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1章
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しおりを挟むルカを見つめてくる正臣に触れたいだとか、キスをしたいと思う気持ちは、会う度に膨れ上がる。
ちょっとぐらい良いじゃないか。でも、正臣さんは東国人だ。でも、西国風の挨拶だからと言い訳をして……西国でも唇にするのは、恋人や家族ぐらいのもんだけど、それは地域によって違うとかそれっぽく……。
実行したことこそないが、気持ちは、キスしたいだとか、触れたいだとか、そればっかりだ。
考えると、会う度に唇を見てしまうようになった。
触れたい。キスしたい。抱きしめたい。
考えることが欲求に染まることがある。
食事を飲み込む喉仏の動きだとか、時折シャツのボタンを外している肌だとか。ラフな姿をしているときの腕まくりした肌の露出だとか。正臣の肌色部分は、どこをとっても、ルカにとって欲をかき立てる。恋を自覚して、呆れるほどにルカは浮かれていた。
ルカの若い体はそのまま性欲へと直結してしまい、正臣といると、気がつけば色めいた目で見てしまう。
正臣に会っている間は、ただただ嬉しく気持ちが高揚し、別れた後には罪悪感や絶望が込み上げる。そして、救いを求めるように、正臣のことばかり考えるのだ。
それから逃げるように体の欲に突き動かされ、正臣との関係を夢想する。
恋に浮かれて、そんなことばかり考えてしまってしまう。それなりに性欲はあるつもりだが、ここまで即物的ではないつもりだった。友人が好きな子が出来てやりたいやりたいと卑猥な目で見ていた事に、お前はサルかと冷ややかに見ていたものだが、これでは人のことを言えない。
触れたい。寄り添いたい。誰よりも近くにいたい。
口付ければ彼は驚くだろうか。頬を寄せて抱きしめて重なり合いたいと思ってしまう。
素肌で触れ合うことができたなら……。
そんなことばかり考えていると、ふいに現実を思い出し、キリキリと胸の奥が軋む。
この体は男だ。正臣のことを考えて即物的に疼く場所を自覚して気持ちが沈む。きっと彼は嫌悪感を抱くだろう。ルカには、正臣と同じ物が付いている。
今まで男から女の扱いをされて気持ち悪いと思ったルカのように、正臣だってルカが男と知れば、恋うたことすら気持ち悪いと思うに違いない。ましてや体を重ねるなど。
ずんと腹の奥が沈むような息苦しさが襲った。
でも、どうせ触れ合うことはないのだ。
沈む気持ちを振り払う。抱くつもりはないと言った彼が、あの日の約束を違えることはないだろう。
ならば、思うだけなら、彼と重なることを夢想するぐらいなら、いいじゃないか。
素肌で抱き合って、キスして、笑い合って、そんな時間を夢見るぐらいなら。
想像しながら自身を慰めた。誰かを思いながらしたのは、初めてだった。
正臣と重なりたい。「ルカ殿」と呼ぶあの低い声を思い出して、ゾクゾクと体の奥から震えがこみ上げる。
正臣さん、正臣さん…っ
ただ、彼を想って、ルカはこみ上げる欲情を発散した。
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