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本編2 始まりの先で待つしらない相手

第四話 始まりの迷宮で邂逅(4)

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――数瞬の後だった。すこし異なる機械の音声。脳内で後追い。
【始マリノ迷宮デ討伐確認】プラス【討伐者ニ初回特典ノ付与】


「始まりの迷宮はここ。機械音が伝えた内容おかしくないか?」
 取っ手を握りながらのつぶやき。同時に傍から永依の叫び声。

「ねぇねぇケーちゃん! さっきの声ってさ。あーしらより先に
モンスター倒したヤツいるじゃん。あーしらなめてんじゃね!」

「うん。いまのオレたち入口だ。誰か先に行った形跡もないし。
やっぱオレたちよりも前から迷宮いたんだ。特典が謎だけどさ」
 すぐモンスターを倒せる相手だ。仕方がないと納得しかない。


「マジもんムカつくっしょ。ダンジョン特典とられちったし!」
 拳を震わせ怒りを表現するギャル。可愛らしく見えても怖い。
「試練の時。全スルーじゃん」炎が宿る双眸。見つめて考える。

「ん。それもいいか。じゃあ一緒に入場しようかな。よろしく」
 永依の勢いにはめられたかな。ダンジョンの突入もなりゆき。


【入口デ正規ノ入場ヲ確認】プラス【許可証ヲ全自動デ作成ダ】
――音声と同時のまばゆく輝いた球体。突如として出現したよ。

「…………?」声を失くす。音もせず光球が破裂すると同時だ。
 メタリックに輝いた免許証サイズ。空中でカードが出現すると
真っ白にきらめく。残照と同時重力に導かれるように落下した。

「このカードなに?」無意識のつぶやき。落ちたカードを拾う。

「えっとさ。鍵じゃね? たぶん扉からの出入りに必要なんだ」
 拾ったカード。満遍なく確認しながら永依の言葉にうなずく。

「タッチパネル?」扉の左下だよ。輝く場所を見つけて驚いた。


「すごいよね。きっと最新型だ。入退室用の自動識別装置かな」
 白い輝きの金属。見当つかないよ。およそ1mm厚のカード。
免許証と同サイズだよね。その理由はJIS規格の完全な準拠?

 地下迷宮を創造した誰かさん。忖度でもされたかなと考える。

 「番号が00000000021だって!? ちょっと待って」
 拾いあげたカード。並んだ数字を一目しながら無意識だった。


「えっ? ちょっと待ってちょと待ってオニーサン♪ ラッスン
ゴレライってなんですのん! 懐かしいね。お笑いネタじゃん」

「2014年ごろのネタだよ! 完全一発屋芸人のネタだから。
悪意の噂で消えたコンビ。エーちゃん当時はおこちゃまだろ?」

「ちげぇし! ガッコのおバカがさわぐネタだった。ママ専用の
図書室あっからさ。お宝DVDいっぱいみたしょ。マンガと紙本
読んだから。めっちゃおもろいのばっかし。泣いたんだよねー」

「そりゃネーちゃん。昔から変わんないレベルのオタクだもん」
 もともと両親とも初期オタク。世代だから冷汗が止まらない。


「なんで十一桁か考えた。携帯番号意識してないのかと勘ぐり。
関係ないよね。いちじゅうひゃくせん……100億だ。最大でも
999億ってことだから。なんの数字かな。つーか21だって」

「ふーん。あーし31よ」カードを拾う永依。つぶやきだった。

「へっ? 十一桁目が1ってことはアレ。最大で99億じゃん。
地球の人口だいたい70億ぐらい。きっとそこからきてんだよ。
じゃあ十桁目オレ2。エーちゃん3。だから討伐者が1なんだ」


 カード番号が00000000011。一番入場者は誰だよ?
おそらく迷宮で邂逅する相手。敵か味方かもわかんないけどさ。

 検証するために二人で動く。迷宮で情報を集めようと考えた。
『始まりの迷宮』名前の理由。おそらく同時多発の誕生だよね。

 どんな思惑で次元の異なる地下迷宮。地球で創造したのかな。

 たぶん人間には理解できない。神のみぞ知る領域なんだろう。


 片足のために走ったり闘ったりできない。それも仕方がないと
納得してる。世界は障がい者にとって優しくできてないからさ。

 みんなで助けあおうは言葉の綺麗な解釈だ。現実は厳しいよ。

 それぞれが生まれた環境もちがうんだ。可能な範囲の問題さ。
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