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「お、俺でよければ……、あの、や、役に立てるとは、思えませんけど」
というか、ほんとうに俺が救世主とやらなんだろうか。
とてもじゃないけど、そうは思えない。
シルヴァンは黙って俺に一冊の本を差し出した。
子どものころ、図書館で眺めた図鑑くらいの厚さと大きさをしている。
古びていて、装丁もところどころ傷んでいた。
不思議に思いながら受け取る。表紙には剥げかけた金色の文字で『Magic Eencyclopedia』と記されてあった。
「ま、マジック、エン、サイクロ……ペ……?……?な、なんですか、これ」
「読めるのかい。その文字が」
「あ、あえ、えと、え、英語、と、得意じゃないんで、マジックは魔法……ですよね、そのあとのは、よ、よく分かりません、すみません」
「ああ……シエル……」
シルヴァンは動揺しているようだった。
ど、うしよう。Eencyclopedia、が読めなかった俺は、穏和なウィザードを当惑させるくらいのバカだということだろうか。
「なかみは」
「え」
「開いてみて。読めるかどうか、確かめてほしい」
「は、はい」
英語の本なんて、読めるはずない。
タイトルすら読めなかった俺に、洋書なんて無理に決まってるだろ。
優しそうに見えたけど、本当は性悪な男なのかもしれない……。
そうだよな、俺に優しくしてくれるやつなんて、いるわけない。絆されかけた俺が悪いんだ。
やさぐれた気分でページをめくる。
「あ、れ?」
意外なことにそこに書かれていたのは、ふつーに日本語だった。
「な、なんだ、英語じゃない、……あの、魔法百科全書って……、こ、これって、なんなん、ですか」
「……シエル。やはりきみは救世主だ」
「え、え?」
「残念ながら、私たちには、その文字が読めないんだよ」
「えぇ……?」
「これを」
「はあ」
シルヴァンに渡されたのは、小さな長方形のカードだった。とても薄い貝殻のような素材でつくられている。角度によって微妙に色を変える光沢の上に、見たこともない文字……らしきもの、が刻まれている。
「私の名が書いてある。読めるかい?」
「い、いえ」
どうやら、これは名刺らしい。
それは分かったが、何が書いてあるかはまったく分からない。
「あ、あの……」
「うん、説明させてもらうよ」
耳触りのいい大人の男の声が、部屋の中にゆったりと響いた。
というか、ほんとうに俺が救世主とやらなんだろうか。
とてもじゃないけど、そうは思えない。
シルヴァンは黙って俺に一冊の本を差し出した。
子どものころ、図書館で眺めた図鑑くらいの厚さと大きさをしている。
古びていて、装丁もところどころ傷んでいた。
不思議に思いながら受け取る。表紙には剥げかけた金色の文字で『Magic Eencyclopedia』と記されてあった。
「ま、マジック、エン、サイクロ……ペ……?……?な、なんですか、これ」
「読めるのかい。その文字が」
「あ、あえ、えと、え、英語、と、得意じゃないんで、マジックは魔法……ですよね、そのあとのは、よ、よく分かりません、すみません」
「ああ……シエル……」
シルヴァンは動揺しているようだった。
ど、うしよう。Eencyclopedia、が読めなかった俺は、穏和なウィザードを当惑させるくらいのバカだということだろうか。
「なかみは」
「え」
「開いてみて。読めるかどうか、確かめてほしい」
「は、はい」
英語の本なんて、読めるはずない。
タイトルすら読めなかった俺に、洋書なんて無理に決まってるだろ。
優しそうに見えたけど、本当は性悪な男なのかもしれない……。
そうだよな、俺に優しくしてくれるやつなんて、いるわけない。絆されかけた俺が悪いんだ。
やさぐれた気分でページをめくる。
「あ、れ?」
意外なことにそこに書かれていたのは、ふつーに日本語だった。
「な、なんだ、英語じゃない、……あの、魔法百科全書って……、こ、これって、なんなん、ですか」
「……シエル。やはりきみは救世主だ」
「え、え?」
「残念ながら、私たちには、その文字が読めないんだよ」
「えぇ……?」
「これを」
「はあ」
シルヴァンに渡されたのは、小さな長方形のカードだった。とても薄い貝殻のような素材でつくられている。角度によって微妙に色を変える光沢の上に、見たこともない文字……らしきもの、が刻まれている。
「私の名が書いてある。読めるかい?」
「い、いえ」
どうやら、これは名刺らしい。
それは分かったが、何が書いてあるかはまったく分からない。
「あ、あの……」
「うん、説明させてもらうよ」
耳触りのいい大人の男の声が、部屋の中にゆったりと響いた。
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