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第二章 現実の社会はさほど甘くない。
第三十三話 バニーちゃんと一緒(12)
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大阪市営地下鉄九条駅。ここはユニークな立地の高架駅舎だ。
本町方面から阿波座駅。通過すると数百メートルかけて徐々に
婉曲するんだ。同時に地上まで進む。そうとう珍妙な路線だよ。
交差の阪神電車なんば線。九条駅地下直結で南北に縦断する。
隣接は地元密着タイプのアーケード商店街。シャッター化せず
数ある店が終始にぎわう。周辺も昔は遊郭で栄えた有名な新地。
令和に跡形もない名物ストリップ劇場も人気のミニシアター。
目的の場所は四輪車専門店……ホンダカーズ。九条店だけど。
中央大通りから南になる。百メートルも離れていない近距離だ。
「いよぉケージ。待ちかねたんだぜぇ」もちろん英雄さんの声。
タクシーを横づけして店に近づくと同時だ。車庫に拉致された。
「かなりお待たせ。申し訳ないです。ココも入学できましたよ」
「あーりがーとさーん。俺よっかケージの応対。正解だよなぁ」
肩を軽くどつかれる。新喜劇芸人のモノマネをした英雄さん。
「さぁていよいよ待ちに待ったご開陳……の前。こっちが先だ」
漫画みたいな黒レンズが覆う巨大丸眼鏡とマスク。顔を隠して
ひっつめた黒髪。若い女性はホコリまみれ。白衣で現れたんだ。
「以前の魔改造車いす。困ったらケージが紹介してくれた相手。
オンラインで古い知人でも初対面か? 自称魔法使いさんだよ」
英雄さんが伸ばした右差し指。その示された女性に驚愕する。
「へっ!? 自称無職の三十路童貞。完全ヒキコモリニート君?
たしか東日本大震災。原発の炎上騒動に巻きこんだヤツじゃん」
「キミがあのケージ君か。本体がアイドル顔ってマジじゃねぇ」
倉庫の暗がり。車いすを押しながら現れた。それがしりあい?
放った機械声は低いデスボイスだ。驚いた表情もこちらだけ。
英雄さんや従業員。おなじみらしくて違和感ない様子にも驚く。
もしかしなくても……素性を隠すため。ボイスチェンジャー。
ぶかぶかの白衣。巨大丸眼鏡で正体を明かさないつもりだろう。
「うーん。一緒にバカばっかやった相手。若い女の子だってさ」
あのころ高校を中退してヒマだった。それなりに学力高いけど
高卒認定と受験勉強にもあきあきした。中二病こじらせたんだ。
いわゆるところの黒歴史だ。片脚オタをもじった青田タカシ。
推理小説でなじみのアナグラムってヤツ? マジに恥ずかしい。
なんかで意気投合した相手。自称魔法使いさん。ネットの闇。
法律ギリギリセーフのお遊びだったよ。なんかいつのまにか?
どこかしらのカキコか投稿写真だ。個人情報までバレたらしい。
悪用されずのもちつもたれつ。つかず離れない不思議な関係。
「ボクのことなんかどーでもいいよ。これから新しい足代わり。
保護者からのプレゼント。さっさとご主人に自己紹介してこい」
女性が声をかけた相手は車いす。正確には座席のスマホだね。
『改めて初めまして。佳二さまの足代わり。車いす制御のAI。
スマホが本体で女性タイプ。femaleとお呼びくださいね」
雰囲気がダンジョンの機械音。脳内じゃない外部スピーカだ。
AIについて。まったくしらない。英雄さんが専門家だよね。
産学共同の事業。連携で開発している。そこは確かに耳にした。
人類の補完。コンピュータで実現させるソフトウェアがAI。
昨今ブラウザ予測変換の機能。検索システムから入力補佐まで
お世話になるAI。だがしかし汎用AIは実現していないよね。
「確認ですけど英雄さん。このAI。国家機密じゃないです?」
「はっはっはっケージくん。各種の特許要項。目下申請中だね。
いわゆるあれさ。ケージを利用したシミュレーション。叩き台」
笑いでごまかしたつもりだろう。シャレにならない現実だよ。
「まぁ実験。つきあうぐらいかまいませんが。ちょっと待った。
もともとCIVICだ。プレゼントされる話じゃないっすか?」
なぜか怒りまでこみあげそうになる。当初の目的を確認した。
「いいところに気づいたね。あけち……じゃない。ケージくん」
「ジョーダンはよしこ……じゃないっす。怪人二十面相ですか。
誰もしりませんよ」双方ネタを交わした会話。誰も追随しない。
「こんなこともあろうかと実現させたんだ。驚いてくれたまえ!
プレゼントはこれだっ!」倉庫に明かりがともる。同時だった。
双眸をひらき全身硬直させるだけ。完全に声まで失くしたよ。
スポットライト。浴びるように鎮座しているコンパクトカー。
漆黒ボディーだ。形状も間違いなくホンダのCIVICなんだ。
だがしかし誰が見ても理解できる。半端ない各種の違和感を。
フロント周囲がえげつないよ。スポイラーで赤く光るLED。
左右に稼働している。理解できて意味不明。ナンバープレート。
白いプレートにゴシック体。JOKERとだけ描かれていた。
『あなたがケージさまですね。この車両がJOKER2000。
制御しているAI。キットやキッドは間違い。開発名male』
「絶対CIVICじゃねぇよ! マジでナイト2000じゃん」
かなりの絶叫になった。悪くないだろう。仕方ない状況だよ。
傍らアッハッハと笑う英雄さん。クスクスと顔を伏せる女性。
自称魔法使いさん。二人が恨めしい。どうしてこうなったんだ。
本町方面から阿波座駅。通過すると数百メートルかけて徐々に
婉曲するんだ。同時に地上まで進む。そうとう珍妙な路線だよ。
交差の阪神電車なんば線。九条駅地下直結で南北に縦断する。
隣接は地元密着タイプのアーケード商店街。シャッター化せず
数ある店が終始にぎわう。周辺も昔は遊郭で栄えた有名な新地。
令和に跡形もない名物ストリップ劇場も人気のミニシアター。
目的の場所は四輪車専門店……ホンダカーズ。九条店だけど。
中央大通りから南になる。百メートルも離れていない近距離だ。
「いよぉケージ。待ちかねたんだぜぇ」もちろん英雄さんの声。
タクシーを横づけして店に近づくと同時だ。車庫に拉致された。
「かなりお待たせ。申し訳ないです。ココも入学できましたよ」
「あーりがーとさーん。俺よっかケージの応対。正解だよなぁ」
肩を軽くどつかれる。新喜劇芸人のモノマネをした英雄さん。
「さぁていよいよ待ちに待ったご開陳……の前。こっちが先だ」
漫画みたいな黒レンズが覆う巨大丸眼鏡とマスク。顔を隠して
ひっつめた黒髪。若い女性はホコリまみれ。白衣で現れたんだ。
「以前の魔改造車いす。困ったらケージが紹介してくれた相手。
オンラインで古い知人でも初対面か? 自称魔法使いさんだよ」
英雄さんが伸ばした右差し指。その示された女性に驚愕する。
「へっ!? 自称無職の三十路童貞。完全ヒキコモリニート君?
たしか東日本大震災。原発の炎上騒動に巻きこんだヤツじゃん」
「キミがあのケージ君か。本体がアイドル顔ってマジじゃねぇ」
倉庫の暗がり。車いすを押しながら現れた。それがしりあい?
放った機械声は低いデスボイスだ。驚いた表情もこちらだけ。
英雄さんや従業員。おなじみらしくて違和感ない様子にも驚く。
もしかしなくても……素性を隠すため。ボイスチェンジャー。
ぶかぶかの白衣。巨大丸眼鏡で正体を明かさないつもりだろう。
「うーん。一緒にバカばっかやった相手。若い女の子だってさ」
あのころ高校を中退してヒマだった。それなりに学力高いけど
高卒認定と受験勉強にもあきあきした。中二病こじらせたんだ。
いわゆるところの黒歴史だ。片脚オタをもじった青田タカシ。
推理小説でなじみのアナグラムってヤツ? マジに恥ずかしい。
なんかで意気投合した相手。自称魔法使いさん。ネットの闇。
法律ギリギリセーフのお遊びだったよ。なんかいつのまにか?
どこかしらのカキコか投稿写真だ。個人情報までバレたらしい。
悪用されずのもちつもたれつ。つかず離れない不思議な関係。
「ボクのことなんかどーでもいいよ。これから新しい足代わり。
保護者からのプレゼント。さっさとご主人に自己紹介してこい」
女性が声をかけた相手は車いす。正確には座席のスマホだね。
『改めて初めまして。佳二さまの足代わり。車いす制御のAI。
スマホが本体で女性タイプ。femaleとお呼びくださいね」
雰囲気がダンジョンの機械音。脳内じゃない外部スピーカだ。
AIについて。まったくしらない。英雄さんが専門家だよね。
産学共同の事業。連携で開発している。そこは確かに耳にした。
人類の補完。コンピュータで実現させるソフトウェアがAI。
昨今ブラウザ予測変換の機能。検索システムから入力補佐まで
お世話になるAI。だがしかし汎用AIは実現していないよね。
「確認ですけど英雄さん。このAI。国家機密じゃないです?」
「はっはっはっケージくん。各種の特許要項。目下申請中だね。
いわゆるあれさ。ケージを利用したシミュレーション。叩き台」
笑いでごまかしたつもりだろう。シャレにならない現実だよ。
「まぁ実験。つきあうぐらいかまいませんが。ちょっと待った。
もともとCIVICだ。プレゼントされる話じゃないっすか?」
なぜか怒りまでこみあげそうになる。当初の目的を確認した。
「いいところに気づいたね。あけち……じゃない。ケージくん」
「ジョーダンはよしこ……じゃないっす。怪人二十面相ですか。
誰もしりませんよ」双方ネタを交わした会話。誰も追随しない。
「こんなこともあろうかと実現させたんだ。驚いてくれたまえ!
プレゼントはこれだっ!」倉庫に明かりがともる。同時だった。
双眸をひらき全身硬直させるだけ。完全に声まで失くしたよ。
スポットライト。浴びるように鎮座しているコンパクトカー。
漆黒ボディーだ。形状も間違いなくホンダのCIVICなんだ。
だがしかし誰が見ても理解できる。半端ない各種の違和感を。
フロント周囲がえげつないよ。スポイラーで赤く光るLED。
左右に稼働している。理解できて意味不明。ナンバープレート。
白いプレートにゴシック体。JOKERとだけ描かれていた。
『あなたがケージさまですね。この車両がJOKER2000。
制御しているAI。キットやキッドは間違い。開発名male』
「絶対CIVICじゃねぇよ! マジでナイト2000じゃん」
かなりの絶叫になった。悪くないだろう。仕方ない状況だよ。
傍らアッハッハと笑う英雄さん。クスクスと顔を伏せる女性。
自称魔法使いさん。二人が恨めしい。どうしてこうなったんだ。
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