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しおりを挟む団長を路地に引き込み、辺りを確認する。
人が滅多に足を踏み込むことのない、建物の隙間の路地だ。先ほどまでいた通りに目を向ければ、ぽつぽつと人が通り過ぎていくのが見える。けれど、こちらに目を向ける者はいない。
まず問題はないだろう。
俺の視線を追って、団長も路地の向こうの通りに目をやっている。
「そろそろ、欲求不満じゃないかと思いまして」
低く笑えば、団長の視線がようやくこちらに意識を戻してきたが、おもしろそうにこちらを見る余裕が気にいらない。あれだけ逃げていたくせに、いざとなると頭に血が上るのは俺だけなのか。
言いたかったあれこれが瞬く間に霧散した。余裕を崩したい衝動に任せて制服ごしに、団長の股間をわしづかみにするが、一瞬眼を見開いた団長は、すぐさまにやりと笑って目の前まで顔を寄せるとからかうように言った。
「ははっ、こんなところでずいぶんと積極的だな」
「先日のような趣向がお好きな団長なら、きっとこういった場所の方がお好みかと思いまして」
「まあ、嫌いではないが、仕事帰りにというのは褒められたことではないな」
笑いながらやんわりと手を外された事に苛立ちを覚える。軽くあしらわれることは想定していたことだが、やはり気にくわない。
あんたは人の寝込みを襲っておいて、俺からやられるのは気にくわないとでも言うつもりか。
俺はあんたの都合の良い玩具になるつもりはない。そもそもあんたが始めたことだ。そのまま流してなんかやらない。あんたはそれを思い知れば良い。
押し返してきた手を掴み、建物の壁面に団長の身体を後ろ向きにして押しつける。
「おいおい、乱暴だな」
壁に押さえつけられた状態で顔だけ振り返るが、苦笑いするだけで、抵抗する様子がない。
それはまともに相手をする気もないということか。
後ろ手に引っ張っている左腕。背中から壁に押さえつけられている上半身。この体勢は俺の方が有利だとしても、団長が抜けられないほどではないだろう。
それでも余裕があるように見せるために、にっこりと笑ってみせる。
「……先日の続きを、しましょう」
団長の背中に被さるように身を寄せ、こちらを振り返る左耳元で低く囁く。
耳に息を吹きかければ、ようやくびくりと身体をこわばらせた。
それでいい。反応してくれなければおもしろくない。
この人を押さえつけたい、謝らせたい、泣かせたい、俺に全面降伏する姿が見たい。
無理だとわかっていても、この人が俺に縋る姿を見たかった。プライドをへし折って、俺を捨てようとしたことを後悔させたい。
なのに、あんたは、身体を震わせたことなんか嘘みたいに平然とした顔で冷静なことを言う。
「うれしいお誘いだが……場所が少しばかりよくないな」
言われるまでもないことだ。家の外壁と石畳、路地の向こうは人通りのある道という、ろくでもない場所ということは十分承知している。こんな場所でコトに及ぼうと思うなんざ、正気の沙汰じゃないと自分でも思う。
計画を立てた時点で、相当におかしいことを考えているのはわかっていた。けれど、やめる気はなかった。いや、団長の反応次第ではやめることもあり得た。
けれどもう、わずかに残っていた理性も失せた。この余裕のある態度を崩したい。その衝動に流されるまま、最初の計画通りやるだけだ。
あえてここに連れ込んだ意図はここに入った時点でわかっているはずだろ。今更そんな拒絶をするのは、俺をたしなめることが出来ると思っていたからか。
笑わせるなよ。その余裕を崩してやる。俺があの夜のあんたを引きずり出してやろう。
「あんたのことですから、むしろ見られた方が興奮するんじゃないですか? 何せ……夜這いして一人気持ちよくなれるぐらいですから」
挑発をするように嘲笑えば、団長は軽く肩をすくめる。
「否定はしないが……制服はまずい」
そう言って上着を脱ごうとしたのを押しとどめる。
それじゃあ、おもしろくないだろ。
「団長服だからこそ、良いんじゃないですか」
背中から抱きすくめるように腕を前に回し、厚い布ごしに、胸元をまさぐった。手探りではわからないが、当たりを付けて指先を滑らせると、ある一点で団長の身体が跳ねた。
「……っ、おいっ」
焦ったような声色に、ほくそ笑む。布地の奥の小さな突起を思い浮かべながらグリグリとこすれば、息を詰める気配と共に、びくびくと小さな反応が返ってくる。
「あんた、本当に乳首が弱いんですね……こんなでかい図体して、女の子みたいだ」
背後から手を回せば、体格の良い団長の身体は俺の腕いっぱいになる。小さな身じろぎでさえはっきりわかるほどに密着している。わずかな抵抗も、敏感な先端をこするだけで反応して抵抗が弱まることも感じ取れた。
引き締まった身体がびくびくっとなすすべもなく震えていた。
「ここ、ほんと、好きですね?」
けれど厚い布越しでは感触がよくわからないのがおもしろくない。さっき団長が脱ぎかけて留め具を外した胸元を探り、制服をはだけ、中に手を潜り込ます。
団長の乳首が立っていた。こりっとした感触はもっと触って欲しいと主張している。
薄いシャツごしに主張する突起をつまみ上げれば「くっ」と息を殺して団長が震えた。
「あっ……やめ、ろ、ここじゃダメだっ」
「乳首こんなにたたせて何言ってんですか。ほら、ここはもっと触って欲しいっていっています」
くりくりとこねて、ぐりっと潰すように押し込めば身体を強ばらせてびくびくと震える。
「あっ、……は、ぁ、ダメ、だ……」
力のない抵抗をしながら、薄い布ごしに先端をこねれば、たちまち抵抗の動きが更に弱まる。
筋肉質な身体が憐れったらしく震える様が、欲情をそそる。
「あ、あっ、ラーシュ、ダメだ……、うぐっ、うあ、あ……」
気持ちいいくせに拒絶ばかり言う口に指を突っこむ。口の中を蹂躙し、うめく団長の舌を指先でこすった。
「あ……」
溢れる涎と共にこぼれたのは、快感の声。指をくわえた口からくちゅくちゅと音をたて、はぁはぁと熱い息を漏らす。舌先をくすぐれば、強ばった身体が小さく震え、応えるように舌が蠢いた。
その後はなし崩しだった。抵抗は鳴りを潜め、時折、ちゅうちゅうと指を吸い、指の動きに合わせて舌を絡めてくる様子に、ぞくぞくとした震えが走る。
背後から乳首と口内を蹂躙される団長の顔は見えない。
「俺の指は、おいしいですか?」
乳首をきゅっとつまみ上げ、耳元で息を吹きかけるように問いかければ、団長は俺の腕の中で身体を震わせ、うめきながら、くふっと息を漏らした。
指を引き抜けば、「んぁっ」と小さくと息を漏らし、舌が指を追いかけてきた。
唾液でびちょびちょになった指先で団長の唇をなぞる。荒い息がせわしなく続くその顔をこちらに向かせる。肩越しに振り返った団長は薄く開いた目を熱い吐息をこぼすと共に閉じた。女のようにいじられて快楽に流されたくせに、けだるげな表情は男くさい色気を惜しげもなく垂れ流していた。
もっと欲しがらせたい、もっと感じさせたい。この雄くさいこの人が乱れて欲しがる姿を見たい。
余韻に身を任せているその身体を抱きしめたままズボンのベルトに伸ばす。団長のそこは、触りもしないのに、凶悪なほどに大きく張り詰めていた。
こんなにでかいのに、使われることなく無駄撃ちするのかと思うと、暗い愉悦がこみ上げる。使われるのはこっちじゃなくて、後ろの穴だ。俺をくわえ込んでひくひくと締め付ける、秘された場所。
けれど、その前に。
布ごしに怒張に触れると、びくんと身体が強ばった。
「ラーシュ、ダメだ、せめて制服を……」
震える声に、にやりと笑う。思った以上にその気になっているのだと思うと、おかしくてたまらない。
どこまでも制服にこだわるというのなら、それに応えてやらないとな。
「じゃあ、制服を脱ぎましょうか?」
ただし、脱ぐのはあんたの脱ぎたい上着ではない。ズボンの留め具に手をかけると、そのまま下に落とす。
そこに、そそり立つむき出しの一物が現れる。ぴくびくと震えながらつるりとした先端をてらてらとぬらして、刺激を待つかのような姿で。
「ははっ、すっげぇ、触ってもないのに、バキバキじゃないですか。どんだけ興奮してるんですか」
壁に向かって勃起している一物の先端を撫でれば、ぬるりと滑る。
「先走り、こぼしすぎ」
くくっと笑いながら亀頭をぬるぬるとこすると、団長はうめきながらびくびくと震えて腰を揺らした。
「こっちも、期待してるんじゃないですか?」
涎で濡れた指先を後ろのすぼまりへとのばす。ぬるりと穴に指先を添えると、ひくひく震えながらつぷりと咥え、きゅうっと締め付けた。
「柔らかいくせにきついって、入れると最高に気持ちよさそうです」
耳元で囁けば、喜ぶようにきゅっと柔らかく締め付けてくる。
指をくちゅくちゅと動かせば、濡れてないその穴は、ひくひくと震えながら、それでも奥へ呼び込もうとするように熱く蠢いた。けれど、ぬめりの少ない指はその先には進まない。
「ちっ、やっぱり乾きかけじゃ入らねぇな……団長、もう一回涎たっぷり付けて、舐めてください」
指を無理矢理引き抜くと、「ぐっ」とうめいて背中が反る。
「ほら、俺の指、しゃぶって……」
苦しげな様子を無視して、尻の穴に突っこんでいた指を口元に持っていけば、団長は表情を軽くゆがめながらも、舌を出して、ピチャピチャと舐めだした。
このろくでもない暴行を団長が受け入れている。愉悦がこみ上げる。
「尻の穴いじられるの、そんなに好きですか?」
「……確かに、お前にされると、興奮するな。……てめぇのケツに突っこんだ指は、舐めたくないけどな」
溜息交じりに返してくる声も言葉も、いつもの団長だ。
けれどふてぶてしく笑う顔が、わずかに歪んでいた。
団長の舌が長くのびて指をべろりとなめる。くちゅっとした水音が路地に小さく響いていた。
「そろそろ指がふやけちまいそうですね」
たっぷりと濡れた指を、再び後口へとあてがう。入り口をくちゅくちゅとほぐせば、すぐに指先が飲み込まれた。
「うっ……うあ……っ」
壁についた腕の筋肉がびくびくと震える。横向きの団長の顔が悩ましげに歪む。半開きの唇から、熱い吐息が短く漏れた。中で指を揺らすと、先ほどより滑りがよく、内壁はおいしそうにしゃぶってくる。
そのままぐっと二本目を差し込めば、そこはたいした抵抗もなく先端を飲み込み、そして身体を震わせながら更に奥へと異物を飲み込もうと内壁をうねらせた。
それでも唾液だけでは滑りが悪く、二本指を根元まで埋め込んだ時点で、抜き差しは諦めた。
震えて耐える腕の中の男を見下ろす。
鍛え抜かれた屈強な男が下半身をあらわにして、尻を突き出した状態で強引な挿入に苦しそうに浅い息を何度も繰り返して耐える姿は、滑稽すぎて、いっそ憐れだ。
同時に、それが、ひどく俺を興奮させてている。
ねえ、なんであんた、こんなトコで、こんなコトされて、耐えてんですか。
埋め込んだ指をぐにぐにと動かす。
「気持ちいいですか?」
「……ふっ、うぅ……」
苦しそうなのをわかっていながら、あえて嘲るように笑う。けれど、ふと見えた団長の怒張は張り詰めたままだ。先端は、とろとろと透明な糸をこぼして、地面へと垂らしている。
埋め込んだ指を揺すれば、いきり立ったチンポがゆらゆらと揺れた。
「……苦しいのも好きだなんて、ほんとに変態ですね」
「は……っ、こんなところでやりたがるお前ほどじゃないだろ?」
空いた手でそそり立つ一物をはじけば「うぁっ」とのけぞって先端から涎をこぼした。
柔らかな内壁は、ぬめりこそ足りないが、それでもひくひくと震えながら指をしゃぶる。刺激を求めるようなうねりに応えて指を動かせば、しなった背筋がびくびくと震えた。
「こんなところなのに、気持ちよくなってる、あんたには負けますけどねっ」
むにむにと柔らかな内側を刺激して内側をほぐしてゆく。時々入り口と指の間に隙間が空いて、クポッと乾いた空気の入る音がした。
同時にくふっと苦しそうな吐息が漏れた。耐えながら団長が首を横に振る。
「ラーシュ、ここでするのはかまわない、かまわないから、制服を脱がせてくれ……」
息も絶え絶えに思いだしたように訴えてきたその言葉に、俺は笑う。
どうやら団長は、どうしても制服でのプレイをお望みのようだ、と。
「こんなところで、全裸になりたいんですか? とんだ変態だ」
「ちが、うっ、もしっ、住民に見られたら、騎士団への、信頼、が……っ、うぁっ」
ぐりっと、反応の良い場所をえぐるように押すと、団長の身体が跳ねた。
思わず声をあげて笑う。
「背徳感は、快感の、最高のスパイスですよねぇ……?」
こんな煽り方をして、よほどハードなプレイをお望みらしい。なら、応えてあげようか。
俺と壁に挟まれた身体が、びくびくと震えている。
ほら、もっと良いところこすってやるよ。さあ、泣きながら懇願してこいよ。なあ、これがあんたの望みなんだろ。あんたの望む棒の役割を、きっちり果たしてやる。どうせこれが最後だ、あんたをさいっこうに蔑めるように、最低の姿、見せろよ。
あんたを前にすると、頭ん中がぐちゃぐちゃだ。自分がなにをしたかったのか、あんたに何を望んでいたのかさえ、わからなくなってしまう。わかるのは、今の衝動的な自分の望みだけ。ああ、理屈もどうすれば良いかもわからない。俯瞰した思考など欠片もない。俺は今、目の前のあんたを、ただ、ぐちゃぐちゃにしたい、それだけの感情に支配されている。
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