なにわ友あれダンジョン1「オタ社長が空手ギャルや巨乳バニーと同棲中(●秘)?」これは事案ですか。いいえ。人助けですからセーフ。

内村うっちー

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本編3 始まりのダンジョン入場します

第十四話 始まりの迷宮で邂逅(14)

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「おふろ。オフロッ。お風呂っ。ご飯っ」永依はいつも全力だ。
特別に感慨もない。迷宮の扉を抜けようとした――瞬間だった。

 いきなり目前は人間の壁だ。三人同時の驚きで声もだせない。
変化のない部屋に銃を構える男たち。正面で立ちはだかる姿だ。

「なんじゃこりゃぁ」昔のドラマじゃない。意識しない言葉だ。


「君たちにお願いだ。そのままで両腕を掲げてもらえないかね」
制帽を被る正装だね。男たちの中心で初老の指揮官が腕を振る。

 左には野戦服の五人が並ぶ。濃緑装備に自動小銃を構える姿。
照準あわせて微動もしない雄姿だね。陸上自衛官で間違いない。

「お願いします。射撃と強迫は趣味じゃないの。嫌な仕事です」
中央の右が黒スーツの若い女性。ほぼ同年代だろうと意識する。

 右の五人も黒スーツだ。だがしかし拳銃を構える姿は本格派。
整えられた装備が刑事を想像させた。若者たちは本気で残念だ。

 ピンク髪のギャルとウサ耳の美少女。欲望の視線も釘づけだ。


「なんでこうなるの?」出口だから仕方ない。純粋な驚きだけ。
それぞれカードを見直した。裏面の表記を確認しあった直後だ。

 パネルにカードを触れあわせる。同時に両扉が動いた瞬間だ。

 目前は人間の壁。なんでこうなったのかも一切理解できない。
「えっとですね。いくつかの質問させてもらって構いません?」

「いいだろう」響く低音。即応されたのは正面にいた初老男だ。
相手の質問は正直に応えるだけだ。理解できない状況だからさ。

「確かに誕生直後。地下ダンジョンに無断侵入しましたけどね。
悪意もありません。気になったから調査です。それだけですよ」


 無断の侵入は犯罪か永依に尋ねられた。その際の返答に近い。
「ふむ」初老男がつぶやく。同時に指を唇にあてながら説明だ。

「ダンジョン不法侵入。君たちだけじゃないさ。帰還時そちらで
暴れた連中がたくさんいた」男の説明だった。納得できないが。

「現状。判明している事実だけを簡潔に伝えよう。日没の瞬間。
全国で八か所の公園地下だね。ダンジョンとして発生したんだ。
世界総数は現時点で判明していない」男が理解しやすく区切る。

「国内で上野公園の一報だったかな。調査に自衛隊が突入した。
そこに若者多数が乱入して襲いかかった。大変だったらしいね」


「武官で取り押さえて聴取したよ。『試練の時』だったのかな。
それを選択してから一時間。クリアもできずに錯乱状態だった」

 聴いてビックリの新事実だ。試練の時全スルー。正解じゃん。
永依の悪運だ。なぜか初老の男も苦笑しながら説明してくれた。

「我々も不可解だよ。とにかく興奮が治まってからダンジョン。
状況を確認したさ。武具を使用禁止された空間らしい。スキルと
呼ばれる技能だ。必要になるらしいよ」伝える男が苦笑いする。

「傷もない君たちがダンジョンから現れた。馬の耳に念仏かな。
自衛隊の精鋭でもクリアできない。リアルのそれもお約束かな」


「…………」こちらはすべてが初耳だった。スキルの意味なんか
わかるはずもない。両隣に軽く視線をやる。驚いたことに二人が
なぜか臨戦態勢。意識の高ぶりなのか体感温度まで急上昇だよ。

「絶対に誰も大ケガさせるなよ。武装と意識だけを刈りとれ!」
 許可する意味だ。伝えた瞬間に隣の二人ほぼ同時にジャンプ。

 こちらも初老男を視線で抑えながらスーツの女性と対峙する。
『バールのようなもの』金属の棒だ。振りかざして威嚇したよ。

「おぉ」「りょ」ほぼ同時に異口同音。端的すぎる即応だった。


 一瞬だけ目線を交わす二人。それぞれ別の方向に天井近くまで
力任せの跳躍だったよ。奇跡と呼べる程度に人間離れした身体。

 なんか超絶すぎない。目で追える者など誰もいない凄まじさ。
 闘いの終了までは一瞬だった。わずか数十秒で決着ついたよ。

 最強の空手少女になる永依。空中で一周以上回転しての蹴り。
ちいさな足の甲だ。うなじや首筋に直撃で意識だけを刈りとる。

 心臓喰らいがスキル名。ウサ耳少女のココは速さに特化する。
ジャンプしながら両掌を利用する突き。そのまま急所に一撃だ。

 目前は初老の男。若い黒スーツの女性もいる。静かに伝えた。
「はーい。二人ともお疲れさん。ほぼ一瞬だったけどおしまい」


「さすがにダンジョンから普通に現れた少女だ。すばらしいね」

 瞬時に倒された部下。私服の刑事を眺めながらため息をつく。
初老の男だ。強い少女より部下の弱さ。反応できないのだろう。

「えっとですね。まず申し訳ないです。こちらに敵対する意思は
ありません。二人とも活を入れて全員。起こしてくれないかな」

「ほーい」「…………」軽く応じる永依はいい。表情をしかめて
無言でいるココだ。気になるから納得させるためにも説明する。

「ココはしらないだろうけどね。彼らは敵対する相手じゃない。
見解の相違かなぁ? 言葉で説明すれば誤解もなくなるはずさ」

 本音は帰宅して飯と風呂で落ちつきたいんだ。のんびり今後の
成り行きを考えてシングルモルト。浴びるほど飲みたいんだよ。

 ほんとうに人生はままならないものだね。ため息しかでない。
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