地味顔陰キャな俺。異世界で公爵サマに拾われ、でろでろに甘やかされる

冷凍湖

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俺がベコベコにへこんだのを見て、ゼインは溜飲を下げたらしい。
お茶が残ったままのティーセットをさっさと片付けて、出て行った。
「シルヴァン様にふざけた真似をしたら、俺が許しませんからね」と鋭い眼光を置いて。

そこからしばらく、俺はぼうっとしていた。

ひどく理不尽な扱いを受けている気がした。
来たくてこの場所に来たんじゃないのに。文字だって読もうとして読んだんじゃない。ふつーに、読めてしまった。
それを、信用してないとか、シルヴァンにふさわしくないとか、好き勝手言って。
シルヴァンだって、俺が役に立ちそうだから優しくしてるだけで、もし俺があの本を読めなかったら、俺のことなんて虫けらみたいに扱ったはずだ。
結局、どこにいたって俺はこうなんだ。
誰にも相手にされない。気に留めてもらえない。
べつに悲しくない。なのに、涙が出てきた。
ベッドの上で丸くなって泣いてしまう。めそめそ泣いていると、扉が開く気配がした。

「シエル?どうしたの?」

慌てたような足音を響かせ、シルヴァンが近寄ってくる。けど、俺は答えない。薄手の毛布を頭からかぶって、シルヴァンを拒絶した。

「シエル、シエル。ねぇ、何があったの?」

どこか痛む?ゼインに何か言われたのかい?
そんなふうに優しく問われると、もっと涙があふれてしまう。
救世主じゃなかったら、絶対にかけてもらえない言葉だと分かっている。分かってしまう。それが苦しい。

「こっちを向いて。顔を見せて、シエル」
「ゃ……、い、いや、です……やだ、ぁ」
「シエル」

上掛けの上から、背中を撫でられる。

「んッ……♡」

ピクン、と体が反応してしまう。

「息が苦しくなっちゃうよ。顔を出しなさい」

穏やかに諭されて、俺はますます、だだっ子みたいになってしまう。

「いやだあ……」
「困ったね。どうしちゃったんだろう。……ちょっと失礼するよ」
「あっ、や、いや、だ!」

毛布を剥がされそうになって、引っ張って押さえようとしたけど、シルヴァンは魔法をつかったらしい。煙のように布地は消え去ってしまった。

「あ、ま、まほ、つかうなん、て、ず、ずるいぃ……」
「うん、ずるかったね。ごめん。でも、きみが心配だったんだよ。そんなに泣いて、どうしたの?わけを話してほしいんだよ」
「あ、ゃ……」

抱き起こされる。森で出会ったときみたいに。
ほんの数時間前のできごとなのに、すごく遠くに感じる。間近で見つめられて、さっきよりももっと胸がどきどきする。

「お、俺、や、やっぱ、り、無理です……、お、おれ、俺なんか、救世主のはず、な、ない、から、何かの、間違い、だから、も、もう、かえ、帰ります」
「帰るって、どこにだい?」

シルヴァンの表情が空白になった。
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