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「はあー?お前さあ、それが謝罪する態度なワケ?」
「っ……!」
「俺に対してならいいよ?ゼインがいくらツンツンしてたって、俺にとっては、かわいーネコちゃんなわけだし?けどさあ、他の人にはどーなの?って話じゃん。特にシエルなんかさ、あのときはこっちに来たばっかりで、右も左も分かんないような子に、お前意地悪言ったんだろ?ほんとに反省してんの?なあ?」
「ひ、し、して、ます……!か、顔、近……怖……ッ」
たしかにエリオットとゼインの顔はめちゃめちゃ近づいてるし、エリオットの顔は怖い。
怖いけど……怖いけどさ、結局イチャつきの延長?っていうか。もはや俺関係ないじゃん、みたいな。
「あ、あのぉ……」
「あー、ごめん、シエル」
にこっ、と笑顔を向けてくるエリオット。
「お、お取り込み中、すみ、すみません、あ、あの、えと、シル、ヴァンは……?」
「失礼しました。こちらを」
ハッとした表情で咳払いをし、ゼインが手にした箱を俺に渡してくる。
「こ、れは……?」
「シルヴァン様からお預かりいたしました。あなたにお渡しするようにと。本日、お出かけになるのですよね?その際のお召し物です。急な打ち合わせが入ってしまって、少し遅くなるけれど、必ず行くから着替えと朝食を済ませて待っていてほしい、とのことです」
「あ……、そ、そう、ですか、ありがとうございます……」
「兄上とデートか。よかったなあ、シエル」
「え、で、でで、デートだなんて、そん、な」
ゆうべチラッと頭によぎったことをエリオット言われて、変に意識してしまう。
……やっぱりこれってデート、なのかな……。
シルヴァンは、デートのつもりで俺を誘ってくれたのかな……。
「エリオット様、憶測でものを言うのはお控えください」
「なんでだよ、デートじゃん」
「シルヴァン様は、そのようなおつもりでシエル様と接しているのではないと、祝いの席でそうおっしゃったのでしょう。奥様が嘆いておられましたよ」
……あ。
そうだ。
そう、だよな。
シルヴァンには、そんな気はないんだ。
だから、今日の誘いだってデートなんかじゃなくて、ただ、気分転換に、俺を連れ出してくれるだけ。
勘違いしたら、ダメなんだ。
「ばっ……!お前さあ、なんで今それ言うの?そーゆうとこだよ」
「そういう……?どのようなところでしょうか。俺はただ、そうやって期待させるようなことを言って、彼を傷つけることになるのではと」
「分かった。分かったから、もう黙れ」
「むぐ」
エリオットがゼインの口を手でふさいだ。
「シエル。こいつの言うことは気にしなくていい。ものごとを額面どおりにしか受け取れない、融通のきかないやつなんだよ。これは弟の勘だけど、兄上はきみに気があるよ。今日の外出は、絶対デートだな。間違いないね」
「んっん!んん!」
ゼインが首を振り、非難するようなまなざしをエリオットに向ける。
なんていうか、そう悪いやつでもないのかもしれない。
ゼインの言うとおりだ。あのお祝いの夜、俺との結婚を無邪気に勧めるお母さんに、シルヴァンははっきりと拒否の態度を示したんだ。
ゼインはゼインなりに、俺のことを心配して……とまではいかなくても、気にかけてくれてるのかもしれない。
「あ!あの!だ、だいじょ、う、ぶ、です。た、ただの、が、外出……ですから、で、デートとか、じゃ、なく、て、えと」
「ほら~お前が余計なこと言うから。あとでお仕置きな」
「んぅっ!?」
「シエル、まじで気にしなくていい。てかもっと自信持て。絶対デート。ガチで」
「はあ……」
「ガチのまじだから。分かった?」
「わ、わか、わかり、ました」
勢いに気圧されて、思わずうなずく。エリオットは満足そうに笑った。
「っ……!」
「俺に対してならいいよ?ゼインがいくらツンツンしてたって、俺にとっては、かわいーネコちゃんなわけだし?けどさあ、他の人にはどーなの?って話じゃん。特にシエルなんかさ、あのときはこっちに来たばっかりで、右も左も分かんないような子に、お前意地悪言ったんだろ?ほんとに反省してんの?なあ?」
「ひ、し、して、ます……!か、顔、近……怖……ッ」
たしかにエリオットとゼインの顔はめちゃめちゃ近づいてるし、エリオットの顔は怖い。
怖いけど……怖いけどさ、結局イチャつきの延長?っていうか。もはや俺関係ないじゃん、みたいな。
「あ、あのぉ……」
「あー、ごめん、シエル」
にこっ、と笑顔を向けてくるエリオット。
「お、お取り込み中、すみ、すみません、あ、あの、えと、シル、ヴァンは……?」
「失礼しました。こちらを」
ハッとした表情で咳払いをし、ゼインが手にした箱を俺に渡してくる。
「こ、れは……?」
「シルヴァン様からお預かりいたしました。あなたにお渡しするようにと。本日、お出かけになるのですよね?その際のお召し物です。急な打ち合わせが入ってしまって、少し遅くなるけれど、必ず行くから着替えと朝食を済ませて待っていてほしい、とのことです」
「あ……、そ、そう、ですか、ありがとうございます……」
「兄上とデートか。よかったなあ、シエル」
「え、で、でで、デートだなんて、そん、な」
ゆうべチラッと頭によぎったことをエリオット言われて、変に意識してしまう。
……やっぱりこれってデート、なのかな……。
シルヴァンは、デートのつもりで俺を誘ってくれたのかな……。
「エリオット様、憶測でものを言うのはお控えください」
「なんでだよ、デートじゃん」
「シルヴァン様は、そのようなおつもりでシエル様と接しているのではないと、祝いの席でそうおっしゃったのでしょう。奥様が嘆いておられましたよ」
……あ。
そうだ。
そう、だよな。
シルヴァンには、そんな気はないんだ。
だから、今日の誘いだってデートなんかじゃなくて、ただ、気分転換に、俺を連れ出してくれるだけ。
勘違いしたら、ダメなんだ。
「ばっ……!お前さあ、なんで今それ言うの?そーゆうとこだよ」
「そういう……?どのようなところでしょうか。俺はただ、そうやって期待させるようなことを言って、彼を傷つけることになるのではと」
「分かった。分かったから、もう黙れ」
「むぐ」
エリオットがゼインの口を手でふさいだ。
「シエル。こいつの言うことは気にしなくていい。ものごとを額面どおりにしか受け取れない、融通のきかないやつなんだよ。これは弟の勘だけど、兄上はきみに気があるよ。今日の外出は、絶対デートだな。間違いないね」
「んっん!んん!」
ゼインが首を振り、非難するようなまなざしをエリオットに向ける。
なんていうか、そう悪いやつでもないのかもしれない。
ゼインの言うとおりだ。あのお祝いの夜、俺との結婚を無邪気に勧めるお母さんに、シルヴァンははっきりと拒否の態度を示したんだ。
ゼインはゼインなりに、俺のことを心配して……とまではいかなくても、気にかけてくれてるのかもしれない。
「あ!あの!だ、だいじょ、う、ぶ、です。た、ただの、が、外出……ですから、で、デートとか、じゃ、なく、て、えと」
「ほら~お前が余計なこと言うから。あとでお仕置きな」
「んぅっ!?」
「シエル、まじで気にしなくていい。てかもっと自信持て。絶対デート。ガチで」
「はあ……」
「ガチのまじだから。分かった?」
「わ、わか、わかり、ました」
勢いに気圧されて、思わずうなずく。エリオットは満足そうに笑った。
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