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本編3 始まりのダンジョン入場します

第二十一話 始まりの迷宮で邂逅(21)

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「ケージくん分析家だっけ。アタシもビックリ。魂の予言者よ?
あの歌だよね。魂ぃのぉーってネタはダメかなぁ。アハハハハ」
 カードの裏を確認すると同時だ。なぜか鈴音が笑い転げたよ。

「アハハじゃないっすから鈴音さん。ルフランって言葉の意味。
輪廻転生のフランス語訳かな? そんな意訳ですから深いんで」

「うんうんうん」説明を聴き理解したらしい。納得顔の鈴音だ。

「トラックに引かれちゃったら困るんだけどね。仏教的な意味で
輪廻転生いーじゃん。弥勒菩薩さまだって五十六億七千万年後に
復活して救済してくれるんだよ」なぜか笑いが止まらない鈴音。


「……美里さんのも意味わかんないけどすげぇ。過去の女神?」
 カードを見て悩む仕草の美里だ。背後から笑顔で問いかける。

「そうだよね。女神さまってベルダンディー? 過去なんだから
ウルドお姉ちゃんか」即座に応じる美里だ。いきなりオタク属性
全開だけどさ。ネタ振りとノリの良さに頭を抱えさせられるよ。

「なぜだ……恥じる行動した記憶もない。悪鬼羅刹はおかしい。
英語表記パーフェクト・ヒューマン。完璧な人間になるだろう」
 目前ちいさくつぶやいた部隊長だ。見つめて言葉を失くした。


「戻りました閣下。なぜか分かりません。全員スキルでました」

「やはり階層主討伐とスキルは無関係。しかし特殊なスキルでも
役割次第。所持で反映されるのか。身体機能も検証いるよなぁ」
 報告と同時に口端を歪めて応じる。英田副総裁もお悩みだよ。


「ところでケージ。首相ふくめた党方針なんとかまとめたんだ。
大手の新聞社には状況も伝えた。朝7時のニュースから最低限。
情報解禁するぜ。ダンジョン周辺を早期買収に繋げるためにも」

 ゲームや小説で空想の存在だったダンジョン。現実の世界でも
確認されましたと報道しても信じるひと。どれぐらいだろうね?

 現実として目にしない限りは眉唾物だと常識で考えるだろう。
 世界は変化した。それを実感する状況もかなり先になるよね。


「なるほど。靭公園は市内の西になる。東は四ツ橋筋で地下鉄の
駅も近いからさ。まぁ御堂筋は無理でも四ツ橋の封鎖も目途に」
 生まれ育ちも大阪だ。土地勘はある。それなりの愛着もある。

「うちで確保した土留め用矢板。昔の地盤資料で演算させたよ。
靭公園はRC造5mの擁壁。全周封鎖でなにわ筋もバイパスだ」
 すこし自慢するような閣下。身振りで伝えた内容に驚きだよ。


「へ? なにわ筋も全面封鎖ですか。大渋滞待ったなしだよね」
 四ツ橋筋と比較して少数でも一日数万台。交通量はあるんだ。

「とりあえず中央大通りから土佐堀まで朝7時から通行止めだ。
迂回させながら地盤を改良。バイパス工事で凌げればいいがね」

 左掌で鼻口に触れながら軽く両眼を伏せる閣下が理想を語る。
ゼネコン主体のJV。それでも長期化する規模の大工事だよね。

「なにわ筋は確かに幹線道路ですが四ツ橋。新なにわまで近い。
それなら買収範囲は東が四ツ橋。西はあみだ筋。北の土佐堀なら
南が本町通かな」左腕と差し指を振りかざす。脳内で想像した。


 どれぐらい住民に影響する。半強制で立ち退かされるだろう。
軽いイメージだけで頭を抱えた。おそらく数万人の規模になる。

「ジーちゃんとケーちゃんおはよ。なんで深刻な顔してんの?」
 永依が目覚めた。テーブルに腕を伸ばして視線で伝えられる。
眠るココもおおきな白耳に声が届いたらしい。ほぼ同時だった。

「んーとさ。ダンジョンできて危険な状況だよね。マスコミから
発表する話? どこまで国の管理下におけるのかを話してたよ」
「へぇ。うちのガッコなくなっちゃうかな? 近くていいのに」

 ごく自然に状況を伝えてみる。永依の興味は別になるらしい。
「いや。校舎って北御堂の隣だよね。おそらく範囲の外だけど」


「よかった。そーいやジーちゃん。ココちゃんも同じガッコって
行けちゃうのかな?」永依が問う。絶妙に喫緊の課題だけどね。

 日本の国籍を取得することは簡単にできるものでもないんだ。
「ふむ。不法入国の外国人扱いもできんしな。どこか遠縁の娘で
ゴリ押しか。長男が外でこしらえた形。裏から手配すりゃ……」

 孫の期待には応じたい閣下なりの配慮だろうね。耳にしながら
驚愕するだけだ。ここにはいない長男の英雄さんが大迷惑だよ。
「まぁ悪くなるような結果にせん。安心して待っとりゃいいよ」


 右の掌を振りながら笑う閣下。永依が大喜びでココに伝える。
「ジーちゃんありがと。ココちゃんもガッコ通えるなら大忙し」
「学校か。この世界。国の仕組みから現状理解も必須だろうな」

 進化した新人類になるココ。ダンジョンで新しい身体。生命を
得た目的探し。外の世界で知識を吸収するのが早道かと納得だ。

「閣下。今後の方向性と優先順位は理解できました。自分たちも
可能な範囲ですが手伝わせてもらいますよ。連絡くださいよね」

 きちんと立ちあがり真摯に目礼しながらマジメに伝えたんだ。
 好奇心となりゆきき任せ。それが招いた結果だから仕方ない。


「おぉ。わしらこれからダンジョン八ケ所。実際に視察するわ。
連絡がわり姫宮と御手洗を預けるからな。あとで連絡させるさ」

 パイプ椅子からびしっと快音響かせながら立ちあがる閣下だ。
始めと同様に特殊作戦群の精鋭をお供にして閣下が立ちさった。

「ケーちゃん。あーしらもやっとお家に帰れるね」永依が笑う。
「うん。一睡もしてない。ホント長い一日だよ」即座に応じた。


 偶然と誰かさんの導き。本来交わるはずない三人が邂逅した。
ダンジョンが人類に及ぼす影響。それを理解する存在はいない。
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