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2章
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しおりを挟むルカを誘う正臣の低く艶やかな声に、ゾクゾクと興奮が背筋を駆け上った。
同時に、その言葉の意味を理解した途端、思考が止まった。
反射的に、すぐ脇にある正臣の顔を振り返る。
楽しげに弧を描く目が、ルカを貫いた。冗談めいているのに、笑っている目はルカの真意を探るように鋭く見据えていた。
これは、どう受け止めたら良い?
喜んで良いのか、それともなにかを試されているのか、ルカには判断が付かない。
けれど、欲しいものを差し出されて、胸がドクドクと音を立てて止まらない。
もしかして、と、期待が込み上げる。飛びつきたいのを我慢して、ルカは正臣の様子をうかがった。
「あの……ど、どうして……?」
「ん? かわいいお前の筆おろしを買って出ることがそんなにおかしいか?」
正臣はひどく上機嫌な様子で、ニコニコと楽しげだ。
「ふ、筆??」
「違うのか?」
何のこと?
ルカの動揺などかまいもせず、正臣の楽しげな目が弧を描いたまま、ルカの様子を見つめている。けれど目の奥は、やはりどこか観察しているかのような冷静さがあるように感じる。
それでも浮かべる笑みも、頭を撫でる手つきも、いつものルカが知っている優しい彼の物だ。
怒らせたのだろうか、それとも、このまま彼を求めて良いのだろうか。
わからない。正臣の真意が知りたい。嫌われたくない。
「で、でも、そんな理由で……」
「……抱きたいんだろう? いらないのか?」
欲しいに決まっている。でもあまりにもルカにとって都合がよすぎて怖かった。頷いて良いのか分からなかった。だから、ルカはおそるおそるたずねる。
「私のこと、好きですか……?」
「好きじゃなけりゃ、抱かせてやるわけがないだろう? 俺がお前にこの身体をくれてやると言った。その意味がわからないのなら、良いが?」
飄々とした言葉に、なおのことわけがわからなくなる。男が男に抱かれるなど……、ましてや大佐などという地位にあるような男が子供のような年齢の男に抱かれるなど、そんな軽々しい話ではないはずだ。
待って欲しい。訳がわからない。
望んだ物は目の前に差し出されている。けれど疑問と戸惑いで受け取るのを躊躇ってしまう。
正臣の様子に、恋情が含まれているように見えなかった。挙げ句、こんなからかうような素振りで、冗談めかして……。
それは、本当に、本気なのだろうか。
正臣の気持ちがわからないことが怖い。正臣からの好意も優しさも変わらずそこにあるのに、冗談めかした態度とは裏腹の瞳の鋭さが、ルカは気になった。
探られてるような居心地の悪さがあった。
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