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本編3 始まりのダンジョン入場します

第十七話 始まりの迷宮で邂逅(17)

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 関西テニス協会。本部建屋が現在地だ。入口がひらくと同時に
逆光のなか影が二つ映えた。かなりの身長差があるから男と女?

「皆さんお疲れさまです。なにか体調の面で問題ありません?」
 入室と同時に艶っぽい仕草の白衣姿だ。隣が機材を掲げる男。

 ぶしつけな視線で全身をチェックしていたらしい。だがしかし
悪くないよね。グラビアアイドルじゃないか二度見する美人だ。

 巨乳から足先までつづく脚線美。奇麗なお尻もそそるんだよ。
「あら? 皆さん警戒しましたよね。打ち解けるのが早くない」


 白衣の美女が微笑みながらこぼす。男も同時に敬礼で伝えた。
「葛城二佐っ! とり急ぎ通信各社の協力で直電確保しました」

「とりあえず通話だけでも早急に確保できたのならありがたい」
「ええ。携帯各社。回線に問題なしです。ただしネットは……」
 男と葛城二佐の会話だ。耳にしてざわめくなか着信音が轟く。

 その機械音はいわゆるボーカロイド女声だ。スマホの着信音。
「はい? 佳二です。閣下ご無沙汰してますね。実はいま……」


「もちろん聴いてわかっとる。地震の直後からバカ娘とケージが
横並びで歩く姿。周囲の監視カメラにようさん撮影されとるぞ」
 通話を始めながら向こうのおおきな地声。体ごとのけぞった。

「えぇーっ!? まさかの爺ちゃん即ばれじゃんか。きちーよ」
 顔をしかめてうなり声の永依。ココに抱きついてうずくまる。

「えーっと閣下すみません。ある程度の情報お持ちのようですが
こちらは全員揃って混乱中。現場責任者に変わりましょうか?」

 葛城二佐に私物スマホを渡そうとして同時。瞬時にスピーカー
フォンを設定する。今後の状況を考慮して軽い説明も追加した。


「葛城二佐すいません。おそらくご存じとおもいますが。与党の
英田副総裁です。できるだけ手短に簡潔な説明でお願いします」
 驚いてスマホをうけとる葛城。隣の美里まで同時に硬直する。

「英田副総裁であられますかっ。わたくし陸上自衛隊所属。葛城
二佐であります。どのような用件のお電話でございましょうか」

「あぁ英田だ。挨拶も必要ねぇよ。靭公園にできたダンジョンの
責任者。現状キミなのか? 佳二はいいんだが孫の永依。言葉が
一切通じん。おバカ娘だから無視だ。変に関わると大損するぜ」


 こちらへの対応よりマジメに伝えた。本心からの言葉だろう。
うけとる側の気持ちまで考慮できないおおざっぱな性格。一族の
共通点かもしれない。自分たち以外は直立不動の体勢だったよ。

「まさかとおもいますが派手な髪色の少女。副総裁のお孫さまに
間違いないと?」信じられないだろう。両目を見開く葛城二佐。

「あぁ次男は優秀だ。嫁の弁護士圭子も非常にできた人物だよ。
その弟だから佳二もユニーク。外孫誰かを嫁にやる協議しとる」

「えぇーっ爺ちゃん。それぜってぇダメっしょ。ケーちゃんの嫁
あーしよ。昔から決まってんの!」離れた位置から永依が叫ぶ。


「何度伝えればわかるんだ。この国じゃ三親等。血縁者の婚姻は
認められてねーんだよ」電話の向こう。英田副総裁がうめいた。

「…………」葛城二佐の隣で立ちすくむ。呆然とするだけだよ。
ネタじゃないけど……聴いてない。大声で叫びたい気分なんだ。

 あまりに異次元すぎる会話だけどね。始まりの原因はなんだと
悩むこちらを眺めて笑う永依。双眸をみひらくココも印象的だ。

「わしらも陸自の輸送防護車だからな。習志野行きの道中で……
大型輸送ヘリにレンジャー同伴して八尾空港。二時間かからん」
 状況を区切りながら伝える副総裁。こちらに言葉を追加する。


「日付変わる前に到着するさ。おバカ娘も起こしとけ。メシでも
喰わせりゃ落ちつくだろうよ。ケージも時間外だ軽く飲んでろ」
 閣下の怒鳴り声。顔色を変化させたのは永依と自衛官たちだ。

 警官も同時に事前確認。迎える準備にと忙しなく動き始めた。
「こちらも了解しました閣下。無事のご到着お待ちしています」
「おぉ」葛城二佐が丁寧に応じると短い返答。通話が途切れた。

 こちらも両腕。軽く伸びをしてから優先する順位を黙考する。
永依の祖父は与党副総裁。英田常勝は理解早く話も通りやすい。

 ココの今後についても収める形。対応策が得られて問題ない。


「聴いたろエーちゃん。閣下が到着する前にちゃんとメシ食って
叱られる準備しときなよ。ココの今後のことでは迷惑かけるし」

「りょ……ココちゃんと一緒に暮らすため。頑張って謝るから」
「なにかと面倒かけるが。すまないな」珍しく落ちこんだ様子の
永依。自らの状況も絡むため両肩に手をあてるココの励ましだ。

「葛城二佐お疲れでした。ミサトさんもお迎えの準備を整えたら
閣下のお許しもありますし。飲みながら雑談して待ちましょう」

「そうですね。あなたたち三人。直接でないにせよ。広い範囲で
政府の関係者。そういえなくはないです。二度手間も……ムダ」
 美里が苦笑しながら立ちあがり私服警官たちに行動を促した。


 台風が通過したその直後。特大ハリケーンまで発生したような
わからない状況に流される三人だ。見えない明日はどうなるの。
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