地味顔陰キャな俺。異世界で公爵サマに拾われ、でろでろに甘やかされる

冷凍湖

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「どうぞ」

テーブルは移動式だった。
ベッドに座ったままでも飲めるように、位置を調整してくれる。

「あ、ど、どど、う、も」

カップは薄い陶器でできていた。くすみのない真っ白な器の中に、琥珀色の液体が湯気を立てている。

「い、いた、だき、ます」
「熱いですよ」
「あ、っちゅ……!」

注意されたけど遅かった。
めっちゃ熱い。変に緊張しているせいで、熱いお茶を勢いよくすすってしまった。

「……本当に、あなたなんですか」
「はひ……?」

真っ直ぐに立ったまま、ゼインは値踏みするように俺を見下ろした。
冷たく整った顔は、いかにも神経質そうで、俺は彼を苛立たせている空気を感じ取っていた。

「正直に言いますが、俺はあなたを信用していません。救世主のふりをして、適当なことを言ってるんじゃないですか?字なんか、本当は読めていなかったりして」

唇を皮肉そうに釣り上げて、ゼインは静かに嘲笑う。
分かりやすく嫌なやつだ。けど、信じてもらえなくても、しかたないなと思う。
俺だって、俺みたいなやつが救世主として現れたら、めちゃくちゃ胡散臭く感じるだろう。

「よ、よめ、ちゃんと、読め、ました……」
「どうだか」

小馬鹿にしたように、息を吐くゼイン。

「俺は、15のときから10年も、あの方におつかえしているんです。いえ、俺だけじゃない。曽祖父の代からずっと、お世話になってます。忠誠を誓っています。シルヴァン様の一番のお役に立つのは、俺じゃないと駄目なんですよ」
「え、あ、えぇ……?」

そんなこと俺に語られても困る。
っていうか、もしかして、やきもち?焼いてる?
嫉妬してるんだろうか。
もしかして、こいつシルヴァンのこと、好きなのかな……。
主人としてじゃなく、人間としてでもなく、その、男として……?
なんか、胸がざわっとした。

「だいたい」

内容のわりに感情がこもらない声で、ゼインは続ける。

「本来なら、あなたはシルヴァン様に近づけるような立場じゃない。ご存知ないでしょうが、公爵位をお持ちの方なんですよ」
「……?」

コウシャク、イ?

「まさか、爵位を知らない?」
「シャ、クイ?」
「爵位すらご存知ないなんて、ずいぶん野蛮な世界からおいでになったのですね。シルヴァン様に失礼があってはいけませんから、教えて差し上げます。公爵位というのはーーー」

そこから30分ほど。
爵位について説明された。解説は分かりやすく、俺でも理解できた。シルヴァンは国王のつぎに偉い人、ということだった。
だから、くれぐれも無礼な振る舞いをしないように、それから、なれなれしくすることのないようにと、お説教をされてしまった。

「本来なら、あなたが気軽に口を聞けるようなお方じゃないんですよ」

そう繰り返されて、たしかにそうだよな……と納得した。するしかなかった。
爵位以前に、シルヴァンと俺とじゃ、住む世界が違いすぎる。陰キャの俺なんかが対等に話せる相手じゃないはずだ。
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