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シルヴァンは困ったように笑った。
「だけど、話をしていくうちに、もしかしてと思うようになった。聞いたことのない土地の名前や、ラストネーム。それに、その髪の毛の色も瞳の色も、見たことがない。……それから、これは私の勘なんだけれど、きみに触れると、どこか不思議な心地がするんだよ。シエル、驚くのは無理ないが、とにかく私の屋敷に来てくれないか。きみの助けが必要なんだよ」
「あ、」
手を取られる。
それも、うやうやしく跪いて。
膝をついたシルヴァンが、俺の右手を宝もののように大切そうに持ちあげて、俺を見上げた。
上目づかいの瞳はひどく真剣で、俺を射抜くようだった。
視線を逸らせない。
「シエル……。お願いだよ。大切にする」
「あ、ぅ」
「約束するよ」
「ひょあ……」
手の甲に、押し当てられた。シルヴァンの唇。
うわ、うわ、え、あ、や、柔らかい……!
それがどんな類いのものでも、俺にとってキスはうまれて初めてだった。
ちなみに、これまでエロゲーとか、エロ漫画とか、えっちぃ動画で抜いてきたわけだけど、俺が一番興奮するのキスシーンだ。
それもイチャラブものがいい。愛し合ってる、って感じで、羨ましくて死ぬ。俺にはどうせ一生縁がないものだから。でも興奮する。
なんか、拗らせてる。自覚はまあ、ある。
だからシルヴァンに口づけられて、そういう意味じゃないと理解ていても、しかも手の甲なんだと分かっていても、俺はいっぱいいっぱいになってしまった。
「あ、や、やだ、し、シルヴァ……は、はなし、て、ぇ」
「放したら、屋敷に来てくれる?」
「い、行く、行きます、だ、だから、もう」
「……ああ、シエル」
俺の手を取ったまま、シルヴァンは立ち上がる。
唇が離れていく。
なんか、まだ押しつけられてるような、へんな感じが、する。
「きみに心からの感謝を」
「ふへぇっ」
ふわりと、頬に柔らかなものが触れた。
温かい。
手の甲に残った感触と、同じ体温。
「ありがとう」
耳のすごく近くで、ささやく声が聞こえる。
ほっぺたに、吐息がかかる。
あ。あああ、手だけじゃなく、頬にも、キキキ、キス、された……!
「ひょわ……」
「あぁ、シエル!?」
体からふぅっと力が抜けていく。
「も、む、むり、れひゅ……」
もつれる舌でようやくそれだけ言うと、俺のまぶたは勝手に閉じてしまった。意識が遠ぉ~くに落ちていく。
「うぶ、なんだな……。かわいらしいことだ」というつぶやきを聞いたような気がした。
「だけど、話をしていくうちに、もしかしてと思うようになった。聞いたことのない土地の名前や、ラストネーム。それに、その髪の毛の色も瞳の色も、見たことがない。……それから、これは私の勘なんだけれど、きみに触れると、どこか不思議な心地がするんだよ。シエル、驚くのは無理ないが、とにかく私の屋敷に来てくれないか。きみの助けが必要なんだよ」
「あ、」
手を取られる。
それも、うやうやしく跪いて。
膝をついたシルヴァンが、俺の右手を宝もののように大切そうに持ちあげて、俺を見上げた。
上目づかいの瞳はひどく真剣で、俺を射抜くようだった。
視線を逸らせない。
「シエル……。お願いだよ。大切にする」
「あ、ぅ」
「約束するよ」
「ひょあ……」
手の甲に、押し当てられた。シルヴァンの唇。
うわ、うわ、え、あ、や、柔らかい……!
それがどんな類いのものでも、俺にとってキスはうまれて初めてだった。
ちなみに、これまでエロゲーとか、エロ漫画とか、えっちぃ動画で抜いてきたわけだけど、俺が一番興奮するのキスシーンだ。
それもイチャラブものがいい。愛し合ってる、って感じで、羨ましくて死ぬ。俺にはどうせ一生縁がないものだから。でも興奮する。
なんか、拗らせてる。自覚はまあ、ある。
だからシルヴァンに口づけられて、そういう意味じゃないと理解ていても、しかも手の甲なんだと分かっていても、俺はいっぱいいっぱいになってしまった。
「あ、や、やだ、し、シルヴァ……は、はなし、て、ぇ」
「放したら、屋敷に来てくれる?」
「い、行く、行きます、だ、だから、もう」
「……ああ、シエル」
俺の手を取ったまま、シルヴァンは立ち上がる。
唇が離れていく。
なんか、まだ押しつけられてるような、へんな感じが、する。
「きみに心からの感謝を」
「ふへぇっ」
ふわりと、頬に柔らかなものが触れた。
温かい。
手の甲に残った感触と、同じ体温。
「ありがとう」
耳のすごく近くで、ささやく声が聞こえる。
ほっぺたに、吐息がかかる。
あ。あああ、手だけじゃなく、頬にも、キキキ、キス、された……!
「ひょわ……」
「あぁ、シエル!?」
体からふぅっと力が抜けていく。
「も、む、むり、れひゅ……」
もつれる舌でようやくそれだけ言うと、俺のまぶたは勝手に閉じてしまった。意識が遠ぉ~くに落ちていく。
「うぶ、なんだな……。かわいらしいことだ」というつぶやきを聞いたような気がした。
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