電車で苦くて甘いヒミツの関係

水瀬かずか

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電車で苦くて甘いヒミツの関係

4.5

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 会社について、息を整えて、いつもより気を引き締めて扉を開ける。

「おはようございます」

 いつもと変わらないつもりだったのに、顔を上げた課長が挨拶の後、眼を細めて笑った。

「三井さん顔が赤いけど走ってきたの?」

 どこか楽しそうに課長がからかってくる。
 赤くなっているのは、きっと朝の中途半端に終わってしまっておさまらない興奮のせい。分かっているだけに、思わず過剰に反応してしまった。

「えっ赤いですか?!」

「少しだけね。ほっぺが赤くてかわいいな」

 自分の顔が更に赤くなるのが分かった。いつもはこんなからかい方をする人じゃないのに。

「課長、からかわないで下さい」

 熱くなった両頬を押さえて抗議すると、課長はからかってなんかないよ、と首をかしげる。
 笑っている課長と目が合う。笑っているのに、その目が熱を帯びているような気がして、ぞくんと背筋が震える。興奮が冷め切ってない身体が疼いた。

 違うのに。課長は彼じゃないのに……。

 私は慌てて課長から目を逸らす。

「もう、仕事始めます!」

 強い口調で誤魔化して、逃げるように課長に背を向けた。
 その後ろで、課長のクスクス笑っている声が聞こえた。


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