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第二章 現実の社会はさほど甘くない。

第三十九話 バニーちゃんと一緒(18)

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「わけがわからないよ」そんなパーティも無事終了。振り返ると
ヤツはいないけど大騒ぎに終始した。いまも……片づけが大変。

 人手が足りていないフィッシュオン。パーティの準備段階から
永依とココも活躍したらしい。かなりの頑張りと聴いて驚いた。

 しばらく中学は登校できない。オンライン授業の対応になる。

 それと数日前からサクラちゃんが家庭の事情で現れていない。
店長で上司のカナメ先輩。あわてふためきながらの悪戦苦闘だ。


 カナメ先輩から聴いた事情。神戸に暮らす母が倒れたらしい。
サクラちゃんが急いで駆けつけてから音信不通。そんな状況だ。

 政府の直轄であり正式開店していない。営業されていない店。

 それでも一定割合で日々の業務は発生する。客に扱われないが
ほぼ毎食。食事をお願いする現状では手伝えるなら協力したい。

 亮くんはいつも厨房。臨時バイト扱い。少女がフロア担当だ。

 永依に適性があったらしい。そのキチンとした応対をまねると
ココも上達した。シビアなカナメ先輩のお墨つきを得たぐらい。


 これから足代わりになる車いす。運転席に変わる車は高額だ。
プレゼントされたばかり。準備の食事以外はすべてを辞退した。

 綺麗な花束は店と女の子に分配した。飾りつけもお願いする。
カナメ先輩から改まって呼ばれた。三人同時に小箱を渡される。

「ケージと永依ちゃんホールあるよね。そのままでも平気かな。
ココちゃんの耳が問題。おおきな両耳でピアス穴の意味もない」

 カナメ先輩からのプレゼントは黒サンゴ。お揃いのピアスだ。
もしや宝石として価値がある。別の目的まで備えられる装飾品。

 詳しい説明をうけていない。三点が同じ形状。公然の秘密だ。
「うん。左耳の奥に貼りつける」ココでも危険は理解するのだ。


 その夜かなり遅くまで照明を消さず調べもの。仕事の一環だ。

 気づかずに……事態は進行して……日付変更線を跨いだ時刻。
絶叫が轟いた。かなりの深夜に……ゆるやかな状況。変化する。

「ケーちゃんっ! 起きたらさ。ココちゃんベッドにいないよ。
寝る前おやすみって挨拶した。いつもとおんなじ笑ってたのに」

 どこか捨てられた子猫のようにも見えた。震える永依の身体。

「うん。誘拐された理由。別にしても消えた原因は自己選択だ」
 ココなりの事情もある。消える理由があるんだから仕方ない。


『罪を憎んで人を憎まず』有名な慣用句だね。ことわざがある。

 日本を混乱させた状況すべてに繋がる総理大臣も例にあげた。
思想家である孔子の言葉。安易な発言が物議をかもしたぐらい。

 近い何かは残されても記した人物が孔子か定かでもない言葉。
人の犯した罪を憎むべきだ。罪を犯した人を憎んではいけない。

 そもそもの意味がわからない。教訓としてもアヤシさ満点だ。
『罪と罰』著名なロシアの文豪ドストエフスキー。長編小説だ。

 理想と現実の乖離。矛盾した論理と破壊を描く。名作らしい。


 この原点とされる社会主義思想。まったくもって正しくない。
体現とされる大陸。覇権国の一党独裁だ。統治で腐敗もひどい。

 現代の世界情勢で仕方ない部分もある。一応は考慮してみた。
目的を達成するため他者を犠牲にすることが正義のはずがない。

 世捨て人あるいはひきこもりと呼ばれた。期間もかなり長い。
正義と悪意の差。単に物事の二面性だ。そんなこと熟知してる。

 世界中の人々が平等。楽しく幸せに暮らすことなど不可能だ。
中途で障がい者になった自分。だから見えない世界も理解する。


 この狭い大阪の片隅で。静かに平々凡々と暮らせるなら十分。
邪魔するヤツを指先でダウンさせる永依も話せば伝わるものだ。

 夜明けと同時。関係者を全員招集する。対策を練るしかない。
まずは状況の確認。ココが無事に戻ってくればすべてがおわり。

 ダンジョンで出現する魔物たちは世界の理。差から討伐する。
だがしかし自分の邪魔をする存在。片っ端から倒すのはムリだ。


 最善の策。「以前と同様の状況を確保する」ただそれだけだ。

 すべてが神の采配。もしかしてダンジョン創造者の意志かなと
考えさせられた。そんな理由もないだろう。そう信じるだけ……
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