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本編3 始まりのダンジョン入場します

第十五話 始まりの迷宮で邂逅(15)

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「アッハッハマジすかー。喜ばしい提案っしょ。ココちゃん!」
 大声で笑う永依がおかしいよ。アヤシさ満点の笑顔だけどね。

「一緒に選ぼうよっ。いまから兵隊さんたち。ミリメシっての?
うんまいパック飯。種類いっぱいだから。選ばせてくれるよ!」

 聴いたココも即時行動だ。無表情のままテーブル席に駆ける。

 入口からは遠いテーブル席だ。なぜかミリメシが並んでいる。
陸上自衛隊の採用時から改良された戦闘糧食だ。パックはⅡ型。


「ココちゃんお肉好きなんだよね。焼き鳥かな。かも肉じゃが?
ポークソーセージ。豚生姜焼き。角煮もあるよ。あとカレー?」

「つまり鶏か豚だよね。ボリューミーな牛が理想的なんだけど」
 決め手に欠けて悩む様子のココだ。自衛官も傍から助言する。

「自分なら食べやすさ優先。ボリューミーなカレー好きですね」
 男が抱えるパッケージ。迷わず両の掌でうけとるココだった。

「おかずは炭焼きチキン。ウインナーカレーだよ。ご飯二つだ」
 背中から抱きつく永依だ。耳元に唇を寄せて中身を説明した。

「二人分なら丁度いいかな」伝えられたココ。考えて納得した。


「なんでこうなるの」現実は哀しい。離れた位置で頭を抱えた。
 なぜか目前に初老の男。幹部自衛官と若い女性の警察官僚だ。

 正面に座る相手と『名刺』交換する最中。状況おかしくねえ?
……どうしてこうなるよ? このあと面談や企業説明じゃない。

 ダンジョンの入口に繋がる階段室の前。間違いなしのリアル。


 話がすこし戻り……ふてくされるココだ。永依だけが応じた。
意識を失くしてから倒れた状態の自衛官。スーツ姿は警察官だ。

 細腕で永依が抱え起こした。額や首筋にそのまま活をいれる。

 意識が戻るとギャルの腕。抱えられる状態だ。目前の美少女に
打ちのめされる。感情の赴くままだ。おバカ娘のファンになる。

 永依に崇拝の視線を向けた。見つめながらも身体を確認する。
自作自演じゃね。ラブ抜きで性質の悪いコメディに見えるんだ。


 こちらは三人。建屋の出入口と階段扉から最も離れた中央だ。
黒いスーツ女性がパイプの椅子。折り畳みテーブルを設置する。

 初老男の対面に着座させられる。ほんのすこしだけ緊張した。
「それで……なんだった。最近すこしだけ物忘れでね……我々も
君たちとは敵対。事を構えたい訳じゃないよ。まず自己紹介だ」

 まぁそれもそうかな。一般的に社会人として常識なんだろう。
「陸上自衛隊の二等陸佐だ。信太山駐屯地では司令補佐。兼務が
大阪地方協力本部次長になる役職」きちんとした制帽。正装だ。


 合同庁舎の近く。割とみかける幹部職。意識して正解だよね。

「城……佳二くんだったかな? すこし調査させてもらったよ。
悪い意味じゃなく義足。よく目立つから有名人だ。問題ない人物
評価。わたしは葛城蓮司だよ」聴いた内容。驚きながら即応だ。

「恥すかしい事実もない。構いません。陸自の葛城二佐ですか」
「私ですね。内閣府の国家公安警察です。正式な下部組織になる
調査機関で階級なら警視になりますね。名前が……姫宮美里と」


 うつむいて頬を染める表情に疑問を抱く。オタ属性の閃きだ。
「ミサトさんに……葛城二佐ですか……まさか別姓の親子で?」

「同時です……気がつきますよね。仕方ありません。残念ですが
親戚じゃない。それにアニメとリアル。同一次元で語られますと
なんですか。社会人としてどうかと……お伝えしたくなります」

「おぉっ名前ミサトさん。それがクール属性。ツンデレじゃん」
 早くもオタ度マシマシ。引くだけの美里。ガン無視の葛城だ。


「くだらない話。さておきです。あなたたちはダンジョン内部。
なにやりました? すこし前からです。脳内で理解不能な音声。
聴こえました。ここは始まりの迷宮。そう確認されていますよ」

 かなりの興奮状態。こちらに左さし指を突きつける美里さん。

「えっとですね。最初からすべてを説明すればいいんですかね。
理解できるのかな。自分たちに隠すところなんてなんもないし」

 伝えた言葉。不可解さを美里も判断できない。葛城に丸投げ。
「私だけでなく葛城二佐も同時拝聴します。端的な事実だけを」


 瞬時に脳内思考をめぐらせる。これもプレゼンテーションだと
意識する。伝える順序でも問題ない。リアルに確認済み。混乱は
回避できる。『事実だけ端的』それが基本。だから間違いない。

「そうですね。まずはダンジョン。一体なんだとおもいます?」
 だがしかし最初に意識した。これは究極にして至高の問題だ。

 その初手だよね。完全に悪手だったと嘆くことになる発言だ。

 伝え方と聴く側。想像と認識がちがいすぎた。導く結果も……
――「人生諦めが肝心」そんな言葉になる。想像力と創造性だ。

 前進するのみ。いつか未来を変えられる。そう信じるだけ――
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