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本編3 始まりのダンジョン入場します
第十九話 始まりの迷宮で邂逅(19)
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突如入口付近でざわめきだ。そこに完全武装。強面の男たちが
姿を現した。同時に整う仕草で三つに別れると瞬時の再整列だ。
背後に現れた痩身矮躯。高級スーツに身を包む老人は全身から
漂う風格と眼力で他者を圧倒する。永依の祖父になる英田常勝。
自由民生党の重鎮で紀州最大ゼネコン。代表取締役社長さん。
自分たち三人を除けば部屋の全員。即座に最敬礼する応対だ。
だがしかし直前まで感じた腕の柔かさと鼻腔の芳しさ。真冬の
迷宮に与えられた錯覚だったかもしれない。心のなかは大混乱。
美女二人は直立不動で最敬礼だ。酒に酔った仕草に見えない。
ハニートラップ対象にされたのかな。それを理解すると同時に
感じられた怖気。ムカデより強烈すぎて恐怖心しか生まないね。
「いよぅケージ元気そうで何より。いつも面倒ばかりで悪ぃな」
閣下なりに孫の面倒見る義理の甥っ子。感謝しているらしい。
「いえ閣下とんでもないですよ。地口の悪さ。でかい態度だけで
文句いいません。基本は優しくておバカでも良い子ですからね」
姉の長子だから昔から接点もある。年の差が離れた妹なんだ。
「ここからはオトナ時間。いろいろ見聞きした問題点の対策だ。
リアル世界に誕生したダンジョン。理解しやすい説明で頼んだ」
姉の義父は優しいが強烈すぎる地声。瞬時に意識が戻された。
そこからの話は早かった。あまりにも早すぎる展開。停滞した
時間とゆるんだ空気まで即座に解消された。黙しままの傾聴だ。
まず語り部として靭公園に侵入した状況だ。入口で脳内に響く
音声から誘導された経緯になる。体験談として時系列の報告だ。
最奥で眠り姫ココとの邂逅。出口まで至るあれこれを伝える。
憶測と想像を交えて簡潔に補いながら理解しやすい説明だった。
「ふむ。レンジャー部隊としてダンジョンについての見解は?」
口端を歪めてパイプ椅子。ふんぞり返る老人の問い。もちろん
英田副総裁。直々に問われて精悍な顔つきをした男が即答する。
「彼ら三人。意図しなかったにせよ結果的に無傷の生還でした。
それに唯一無二の技能を授かる状況。間違いないのでしょうね」
「つまりあれかな? 協力してもらい君たちも強くなりたいと」
英田副総裁の嫌味半分な言葉だ。真摯に応対する部隊長だよ。
すでに日付変更線を跨いで久しい。薄三つ時も迫った時刻だ。
はしゃぎ疲れた少女たち。テーブルに重なるように頭を伏せて
起きる気配もない。飲み食いして落ちついた深い眠りのなかだ。
「二人は幼い。きっと朝まで目覚めないですよ」実情を伝えると
義伯父が笑った。周囲に対する指示。決定事項を伝えるために。
「それでいいさ。ここからオトナの時間。少数精鋭で様子見から
ダンジョン突入。カードとスキルの取得だ。フルコースで体験」
「えーっと閣下。永依たちに守られてばかりのオレは役立たず。
道案内可能ですが。闘いなんかを求められても困りますからね」
間違いなしに困惑した表情だ。周囲も苦笑いをこぼすだけだ。
「唯一無二のダンジョン体験者。ケージは案内だけでも十分さ。
闘いは兄ちゃん。守りも奇麗な姉ちゃん。それで問題ないよな」
ニヤリと笑いながら英田副総裁が語る。パイプ椅子の指揮官。
「そりゃ閣下。ご高齢でダンジョン攻略も必要ない。とりあえず
部隊長さん。ミサトさんに鈴音さん。オレ四人で様子見ですね」
「まずそこから検証だな」了承した閣下の言葉に黙るしかない。
指名された三人。やる気満々らしい。各自で装備を確認してる。
レンジャーの部隊長は九条と名乗った。三十代の精悍な男だ。
永依と同じ武器がいらない肉体派。軽装にサイドバッグ装着だ。
美里は頭脳派の警察官僚だと勝手に想像していたから驚きだ。
武具を逆手に綿密な連動確認だ。およそ穂の実刃が30cm。
柄も一メートルの短い薙刀。振りかざす姿勢まで達人級なんだ。
それより驚いたのが鈴音だった。両刃のスローイングナイフ。
懐から何本も抜いて指先で切れ味。重さまで確認して微笑んだ。
英田副総裁も女性たちの武具を目にして興味を抱いたらしい。
「短い薙刀か。かなり珍しい武具になるの。お前さん名前は?」
「姫宮……姫宮美里です。閣下も今後。お見しりおき願います」
「ほぉ。姫宮ばばぁの血縁かよ。直系でないにせよ実力派だな」
「そっちの暗器使い。看護師さんは? 素人の動きじゃねぇよ」
「御手洗……御手洗鈴音です。今後もよろしくお願いしますね」
「そっちは修験道の達人か。大峰山系なら行者の血筋だよなぁ」
おおきく腕を振りかざす。英田副総裁がつぶやきをこぼした。
「両者ともケージの嫁になる資質ありかい。おもしれぇもんだ」
姿を現した。同時に整う仕草で三つに別れると瞬時の再整列だ。
背後に現れた痩身矮躯。高級スーツに身を包む老人は全身から
漂う風格と眼力で他者を圧倒する。永依の祖父になる英田常勝。
自由民生党の重鎮で紀州最大ゼネコン。代表取締役社長さん。
自分たち三人を除けば部屋の全員。即座に最敬礼する応対だ。
だがしかし直前まで感じた腕の柔かさと鼻腔の芳しさ。真冬の
迷宮に与えられた錯覚だったかもしれない。心のなかは大混乱。
美女二人は直立不動で最敬礼だ。酒に酔った仕草に見えない。
ハニートラップ対象にされたのかな。それを理解すると同時に
感じられた怖気。ムカデより強烈すぎて恐怖心しか生まないね。
「いよぅケージ元気そうで何より。いつも面倒ばかりで悪ぃな」
閣下なりに孫の面倒見る義理の甥っ子。感謝しているらしい。
「いえ閣下とんでもないですよ。地口の悪さ。でかい態度だけで
文句いいません。基本は優しくておバカでも良い子ですからね」
姉の長子だから昔から接点もある。年の差が離れた妹なんだ。
「ここからはオトナ時間。いろいろ見聞きした問題点の対策だ。
リアル世界に誕生したダンジョン。理解しやすい説明で頼んだ」
姉の義父は優しいが強烈すぎる地声。瞬時に意識が戻された。
そこからの話は早かった。あまりにも早すぎる展開。停滞した
時間とゆるんだ空気まで即座に解消された。黙しままの傾聴だ。
まず語り部として靭公園に侵入した状況だ。入口で脳内に響く
音声から誘導された経緯になる。体験談として時系列の報告だ。
最奥で眠り姫ココとの邂逅。出口まで至るあれこれを伝える。
憶測と想像を交えて簡潔に補いながら理解しやすい説明だった。
「ふむ。レンジャー部隊としてダンジョンについての見解は?」
口端を歪めてパイプ椅子。ふんぞり返る老人の問い。もちろん
英田副総裁。直々に問われて精悍な顔つきをした男が即答する。
「彼ら三人。意図しなかったにせよ結果的に無傷の生還でした。
それに唯一無二の技能を授かる状況。間違いないのでしょうね」
「つまりあれかな? 協力してもらい君たちも強くなりたいと」
英田副総裁の嫌味半分な言葉だ。真摯に応対する部隊長だよ。
すでに日付変更線を跨いで久しい。薄三つ時も迫った時刻だ。
はしゃぎ疲れた少女たち。テーブルに重なるように頭を伏せて
起きる気配もない。飲み食いして落ちついた深い眠りのなかだ。
「二人は幼い。きっと朝まで目覚めないですよ」実情を伝えると
義伯父が笑った。周囲に対する指示。決定事項を伝えるために。
「それでいいさ。ここからオトナの時間。少数精鋭で様子見から
ダンジョン突入。カードとスキルの取得だ。フルコースで体験」
「えーっと閣下。永依たちに守られてばかりのオレは役立たず。
道案内可能ですが。闘いなんかを求められても困りますからね」
間違いなしに困惑した表情だ。周囲も苦笑いをこぼすだけだ。
「唯一無二のダンジョン体験者。ケージは案内だけでも十分さ。
闘いは兄ちゃん。守りも奇麗な姉ちゃん。それで問題ないよな」
ニヤリと笑いながら英田副総裁が語る。パイプ椅子の指揮官。
「そりゃ閣下。ご高齢でダンジョン攻略も必要ない。とりあえず
部隊長さん。ミサトさんに鈴音さん。オレ四人で様子見ですね」
「まずそこから検証だな」了承した閣下の言葉に黙るしかない。
指名された三人。やる気満々らしい。各自で装備を確認してる。
レンジャーの部隊長は九条と名乗った。三十代の精悍な男だ。
永依と同じ武器がいらない肉体派。軽装にサイドバッグ装着だ。
美里は頭脳派の警察官僚だと勝手に想像していたから驚きだ。
武具を逆手に綿密な連動確認だ。およそ穂の実刃が30cm。
柄も一メートルの短い薙刀。振りかざす姿勢まで達人級なんだ。
それより驚いたのが鈴音だった。両刃のスローイングナイフ。
懐から何本も抜いて指先で切れ味。重さまで確認して微笑んだ。
英田副総裁も女性たちの武具を目にして興味を抱いたらしい。
「短い薙刀か。かなり珍しい武具になるの。お前さん名前は?」
「姫宮……姫宮美里です。閣下も今後。お見しりおき願います」
「ほぉ。姫宮ばばぁの血縁かよ。直系でないにせよ実力派だな」
「そっちの暗器使い。看護師さんは? 素人の動きじゃねぇよ」
「御手洗……御手洗鈴音です。今後もよろしくお願いしますね」
「そっちは修験道の達人か。大峰山系なら行者の血筋だよなぁ」
おおきく腕を振りかざす。英田副総裁がつぶやきをこぼした。
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