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32 抱き合うのって、きもちいいんだね

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 抱かれるのは初めてじゃないのに、クリスにとって全てが初めてだった。
 ライオネルが言った通り、抱かれるということは、使うんじゃなくて、愛されているのだと、感じた。
 ライオネルを中に受け入れた時、苦しくて、なのに全然痛くはなくって、それよりもすごくきもちよくて、クリスはうれしくてうれしくてたまらなかった。
 行為を始める前、ライオネルはクリスを抱きしめて言ったのだ。「これからするのは、愛し合う行為だ」と。「二人で、気持ちよくなろう」と。言ってくれた言葉がほんとうで、これは二人が幸せで気持ちよくなれる行為なんだと、クリスは初めて知った。

 ゆっくり慣らされたクリスの身体は、ライオネルの楔を根元まで咥え込んでいる。
 緩やかに腰を打ち付けられるたび、ぱちゅぱちゅと肌の当たる水音がする。
 クリスの身体を大切にしてたくさん使われた潤滑油が、揺さぶられるたびにぬちゅぬちゅとすりあわされる。
 自分の中からずるりと抜けてゆく感覚がぞわぞわするほど気持ちよくて、そして奥が淋しい。ぬぷぬぷと再び埋められてゆく圧迫感が、胸が苦しくなるほどきもちいい。
 奥までライオネルが埋められることも、中をずぷずぶと擦られるのも、信じられないほど気持ちよかった。

 ぐちゅぐちゅと中を擦り上げられ、ぱちゅぱちゅと腰を叩き付けられ、クリスは揺さぶられる。その度に「あっ、あっ」と、声が漏れる。

「クリス、苦しくないか?」
「ん、んっ、らいおね、さまっ、きもち、いい、ですっ」

 たずねるライオネルの声は少し苦しげで、けれど時折もらす低い吐息はひどく熱い。
 ずっとこうしていたい、クリスは必死にライオネルの動きに応えようとする。気持ちよくて、その事だけしか考えられなくなっていた。二人で気持ちよくなりたい。もっともっとこうしていたい。いっぱい突いて欲しい、いっぱい気持ちよくなって欲しい。

 もっと、もっとして。きもちいい。ライオネルさまもきもちいい? 僕のこと、ほしいって思ってくれている?

 ぱちゅぱちゅと突きたてられる度に声が漏れる。

「あっ、あっ、あっ」

 ライオネルを感じるのに精一杯で、かわいい声なんて出せない。なのに、突き上げられる度に漏れる声だけでライオネルは「かわいい」と言ってくれる。「クリス」と熱を孕んだ低い声で呼んでくれる。

「んんんっ、んぁっ、らいお、さま、きもち、いっ」

 いっしょうけんめい伝える。

 僕、きもちいいよ。ライオネルさま、だいすき。

「ああ、私も、きもちいいよ」

 途切れ途切れのライオネルの声が、熱に浮かされたように吐息と共に熱く響く。
 それが気持ちよくて、クリスの中がぐっと締まった。歯を食いしばったライオネルが、たまらず強く突きたてる。

「ひぁ……っ」

 後はクリスの嬌声と、激しい律動の水音、ライオネルの荒い息づかいばかりが響く。
 何度も何度も突き上げられ、クリスの中に知らない感覚がどんどんたまっていく。繋がった場所からお腹いっぱいに「きもちいい」がたまってゆく。
 それは苦しくて、気持ちよくて、クリスはぎゅうっと身体を震わせながら溜まってゆく何かに耐える。
 苦しそうなライオネルの吐息が漏れた。「くっ」と小さく呻いたライオネルが、ひときわ強く奥を抉るように突き上げる。

「……っっ」

 声にならなかった。身体がブルブル震えるほどたまっていた何かがはじけた。
 はじけた瞬間、クリスは自分の悲鳴が聞こえた気がしたが、自分が声を上げたのかどうかさえわからないほど、頭の中が真っ白になった。
 がくがくと身体が震える。宙に浮いたような感覚から、ふわりと意識が戻るような心地よさ。がくがくと痙攣する自分の身体を感じながら、クリスはライオネルに抱きしめられていることに気付く。
 奥を抉られたまま、ぎゅうぎゅうとクリスを抱きしめるライオネルの腕がきもちいい。
 ドクドクと自分の中で脈打つライオネルの存在を強く感じる。
 クリスは、震える手でライオネルの背に手を回した。
 繋がったまま抱きしめ合って、震える熱い身体を抱きしめ合った。快感に震える身体に、繋がったままのライオネルが、ぐっぐっと腰を押し付けてくる。その度にクリスは吐息を漏らし、気持ちよさに震える。
 達した後の緩やかな快感に身をゆだねながら、ふと目が合ったライオネルに、ふにゃりとクリスの顔が緩んだ。
 幸せが、身体いっぱいに広がる。

 ね、ライオネルさま。抱き合うのって、きもちいいんだね。




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