地味顔陰キャな俺。異世界で公爵サマに拾われ、でろでろに甘やかされる

冷凍湖

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それからの日々は、まるで夢の中にいるみたいに、満たされていて幸せだった。
俺はシルヴァンの屋敷で暮らしている。高級ホテルみたいな雰囲気の、あの部屋で。
朝はシルヴァンが起こしに来てくれる。できたての朝食をテーブルに並べ、コーヒーを淹れてくれる。
朝食を済ませると、ライティングデスクの上に本を開き、翻訳を始める。シルヴァンはその内容を、目の前に浮かぶバーチャルなモニターに打ちこんでいく。VRみたいな画面だけど、とくに専用のゴーグルは必要なくて、裸眼で見える。
すごい技術だ。この建物も250階建ての超高層ビルだし。発展している。なのに魔法。呪い。不思議な場所だと思う。
翻訳をするのは、1日に20ページが限界だった。
本自体に強い魔法がかかっていて、連続して長時間見たり触れたりしていると、よくない影響があるという。だから休み休みでしか、訳することができない。
休憩のたびに、シルヴァンは俺を気づかってくれた。

「シエル、気分は悪くない?」
「お茶でも淹れようか」
「ほら、お菓子もあるよ」

それから、たくさん褒めてくれた。

「きみのおかげで、この世界は滅びずにすみそうだよ」
「ありがとう、シエル」
「私たちのために頑張ってくれて、……きみは本当にいい子だね」

……そう言って、キスをする。





「ん、ん♡んんッ……♡」

今もシルヴァンは、俺の頬やまぶたに唇を落としている。
一冊目の魔法全書を翻訳し終えたばかりで、俺もシルヴァンも気分が高揚していた。というか、シルヴァンがとても嬉しそうだから、俺もつられて嬉しくなっていた。

「シエル、本当にありがとう……、素晴らしいよ、この一冊はとても大切な一冊だ。きみは希望の光だよ、シエル」
「ん、やぁ♡く、くすぐ、た、ぁ♡」

耳に唇を寄せて話すから、息がかかってぞくぞくする。

「ふふ、ごめん」
「ん……♡」

ちゅっ♡と頬にキスをして、唇が離れていく。
あ……やだ、もっとしてほしい。思わず目で追ってしまう。
視線に気づいたシルヴァンが、ひたいにもう一度キスをくれた。

「ぁ、ん♡」

唇が触れたところから、火が灯るようだった。
体の内側が、ぽうっとする。頭の中がとろけていく。

「ん、ん……♡」
「シエル……?」

華やかなジャケットの胸もとにしがみついて、シルヴァンを見上げる。不思議そうな顔をされて、俺はいったい何をやってるんだ、と恥ずかしくなる。
けど、なんかもう、限界だった。
くちびる。
唇にも、キスがほしい。
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