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第三章 世界の果てと見えない未来図。

第四十二話 世界の夜明けと共に(3)

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 現状の混沌……これを招いた存在。ココと消えた鳥羽サクラ。

 だがしかし背後も判明していない。保証人は実在しなかった。
本人と履歴書が一致していない謎。全員で頭を抱えさせられた。

 裏と表に事情あるフィッシュオン。特殊な状況も波乱を招く。
スカウトでサクラを雇用した理由。これはカナメ先輩の独断だ。

 特殊すぎる環境。一般の媒体で従業員を募集していない店だ。

 その実態を理解する範囲。カナメ先輩のリアルまで関係した。
公安捜査官として潜伏する状況下。過去の案件で当事者だった。

 ミナミの違法風俗店。半強制の売春行為を求められたサクラ。


 情報提供で以前から信頼関係。カナメ先輩に相談した結果だ。

 風俗店は廃業に追いこまれた。改装して変更してから改めての
引きつぎ。従業員として新規に雇用された相手がサクラらしい。

 昔と聴いて余計にサクラの年齢。性別もチグハグでおかしい。
覇権国のスパイ。当時から潜入を目論んだ可能性も考えられた。

『事実は小説よりも奇なり』有名なことわざだろうか。かなり昔
英国詩人が残した言葉の真意。それなりには複雑かもしれない。

『世の中で起こる出来事は虚構の小説より奇妙で不思議である』
 残された言葉。冗談か本心かも判断しにくい。曖昧な印象だ。


 ココがいるだろうビーコン位置。中型の漁船が停泊している。

 川崎重工の神戸工場に係留されるわけじゃない。姿を見せずに
近づくのも難しい位置だ。だがしかし海を隔てると突堤だった。

 正しいGPS位置の情報。判明しただけで詳細もわからない。
国内で他国船が自由に航行できる範囲。状況は制限されている。

 この件で敵対する組織も謎だ。誘拐が正式に大元である国家。
直属でない可能性もある。世界一の人口を誇る軍事大国なんだ。

 一党独裁政権だ。幹部同士が熾烈に争う状況は理解している。
五輪担当幹部が暴走した結果。国家の関与しない可能性も高い。

 サクラが敵か味方かも判明していない。行動まで制限される。


 状況を打開するために起案した作戦。決行自体は難しくない。
だがしかし現地に到着。maleが調査すると増援されていた。

 出発する際GPSで確認された位置。中型漁船が二隻だった。
現地に到着してから確認した結果。船舶が三隻に増加していた。

 ただの漁船でもないらしい。いわゆる船体はホバークラフト。

 軍用船の登場に驚いた。人民軍で揚陸艦に搭載される専用艇。
小型のエアクッション揚陸艇と呼ばれる。軍用船に分類される。

 本部に鈴音が確認した。歩兵最大十人。搭乗員二名は必須だ。

 漁船員を除けば最大十二名。海軍歩兵と敵対することになる。
母船については打ちあわせの結果。意識しないことで統一した。


 これでも幸いした状況。乗員から想定すると貨物は積めない。

 そもそも車両をもたない歩兵。自動小銃が限界になるだろう。
ミサイルや迫撃砲。高威力で長射程の兵器は搭載されていない。

 俗にいうライフルと小型拳銃が相手だ。近接戦も可能になる。
防御の問題だけだ。femaleと連動で特殊機能を使用する。

 カナメ先輩と美里は自ら志願した、真冬の海から突入らしい。

 そもそも自分には無理だ。いけといわれても逃げるしかない。
カナメ先輩は意外に海中は暖かいのと笑った。きっと嘘だよね。

 着がえる予定の全身タイツは耐水性。摘発性に優れた新素材。


 小口径の自動小銃相手なら遠距離の対策だ。頭部被弾を警戒。
その程度で十分らしい。真冬の海で銃撃戦も難しいためだろう。

 その状況なら近接物理対応が確実らしい。ラクだと全員笑う。
臆病な弱虫。オタクである自分だけが笑えない状況なんだけど。

 いつでも考えさせられる。足代わりガジェットを提供されても
圧倒的に経験不足。脆弱な精神と子供にも負ける体力しかない。

 こんな状態ではスーパーヒーローと呼ばれる行動は不可能だ。
意識するだけでも悲しみよこんにちは。自虐するほど情けない。


「ケーちゃんやったよ。ここから見える橋を渡ると中央市場だ」
 自走車いすで黙想していた。背後からは永依の元気な声かけ。

「うん。中央市場駅も神戸の市営地下鉄。それの海岸線だっけ。
こんなんでも三宮から新長田を結ぶ路線だからね。びっくりさ」

 いよいよだ。ココがいるはずの船舶に近い。改めて意識する。
闘いの果て訪れる未来は感動か絶望なのか。まだ誰もしらない。
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