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2章
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しおりを挟むあ、引かれた。
ざっと絶望が込み上げる。もう終わりだろうか。やっぱり言わない方がよかっただろうか。でも、それだと、ルカがつらい気持ちはこのままになってしまう。けれど、正臣に嫌われたくない。
正臣の判断に任せるしかない状態の中、ルカは何も言えず、正臣の反応を待つしかなかった。
凝視してくる目を、ルカは悲愴な顔で受け止めた。
「俺と、か……?」
思いもよらなかったという風にこぼれた言葉のあと、正臣が少し考え込む様子を見せる。
「……もしかして、それは、俺に惚れているっていうことか? まさかとは思うが、性欲込みの恋情か?」
的確に尋ねてくる正臣の冷静さが気になったが、眉を顰めての言葉は、確認しているというよりも、否定される前提の問いかけのようで、ルカは慌てて声を張り上げた。
「そうだよ!! 私は、あなたのことがそういう意味で好きだ……!!」
翻したいと思っていた言葉を、とっさに肯定してしまう。否定したら駄目な気がした。
彼は目を見開いて、信じられないと言わんばかりにルカを見ていた。その目を見つめ返せば羞恥心でどうしても顔が熱くなってしまう。けれど目をそらさないことで真剣であると伝わるように祈る。
絶句していた正臣は、ルカを探るように見つめてくる。
「……本気か?」
「冗談でこんな事にはならない!」
指摘したのは、あなただろうが!
涙目で自棄になって叫んだルカに呆気にとられた正臣が、ルカの顔とその手で隠された股間とを見比べる。
恥ずかしいから、そっちは確認しないで欲しい。
沈黙がいたたまれない。
正臣の反応を待って、どのくらいすぎただろう。ゆうに二十は数えられたのではないだろうか。その時間の体感たるや、大変な物だ。いつかの開放感に匹敵する。大丈夫だ、今日は手で押さえて隠してある。
返事を待つには長すぎる時間だ。どれだけ正臣を動揺させたんだと悔やみはじめた頃、驚いた正臣の表情が歪んでいく。
そして、それは突然だった。
「……は、はは、はははは! こいつは傑作だ!」
見開いた目が弧を描き、耐えきれなくなったように彼が笑い出したのだ。
まさか笑われると思わず、今度はルカの方がぎょっとする。
正臣は笑いながら、ずいと体を寄せてきた。
「俺が好きか! そうか! で、どっちだ? ん?」
「ど、どっち??」
突然の正臣の変化について行けない。
楽しげな問いかけの意味もわからず、オロオロとなにを聞かれているのか記憶を探りながら考える。
なんだ、この正臣さんの反応は。これは、どう受け止めたら良いのだろう。なんで笑っているんだ。なにがおかしいんだ。嫌悪はなさそうだが、しかしこれは……?
楽しげに弧を描いた目元がルカをとらえる。
「俺に抱かれたいか、抱きたいか」
ニヤリと笑って低い声が囁くように問いかけてきた。
ルカの背中がぞわりと震えた。
のぞき込んでくるいたずらめいたその表情がひどく色めいて見えて、ルカの心臓は跳ね上がる。
混乱も極まり、考える間もなく、反射的にルカは答えていた。
「抱きたいです!」
何も考えてなかった。正臣がどう感じるだとか、どうした方が良いだろうとか、そんな小細工はなにもできないまま、衝動的に答えていた。
しまったと思ったのは、答えた直後だ。
驚いた正臣の表情に、ぎゅっと胸が軋む。けれど否定しなければと思った瞬間には、もう正臣の表情は楽しげな笑みに取って代わられていた。
彼は再び高らかに笑ったのだ。
「俺を抱きたいのか! これはいい! ……女みたいな綺麗な形をしていても、男だな」
そうして楽しげに笑いながら、正臣がルカの背中を、ぼふぼふと叩いた。
そして、耳元で秘密ごとを伝えるかのように、低い声で囁いた。
「…………良いだろう。抱かせてやる」
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