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31 満たされてゆくような幸せ

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 クリスを抱きしめて撫でる大きな手は止まらない。穏やかな気持ちよさの合間に、ビクビクと震えるような快感が襲い、クリスは思わず、漏れそうになる声を歯を食いしばって噛み殺した。
 とたんに、ちゅ、と鼻の頭に柔らかな感触が落とされる。
 ぎゅっとつむっていた目を開けると、柔らかく笑うライオネルの顔があった。

「クリス、気持ちよかったらそう言ってくれ。声も我慢しないでくれ」

 クリスは、詰めていた息を吐いて、こくこくとうなずく。

「んっ、きもち、いいっ、ですっ、ライオネルさま、きもちい、んんっ」

 撫でる手が気持ちいい。胸元を探り、腹を撫でてから腰骨をなぞる。触れる掌が、なぞる指先が、あたたかくて、心地よくて、けれどゾワリと込み上げる感覚がたまらなく身体を震わせる。ライオネルの与えてくれる感覚の、どれもが気持ちよかった。

 ちゅっちゅ、と優しく繰り返されていたキスが次第に深くなって、クリスの舌を舐め取るように、ライオネルの舌が絡みつく。すりあわされる舌先が、触れ合う唇がきもちいい。もっともっと触れ合わせたい。
 繰り返すキスの合間も、ずっと身体を撫でてくれる大きな手がきもちいい。
 準備ができていない後ろにライオネルの手が這わされて、それだけなのに、なぜか気持ちよくて身体が跳ねる。

「ここ、ゆっくり解していこうな」

 クリスは、気持ちよさに意識を取られ、ライオネルがなにを言っているのかよくわからないまま、うんうんと何度も頷いた。



 クリスの中に、ライオネルがいる。

「あっ、あっ、あっ、んゃぁ……っ、あっ、んっ」

 ぐちゅぐちゅとクリスの中をライオネルのモノが擦り上げてくる。
 その度にクリスは声を上げた。
 きもちいい。なんだかよくわからなかった。クリスの中が、ライオネルでいっぱいだった。
 ライオネルの物を見た時、こんな大きいのなんて絶対痛いだろうと思ったはずだった。なのに全然痛くなかった。ただ苦しいぐらい大きくて、クリスはずぶずぶと入ってくる楔にぞくぞく身体を震わせていた。
 ゆっくり、ゆっくりと身体が開かれて、苦しいのに気持ちがよかった。

 ライオネルがクリスを揺さぶる。ずぶずぶと奥まで埋まる期待感に吐息をこぼしては、ずるずると抜けてゆく感覚に、ぞわぞわとした快感が襲ってきて震える。
 中を穿たれるのがきもちいいだなんて、クリスは知らなかった。繋がることが痛くないだけでも驚きだったというのに、ゆっくりと中を埋められてゆく感覚は、苦しさと同時に、満たされてゆくような幸せがあった。

 ライオネル様が、僕の中にいる。

 そう思うだけでぞくりとした快感がクリスの中に込み上げたのだ。
 痛くなかったのは、たくさんたくさんライオネルが慣らしてくれたから。
 お尻の穴だなんて、前の恋人には突っ込まれるだけで、まともに触られたこともない場所だ。
 ライオネルが、指でたくさん解して触られるのがきもちいいのだと教えてくれたのだ。恥ずかしかったけど、ずっとかわいいと、触りたいと、言い続けてくれた。
 前の恋人に何度も使われて、入れられることに慣れてはいたけれど、きもちよかった事なんて一度もない。だから、きもちがいいことにびっくりした。
 クリスが自分で準備する時に触っても、何も感じたことなかったのに、ライオネルが指先で優しく撫でるだけで、震えるほど気持ちがよかった。



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