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翌朝。
顔を洗い、歯を磨いていると、ノックの音が聞こえた。
シルヴァンだ、と思いドアを開ける。
ところが、そこにいたのは弟の方だった。
エリオット。と、……ゼインも一緒だ。
俺は反射的に扉を閉めそうになった。
エリオットはともかく(でもシルヴァンもいないし緊張するけど)、ゼインは苦手だ。ってゆうか、俺ゼインに嫌われてるし。
俺を嫌いなやつはいっぱいいるけど、俺だってべつにお前のことなんか好きじゃないし。嫌われたってダメージないし!とか頑張って思ってはみるものの、やっぱりしんどい。つらい。
てか、なんで来た?また嫌味を言いに来たのだろうか。
「シエル、おはよ~」
「お、おは、おはよ、ございます」
エリオットがひらひらと手を振った。
笑顔はやっぱりお母さんそっくりで、シルヴァンにもよく似ている。そのとなりには、あいかわらず無表情なゼイン。大きな箱を抱えるようにして持っている。
「おはようございます」
「あ、おはよ、ございます……」
棒読みながら、ゼインもあいさつをしてくれたので頭を下げる。
エリオットが「おはようだけじゃなくてさ、言うことあるでしょ」とゼインを肘でつついた。
眼鏡をかけた端正な顔が微かに、ひく、と動く。
ほんの数ミリ眉間にしわが寄る。
ま、また何か嫌味を言われるんだろうかと俺は身がまえる。
エリオットが苦笑した。ゼインの背中を押す。
「お前のせいでシエルが怯えてるじゃん。この間、ひどいことを言ったんだろー?ちゃんと謝れよ、ほら」
「シエル、様」
「は、はい」
「先日は……、大変失礼なことを申し上げて、大変申し訳ありませんでした。深くお詫びいたします」
「ちゃんと頭下げて。ごめんなぁ、シエル。ゼインが言いがかりつけたんだって?ほら、最初に屋敷に来た日。あれ八つ当たりだから。てか、俺のせい。ほんとごめん、まじで」
「はあ……」
話が見えない。
いや、ここへ来た日のことを言っているんだと言うことは分かる。
けど、八つ当たり?とかエリオットのせい?とか。
困惑して固まる俺に、一歩前近づいてきたゼインが視線を逸らしながら言った。
「……エリオット様のおっしゃるとおりです、本当に申し訳ございません」
「ゼインはあのときご機嫌ななめだったんだよ。妙な噂を信じちゃってさ」
「うわ、さ……?」
「そ。俺が国王陛下の御令姪サマと婚約間近~みたいなウワサ」
「ゴ、レイメイ、サマ?」
「……陛下の姪御様のことですよ」
心なしか多少柔らかな声でゼインが教えてくれる。
「エリオット様は、陛下の御令姪様に、乗馬を教えているんです。年は10も下の方ですが、利発で聡明な方です。大変な美姫でもいらっしゃいます」
「そう、すごくいい子だよ。けど、ゼインの方がずっと美人だし、頭もいい」
「……不敬ですよ」
「こんくらい言わなきゃ、お前すぐやきもち焼くじゃん」
「そんな、ことは」
「なくないだろ?噂なんか信じて、嫉妬して、焦って、屋敷に来たばかりのシエルに八つ当たりした。違う?」
「……ち、がわない、です」
「なあ?」
「っ、ですから、俺は謝っているじゃないですか」
蒼白く見えるくらい真っ白なゼインの頬が真っ赤になる。
俺は気がついた。
……あ。これ痴話喧嘩だ。俺、痴話喧嘩に巻きこまれたんだ……。
あー、勘弁してほしい。よそでやってくれよ……。
顔を洗い、歯を磨いていると、ノックの音が聞こえた。
シルヴァンだ、と思いドアを開ける。
ところが、そこにいたのは弟の方だった。
エリオット。と、……ゼインも一緒だ。
俺は反射的に扉を閉めそうになった。
エリオットはともかく(でもシルヴァンもいないし緊張するけど)、ゼインは苦手だ。ってゆうか、俺ゼインに嫌われてるし。
俺を嫌いなやつはいっぱいいるけど、俺だってべつにお前のことなんか好きじゃないし。嫌われたってダメージないし!とか頑張って思ってはみるものの、やっぱりしんどい。つらい。
てか、なんで来た?また嫌味を言いに来たのだろうか。
「シエル、おはよ~」
「お、おは、おはよ、ございます」
エリオットがひらひらと手を振った。
笑顔はやっぱりお母さんそっくりで、シルヴァンにもよく似ている。そのとなりには、あいかわらず無表情なゼイン。大きな箱を抱えるようにして持っている。
「おはようございます」
「あ、おはよ、ございます……」
棒読みながら、ゼインもあいさつをしてくれたので頭を下げる。
エリオットが「おはようだけじゃなくてさ、言うことあるでしょ」とゼインを肘でつついた。
眼鏡をかけた端正な顔が微かに、ひく、と動く。
ほんの数ミリ眉間にしわが寄る。
ま、また何か嫌味を言われるんだろうかと俺は身がまえる。
エリオットが苦笑した。ゼインの背中を押す。
「お前のせいでシエルが怯えてるじゃん。この間、ひどいことを言ったんだろー?ちゃんと謝れよ、ほら」
「シエル、様」
「は、はい」
「先日は……、大変失礼なことを申し上げて、大変申し訳ありませんでした。深くお詫びいたします」
「ちゃんと頭下げて。ごめんなぁ、シエル。ゼインが言いがかりつけたんだって?ほら、最初に屋敷に来た日。あれ八つ当たりだから。てか、俺のせい。ほんとごめん、まじで」
「はあ……」
話が見えない。
いや、ここへ来た日のことを言っているんだと言うことは分かる。
けど、八つ当たり?とかエリオットのせい?とか。
困惑して固まる俺に、一歩前近づいてきたゼインが視線を逸らしながら言った。
「……エリオット様のおっしゃるとおりです、本当に申し訳ございません」
「ゼインはあのときご機嫌ななめだったんだよ。妙な噂を信じちゃってさ」
「うわ、さ……?」
「そ。俺が国王陛下の御令姪サマと婚約間近~みたいなウワサ」
「ゴ、レイメイ、サマ?」
「……陛下の姪御様のことですよ」
心なしか多少柔らかな声でゼインが教えてくれる。
「エリオット様は、陛下の御令姪様に、乗馬を教えているんです。年は10も下の方ですが、利発で聡明な方です。大変な美姫でもいらっしゃいます」
「そう、すごくいい子だよ。けど、ゼインの方がずっと美人だし、頭もいい」
「……不敬ですよ」
「こんくらい言わなきゃ、お前すぐやきもち焼くじゃん」
「そんな、ことは」
「なくないだろ?噂なんか信じて、嫉妬して、焦って、屋敷に来たばかりのシエルに八つ当たりした。違う?」
「……ち、がわない、です」
「なあ?」
「っ、ですから、俺は謝っているじゃないですか」
蒼白く見えるくらい真っ白なゼインの頬が真っ赤になる。
俺は気がついた。
……あ。これ痴話喧嘩だ。俺、痴話喧嘩に巻きこまれたんだ……。
あー、勘弁してほしい。よそでやってくれよ……。
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