地味顔陰キャな俺。異世界で公爵サマに拾われ、でろでろに甘やかされる

冷凍湖

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そこから先は和やかな食事会になって、俺はかなりほっとしていた。
シルヴァンの弟・エリオットは、各地に散らばる呪いの時限爆弾の調査隊長をしているらしい。
危険な仕事なのに、前線を買って出ているという。
チャラチャラした見た目からは想像もつかなかった。

「だってさあ、何が起こるか分からないじゃん。ちゃんと見はって、調べておかないと、ある日突然ドカーン!とくる可能性もあるでしょ。そんなことになったら、ちょー大変だからね」

口ぶりは軽かったけど、エリオットの目は真剣だった。意外と熱い男、なのかもしれない。





一時はピリピリした空気になったものの、最後はみんな笑顔でおやすみなさいを言い合った。
別れ際、エリオットは俺の手を取って、「シエル、俺たちの救世主様。どうかこの世界を救ってくれ。よろしく頼みます」と恭しく頭を下げた。そして、甲に唇が近づいてきた。
……けれど、そこに口づけが落とされることはなかった。
シルヴァンが止めたからだ。

「エリオット、それは私の役目だよ」
「御挨拶のキスをさせていただきたいんですけど?」
「……だぁめ」
「し、シルヴァン……?」

シルヴァンの指が、俺の指に触れた。絡め取られ、ぎゅっと握られる。

「弟はずいぶん酔っているみたいだからね。手へのキスだけでは、済まないかもしれない。そんなこになったら、ゼインが悲しむだろう」
「いや、そんな酔ってねーし」
「酔っているよ」
「……はあ。分かりましたよ。酔ってマス。酔っ払いは退散しますよ。失礼します、兄上。おやすみ、シエル。また今度ね」
「あ、は、はい、おやすみ、なさい……」

エリオットは、下のフロアにあるゼインの部屋に帰るようだ。エレベーターの中に消えていく。

「シルヴァン……手……」
「ああ……ごめんよ」
「い、いえ」
「……このままでも、構わない?」
「……はい」
「よかったら、私の部屋に来ないかい?今日は疲れただろう。リラックスできるハーブティーでも飲んで、少しくつろいでいくといい」

シルヴァンの、部屋。
部屋に入れてくれるなんて、距離が近づいたみたいで嬉しい。俺はこくこくうなずいた。

「い、行きたいっ、です!」

めちゃくちゃ勢いよく返事をしてしまった……。
シルヴァンはくすくす笑って、俺をエスコートしてくれた。
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