士。親切な対応だ。
しかも艶やかに笑うカナメ先輩。興味津々スカウトされたけど
あっさりと断った。ショックで頭を抱えてうずくまる大統領だ。
夜も更けて日付変更線。跨ごうとする時刻が訪れた……世界が
激変する瞬間だ。すでに永依とココは部屋。夢のなかだろうね。
テーブルに寝かせた紹興酒と純米大吟醸。ロシア産ウォトカを
ちゃんぽんして鯨飲したらしいよ。お揃いで泥酔のご老人たち。
最初から雰囲気は竹馬の友……いつしか義兄弟。そんな契りを
結びたいと考えに至る三人だ。しばらく酒杯を重ねた結論が……
『われら三人。姓も生国も異なる。今後は兄弟の契りを結ぼう。
心同じく助けあい困窮する者を救う。上は国家に報う。下は民を
守ると誓う。同年同月同日に生まれることを得ず。願うは……』
『同年同月同日死せん事を!』突然だ。それぞれの言語で叫ぶ。
そして……その瞬間。重なるように脳内で響く機械音だった。
【ソノ願イヲ正シク了解ダ】――応じる声。世界に拡散された。
後々の世まで伝説になる。一部分が記されて残された宣誓だ。
もちろん原点は史実でもない物語『桃園の誓い』その真似事。
それを理解して『薔薇園の誓い』。残された名前が皮肉だった。
厳冬の靭公園。バラ園に花は咲かずダンジョンも西園にある。
正確に記すのならダンジョンから数十メートル。距離をあけた
カフェバーだ。性転換症の店員が集う。フィッシュオンの誓い。
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