地味顔陰キャな俺。異世界で公爵サマに拾われ、でろでろに甘やかされる

冷凍湖

文字の大きさ
上 下
26 / 44

26

しおりを挟む
乾杯をして、食事が始まっても、俺は落ち着かなかった。となりに座るシルヴァンのことが気になってしかたない。
甲斐甲斐しく料理を取り分けてくれるシルヴァン。
飲み物をついでくれるシルヴァン。
口もとをナプキンで拭ってくれたりもした。
そのどれもに、胸がどきどきしたりぽわぽわしたりする。

「それにしても、シエルくん。こんな簡素な料理でよかったのかね。私としては、フルコースできみをもてなしたかったんだが」
「あ、え、えと、あの」
「あなたったら。シエルは恥ずかしがりやさんなのよ。一皿ごとにサーヴされたら、かえって落ち着かないでしょう。ねー、そうよね」
「あ、はあ、はい、す、すみませ……、あ、あの、このお料理、お、おいしい、です、すごくっ」

お世話ではなく、本当においしかった。
それに、こうやって家族の中に混ぜてもらえるのがすごく嬉しい。
お父さんは気さくだし、お母さんはすごく優しい。
この人たちに育てられていたら、俺も落ちぶれずに済んだのだのかな……でも、そしたら、俺とシルヴァンとは兄弟になっちゃうな。
こんなお兄さんがいたら頼もしくて素敵だなと思うけど、けど、兄弟だったらキスとか……できないし、やっぱり、うん、今のままがいい。

「ははあ、シエルくんは本当に謙虚だねえ。自分がどれだけこの世界に貢献しているか、理解しているのかな。街に出てみなさい、きみの存在は神様みたいなものだ。きっと拝まれるよ」
「父上、やめてください。彼が困っているでしょう。シエル、飲み物のおかわりは?何か料理を取ろうか」
「あ……じゃ、じゃあ、オレンジジュースを……」
「うん」

あいかわらず優美な手つきで、グラスにジュースをそそいでくれる。

「ありがとう、ございます……」

受け取って礼を言うと、シルヴァンのお母さんが「シエルってかわいいわあ。うちの子たちとは大違い。かわいげってものがないのよね」と真顔で言い出した。

「ね、シエル、あなたうちの子になる気はなぁい?」
「は、……」
「母上、冗談はよしてくださいよ」
「えー、けっこう本気なんだけどなあ。いいじゃない。あ、養子じゃなくても、シルヴァンのお嫁さんでもいいかも」
「へぁ、な、何、え?えぇ……」
「母上」

シルヴァンが手にしていたナイフとフォークをテーブルに置いた。
静かに、しかしきっぱりと言う。

「おやめください」
しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜のたまにシリアス ・話の流れが遅い

幽閉王子は最強皇子に包まれる

皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。 表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい

翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。 それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん? 「え、俺何か、犬になってない?」 豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。 ※どんどん年齢は上がっていきます。 ※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。

弟が生まれて両親に売られたけど、売られた先で溺愛されました

にがり
BL
貴族の家に生まれたが、弟が生まれたことによって両親に売られた少年が、自分を溺愛している人と出会う話です

美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました

SEKISUI
BL
 ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた  見た目は勝ち組  中身は社畜  斜めな思考の持ち主  なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う  そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される    

ブラッドフォード卿のお気に召すままに~~腹黒宰相は異世界転移のモブを溺愛する~~

ゆうきぼし/優輝星
BL
異世界転移BL。浄化のため召喚された異世界人は二人だった。腹黒宰相と呼ばれるブラッドフォード卿は、モブ扱いのイブキを手元に置く。それは自分の手駒の一つとして利用するためだった。だが、イブキの可愛さと優しさに触れ溺愛していく。しかもイブキには何やら不思議なチカラがあるようで……。 *マークはR回。(後半になります) ・ご都合主義のなーろっぱです。 ・攻めは頭の回転が速い魔力強の超人ですがちょっぴりダメンズなところあり。そんな彼の癒しとなるのが受けです。癖のありそうな脇役あり。どうぞよろしくお願いします。 腹黒宰相×獣医の卵(モフモフ癒やし手) ・イラストは青城硝子先生です。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

処理中です...