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2章
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しおりを挟む衝撃の事実に驚いていると、呆れたように偽姉に釘を刺される。
「あなたが大佐と一緒にいて気が楽なのはわかるわよ。ただ、前よりずっと大佐とあなたの噂がすごいことになっているの、わかっている?」
心配そうに窘めてくる偽姉に、ルカはあっけらかんと笑った。そこは全く気にしてない。
「問題ないよ。なんならその方が男だなんて疑われなくてすむし、アンナとマリカにも、町の人は手を出しにくくなるし。あ、でも、そのせいでアンナ達が悪く言われていたりする……?」
「大佐の評判が良いから、それはないわよ」
乳母の言葉にルカはほっとして頷いた。
「異国民達はむしろ歓迎ムードだけれど、でも東国民達の中には、あなたを悪く言う人がいるわ」
ルカは笑った。
「それこそ、気にする必要ないよ、ここでの「ルカ」の評判なんて。ルカは、ここだけにしかいない女の子だ。レアンドロの評判は落ちない」
それに、正臣の側にいられるのなら、そのくらいどうということはない。守ってくれていることを考えれば、不具合よりむしろ利の方が大きい。ましてや異国民街に住んでいると、東国民と関わることはあまりなく、関わる時は基本的に好意的な住民とばかりになる。ならばルカは、乳母親子が安全ならそれでいい。
「あなたが良いなら良いんだけれど……大佐もよっぽどあなたのことを気に入ってくれたのね」
「ルカはかわいいから」
「こんな良い子、なかなかいないもの。当然よね」
相変わらず乳母親子の贔屓目に苦笑いしながら「ありがとう」と答えておく。
それにしてもと、ルカは乳母親子の様子を密かに確認する。ルカが浮かれるままに行動した、仲の良すぎる様子を見てですら、彼女たちはルカと正臣の関係を疑う様子はない。
そのことに安心をしつつ、言葉にしづらい苦みが胸をよぎる。どれだけ親しくしても疑われない。これだけ年が離れているのに男同士が友人としてつるんでいるようにしか見えない。恋人関係に気付かれないということは、裏を返せば、それだけあり得ない関係であることの同義なのだ。
「大佐に何かお礼をした方が良いわよね」
どうした物かと悩んでいる偽姉と乳母に、ルカは、ふと思いつく。
「そういえば、お屋敷の方に商人が来るって言ってなかったっけ? どうせしばらくどっかに仮店舗を置くだろうし、今度そこに買いに行くって伝えておいてよ」
「それはいいわね。じゃあ奥様に伝えておくから、お礼はルカに任せるわ」
乳母親子が雇ってもらっている貿易商は、ルカの家より幾分劣るが、富豪といって間違いない。そういう所には、基本的に商人が良く出入りする。金持ち相手の商売のため、下手にその辺りの店で買うよりずっと良い物を取り扱っているものだ。彼らはなかなか手に入りづらいような高価な品をもって、得意先を回り商売をしている。
一般の者はその商品さえ見ることも出来ないが、口利きさえあれば、商人の訪問先でなくても商品は見せてもらえる。
偽姉に約束を取り付けてもらって、商人の構える仮店舗に出向いた。
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