電車で苦くて甘いヒミツの関係

水瀬かずか

文字の大きさ
上 下
29 / 31
後日談

2

しおりを挟む
 ドクドクと鳴る心臓の音が耳の奥で響くほど大きくなり、緊張感が興奮を更に押し上げる。
 うつむいて震える彼女は、臀部を撫でられる痴漢行為に、それでも逃げることなく、震えながら受け止めている。恐怖で動けないのかもしれないと、興奮する自分をたしなめる理性の声もしたが、目の前で、とろけるような吐息を一つこぼした彼女の様子に、血液が逆流するような快感を覚える。

 香奈は、俺の指で感じている。

 柔らかな彼女の丸みを撫でる指先に、彼女がもっと感じればいいと願う。つっと下着のラインに沿ってなぞれば、小さくびくんと震える。
 逃げずに、ただ耐えている姿は、もっと困らせたいと嗜虐心が煽られる。もっと感じて、気持ちよくなって、困ればいい。もっと俺を欲しがればいい。

「ねぇ? きもちいい?」

 赤くなった彼女の耳が更に赤くなった気がした。震えている彼女が、ぷるぷると小さく首を横に振る。

 かわいい。

 彼女を愛でている感覚が強く罪悪感はあまりなかったが、常識的に考えてひどいことをしている自覚はあった。けれど彼女は背徳感はあっても、嫌悪感を持っていない。そしてそんな自分を恥じらっている様子が見て取れる。
 自分の触れる指先に感じる彼女のかわいらしさに興奮する。

 彼女の柔らかなおしりと、スカートごしの太ももを堪能し、指先を下へと滑らせてゆく。スカートの布地が途切れ、ストッキングが指先に触れた。それを辿り、再び指を上へと滑らせる。柔らかであたたかな感触を薄い生地越しに感じながら、スカートを少しずつめくってゆく行為に、込み上げてくる興奮がおさまらない。

 スカートの中に指を忍ばせていっているというのに、彼女は身をよじって逃げるでもなく、ただ立ちすくんでこらえている。
 真っ赤になった耳たぶ。ときどき漏れる吐息が熱く濡れて。
 それに後押しされるように、指をスカートの奥へと忍ばせる。臀部の柔らかな感触と、パンティのラインを指先が感じ取る。
 そのままラインを辿って、奥へと進ませた。

 電車の中で足を踏ん張っている彼女は、股を開いた状態で、指が足の間に進むのを止められない。
 指先は、ついに隠された場所へとたどり着く。
 彼女がぴくんとふるえた。震えながら、漏れる吐息は熱く濡れていて。
 顔がゆるむ。

 ねぇ、香奈? 気持ちいい?

 心の中で問いかけて、パンティ越しに、彼女の秘された割れ目に指を這わせる。
 少し、しっとりとした生地の感触に、彼女のそこが濡れているのだと分かる。

「……感じているね……?」

 息をつめてこらえている彼女の耳元に意地悪く囁いてみる。彼女が真っ赤な顔でうつむいた。
 そんな彼女の可愛い様子に満足する。
 少し指を強く割れ目に押しつけ、更にこすりあげてゆくと、布地と彼女の割れ目がぬるぬると擦れているのが分かる。
 彼女が身を小さくするように身体をこわばらせ、そして目を閉じてこらえている。
 彼女が耐えているのは痴漢行為ではなく、快感であることは明らかだった。

 その時、電車で彼女の降りる駅が近づいたとアナウンスされるのを聞き、仕方なく指を彼女から離した。
 彼女がほっと息を吐くのを見て、そのため息の意味を考える。けれど、電車が止まるまでの間、彼女がもじもじと動くのを見て、やり過ごせない快感に彼女が困っているのだと気付く。
 それだけ彼女は感じていたのだ。
 溜息をついたのは、痴漢から解放された安心感だけではないはずだ。

「明日は、もっと気持ちよくしてあげるから。……また、この電車でね」

 耳元で囁くと、彼女がびくっと震えて固まった。
 うつむいたまま反応はない。
 彼女は逃げるように電車を降りた。痴漢の犯人を、確かめることもなく。

 それを見送ってから、動き出した電車の中で深く息を吐く。
 激しい高揚感があった。同時に、こんな事が許されるはずがないという罪悪感もようやく込み上げてきた。

 明日、彼女はどうするだろう。

 電車にゆられながら、彼女を欲する気持ちとやったことの後ろめたさを抱え、先に降りた彼女を思った。



 この時はまだ、これから続く毎朝の行為を想像すらしていなかった。




しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

ドSな彼からの溺愛は蜜の味

鳴宮鶉子
恋愛
ドSな彼からの溺愛は蜜の味

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

ハイスペック上司からのドSな溺愛

鳴宮鶉子
恋愛
ハイスペック上司からのドSな溺愛

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

【R18】深層のご令嬢は、婚約破棄して愛しのお兄様に花弁を散らされる

奏音 美都
恋愛
バトワール財閥の令嬢であるクリスティーナは血の繋がらない兄、ウィンストンを密かに慕っていた。だが、貴族院議員であり、ノルウェールズ侯爵家の三男であるコンラッドとの婚姻話が持ち上がり、バトワール財閥、ひいては会社の経営に携わる兄のために、お見合いを受ける覚悟をする。 だが、今目の前では兄のウィンストンに迫られていた。 「ノルウェールズ侯爵の御曹司とのお見合いが決まったって聞いたんだが、本当なのか?」」  どう尋ねる兄の真意は……

元彼にハメ婚させられちゃいました

鳴宮鶉子
恋愛
元彼にハメ婚させられちゃいました

義兄に甘えまくっていたらいつの間にか執着されまくっていた話

よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。大好きな推しであるユリウスと自分が結ばれることはない。ならば義妹として目一杯甘えまくって楽しもうと考えたのだが、気づけばユリウスにめちゃくちゃ執着されていた話。 「義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話」のifストーリーですが繋がりはなにもありません。

処理中です...