上 下
1 / 53
本編1 始まりが公園ダンジョンの誕生

第一話 始まりの迷宮で邂逅(1)

しおりを挟む
――――プロローグ――――

(シーン1)
 床は岩肌。奇妙な文様が描かれる空間だ。円陣で眠るのは誰?
膝を腕に抱える眠り姫の……深い呼吸。応じる胸が大揺れした。

 誰もが認める美少女の――頭。屹立する右耳を覆う白綿毛だ。
肩までロップした左耳。同色の黒髪も美しい――ウサギ獣人だ。


「眠り姫の覚醒も近い……それも新たな邂逅であり宿命かな?」
 偶然であれ危機を回避した。予想される未来と可能性も無限。

「運命の出逢いから未来は変わるのさ。ダンジョン眠り姫さん」


(シーン2)
「ダンジョンってなに?」勢い問われた。お怒りの空手ギャル。
即応できない状況はゲームじゃない。リアルな意味での難しさ。

 だがしかし気がついた。人間の理も通用しないダンジョン――
すべてを攻略すれば――それが出現した理由。誰かの思惑も……



――――2022年1月23日――――

 世界は震撼した……西暦を撤廃する記念日だ。起点になる……
国際連合の設立は1945年。合衆国NYに拠点が定められた。

 結論は加盟国すべての採択だ。改定される名称が新暦元年――
世界は同調する。都市直下型の局地的地震から誕生した迷宮――

 それが変革の礎。世界で認められて『迷宮の日』制定される。


 誕生する時刻は16時56分07秒……日没のタイミングだ。

 国内第二の県庁所在地は大阪市。西区に新しく生まれた領域の
【始まりの迷宮】。その地上に位置する『靭公園』は異世界だ。


 常に国内で二番目だった。地方民の抱える大阪魂も妙な圧だ。
「東京に負けてへん」妄想を抱く。おかしな住民の集合する街。

 大阪都構想の実現が長い目標だ。改革を歩む街の西が靱公園。

 なにわ筋を中央に挟んで東西に分割される。東が癒しで植栽の
整備される都心のオアシス。西すべてが現状はテニスコートだ。


 なにわ筋沿いにカフェやバーが急増。お洒落と人気の環境だ。
 オフィス街を抜けると北は淀屋橋。市役所庁舎が御堂筋沿い。

 中之島公園も徒歩圏だ。南に東西長い繊維問屋。船場ビルから
ミナミまで繋がる。通過して至る異界がディープサウスゾーン。


 国内迷宮は八つの都市だ。地元の誇る公園に限定されていた。
北から札幌大通公園。仙台青葉山公園。首都が東京上野公園だ。

 金沢兼六園。名古屋鶴舞公園。大阪靭公園は始まりの迷宮だ。
広島平和公園。博多大濠公園。全国の八か所すべてが地下迷宮。


 迷宮が誕生した揺れ。直後から行動を開始した。男女二人組は
かたや中高生に見える勝気な少女だ。男の右脚は不自然だった。

 事前に準備した『バールのような物』金属棒。片手に進んだ。
雑居ビルの傍にある公園で轟音が発生した。調査が目的だった。

 地震で生まれた宿命。それを選択した瞬間で行動の結末が――



 二人が出現したのは……なにわ筋にも面する雑居ビルだった。

 八階建のビル所有は個人企業『スタジオFOX』で管理物件。
資産管理と不動産業の会社になる。個人経営で節税面の対策だ。

 まもなく28歳の経営者が城佳二。代表取締役兼社長になる。



 自称ハードボイルドをこよなく愛する男。資格マニアだった。
高校在学中に罹患した難病の骨肉腫。右脚を太腿から失くした。

 現在義足と電動車いすを併用する生活。重度身体障がい者だ。
 その性格はおちゃらけた明朗で快活。容姿もさほど悪くない。


 陸上競技の短距離走で全国大会常連だった。当時アイドル系と
呼ばれる人気でも妙なプライド。こだわりからモテなかった男。

 こじらせ資格マニア。全方向のオタク性癖も邪魔したらしい。

 他者の交流で聡い。だがしかし自己に反映で失敗する。結果が
哀しすぎる現実。『友達以上恋人未満』その先まで進展しない。


「なんでオレさ。いろんなことをやってんのにモテないのかな」
 悩む姿もあるある。情けなさの漂う哀愁を本人は気づかない。

 だがしかし『幸運と金銭』不思議なくらい互いを惹きつける。

 自称する高いプライド。相反するようにして『悪運』も襲う。
ヒキ強さは本物だ。辻褄をあわせて収束させてしまえるスキル。

 だがしかし気づけない鈍感でスルー。幸せまで同時に逃げた。
 迷宮で邂逅できるのかもしれない『運命の女』ウサギ獣人だ。



 年始早々に同居人を押しつけられた。実姉の産んだ素行の悪い
姪っ子は中学生だ。悪運が妙に強くて外見特化した残念な美人。

 ほぼほぼ完璧だけどおバカさん。残念すぎるお知らせだった。

 最強ケンカ番長で自称ラッパー。薬物絶拒で容赦もできない。
反社会団体組織の事務所を爆薬で全壊させた、短絡志向の極み。

 格闘技大好き。目標が人類最強。超絶すぎるおバカな少女だ。


 もちろんあってはならない邂逅……それもまた運命に繋がる。
しおりを挟む

処理中です...