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シルヴァンが差し出した手を取ると、転移魔法が発動された。
一瞬で、そこは青空の下だ。
久しぶりの地面の感触。柔らかな風と、温かい日差し。
俺は深呼吸をした。草木の匂い。どうやらここは丘の上のようだった。下の方に、街が見える。シルヴァンが教えてくれた。
「あれがエメラの街だよ。のんびり散歩しながら向かおうか」
「は、はい……」
シルヴァンと肩を並べて歩く。肩の高さには、だいぶ差がある。シルヴァン、大きいな……。手も足もすらりと長い。銀髪が陽に透けて輝いている。
太陽の下で見るシルヴァンは、まばゆいくらいにきれいで、かっこよくて……うっかり見惚れて無言になってしまう。
「シエル?」
「……」
「どうしたの?」
「っ、あ、ひ、久しぶりの、そ、そと、だから、」
「ああ、そうだよね。すごくいい天気でよかったけれど、まぶしくないかな」
「だだ、大丈夫、です、っあ、」
「おっと」
小石に躓いた俺を、シルヴァンがさっと支えてくれた。
「あ、ありがと、ございます……」
「なんだか危なっかしいね。手をつなごうか」
「えぁ」
「いや?」
「……ううん、や、やじゃない」
俺がそう言うと、シルヴァンは微笑んで手を差し出してくれた。そっと指を絡めて、丘を下っていく。
「ねぇ、シエル」
「はい……?」
「ごめんね」
「えっ」
突然謝罪されたことに、俺は驚いて隣にいるシルヴァンを見つめた。シルヴァンはまっすぐ前を向いたまま。横顔もすごく、きれいだ。
「な、にが、ですか」
「大変なことに巻き込んでしまって。……早く元の場所に帰りたい、よね?」
正直に言うと、帰りたくなんてぜんぜんない。今よりずっと惨めな生活を送ってきたからだ。
誰にも相手にされず、疎まれて、ゴミみたいな人生だった。
今となっては、道路に飛び出したあの子どもに感謝しているくらいだ。あの子のおかげであのクソな生活からおさらばできた上に、シルヴァンと出会うことができた。
……けど。
それを、口にすることはできなかった。
帰りたくないなんて、俺が駄々をこねたらシルヴァンは困るだろう。それに、理由も訊かれるはずだ。そうしたら、俺のしょうもない半生を語らなくてはいけなくなる。
……シルヴァンには、知られたくない。俺の惨めな一生を。
一瞬で、そこは青空の下だ。
久しぶりの地面の感触。柔らかな風と、温かい日差し。
俺は深呼吸をした。草木の匂い。どうやらここは丘の上のようだった。下の方に、街が見える。シルヴァンが教えてくれた。
「あれがエメラの街だよ。のんびり散歩しながら向かおうか」
「は、はい……」
シルヴァンと肩を並べて歩く。肩の高さには、だいぶ差がある。シルヴァン、大きいな……。手も足もすらりと長い。銀髪が陽に透けて輝いている。
太陽の下で見るシルヴァンは、まばゆいくらいにきれいで、かっこよくて……うっかり見惚れて無言になってしまう。
「シエル?」
「……」
「どうしたの?」
「っ、あ、ひ、久しぶりの、そ、そと、だから、」
「ああ、そうだよね。すごくいい天気でよかったけれど、まぶしくないかな」
「だだ、大丈夫、です、っあ、」
「おっと」
小石に躓いた俺を、シルヴァンがさっと支えてくれた。
「あ、ありがと、ございます……」
「なんだか危なっかしいね。手をつなごうか」
「えぁ」
「いや?」
「……ううん、や、やじゃない」
俺がそう言うと、シルヴァンは微笑んで手を差し出してくれた。そっと指を絡めて、丘を下っていく。
「ねぇ、シエル」
「はい……?」
「ごめんね」
「えっ」
突然謝罪されたことに、俺は驚いて隣にいるシルヴァンを見つめた。シルヴァンはまっすぐ前を向いたまま。横顔もすごく、きれいだ。
「な、にが、ですか」
「大変なことに巻き込んでしまって。……早く元の場所に帰りたい、よね?」
正直に言うと、帰りたくなんてぜんぜんない。今よりずっと惨めな生活を送ってきたからだ。
誰にも相手にされず、疎まれて、ゴミみたいな人生だった。
今となっては、道路に飛び出したあの子どもに感謝しているくらいだ。あの子のおかげであのクソな生活からおさらばできた上に、シルヴァンと出会うことができた。
……けど。
それを、口にすることはできなかった。
帰りたくないなんて、俺が駄々をこねたらシルヴァンは困るだろう。それに、理由も訊かれるはずだ。そうしたら、俺のしょうもない半生を語らなくてはいけなくなる。
……シルヴァンには、知られたくない。俺の惨めな一生を。
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