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自慢じゃないが、俺は猜疑心が強い。
マイナス思考は後ろ向きだからじゃない。実際に悪いことばかり起こっていたら、警戒するようになるのは当然だろう。
この美形が、俺に優しくするのだって、裏があるはず。
たとえば……そうだな。生贄?とか?
そうだ、油断して屋敷に連れて行かれたら最後、俺は黒魔術かなにかの生贄にされるんだ。
さっき死んだばかりなのに、また死ぬのか。
ほんっと、ろくでもない人生なんだけど。
「行こう、シエル」
シルヴァンが手を差し出した。
大きくてゴツゴツした手だ。大人の男の、手。
その手を握りたい衝動に駆られる。
うん。やっぱりな。こいつ、絶対俺に魔法かけてる。
じゃなかったら、男相手に手をつなぎたくなったるどきどきしたりしない。抱きしめられたい、とか思わない。絶対、絶対にだ。
「……」
俺は後退りをした。
どうせもう死んでるから、死ぬのはべつに怖くないけど、痛いのは嫌だ。
魔術の生贄っていったら、あれだろ。
謎の液体に満たされた釜に入れられて、グツグツデロデロに煮つめられるやつ。
めっちゃ苦しいじゃん、そんなの。断固拒否だ。
「シエル?どうした?」
「……俺、騙されません、から。な、なにか、隠してる、でしょ、どッ童貞ッ!舐めんな、ッ」
「すごいな。お見通しってわけだ。……童貞?」
「ほ、ほら、見ろ、ぉ!やっぱ、やっぱりじゃ、ねぇか!どどッ童貞ッとか、いま関係ない、だろ!」
「うーん、童貞はきみの発言なんだけれど……。その件についてはのちのち話をすることにして、……そうだね、シエルの言うとおりだ。きみに、まだ明かしていないことがある」
「い、生贄に、す、するん、だろ」
「生贄に?まさか。そんなことするわけないよ。きみは私たちの、救世主になるんだ。御宣託があっあんだよ。異界より現れし青年が、この世界を救う、とね」
「は、ぁ?そ、そんな、こと、信じられるわけ、な、ない、だろッ」
「そうだね。じつを言えば、私も信じていなかった。きみのことも、ただの迷子だと思ったよ、初めはね」
マイナス思考は後ろ向きだからじゃない。実際に悪いことばかり起こっていたら、警戒するようになるのは当然だろう。
この美形が、俺に優しくするのだって、裏があるはず。
たとえば……そうだな。生贄?とか?
そうだ、油断して屋敷に連れて行かれたら最後、俺は黒魔術かなにかの生贄にされるんだ。
さっき死んだばかりなのに、また死ぬのか。
ほんっと、ろくでもない人生なんだけど。
「行こう、シエル」
シルヴァンが手を差し出した。
大きくてゴツゴツした手だ。大人の男の、手。
その手を握りたい衝動に駆られる。
うん。やっぱりな。こいつ、絶対俺に魔法かけてる。
じゃなかったら、男相手に手をつなぎたくなったるどきどきしたりしない。抱きしめられたい、とか思わない。絶対、絶対にだ。
「……」
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どうせもう死んでるから、死ぬのはべつに怖くないけど、痛いのは嫌だ。
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めっちゃ苦しいじゃん、そんなの。断固拒否だ。
「シエル?どうした?」
「……俺、騙されません、から。な、なにか、隠してる、でしょ、どッ童貞ッ!舐めんな、ッ」
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「ほ、ほら、見ろ、ぉ!やっぱ、やっぱりじゃ、ねぇか!どどッ童貞ッとか、いま関係ない、だろ!」
「うーん、童貞はきみの発言なんだけれど……。その件についてはのちのち話をすることにして、……そうだね、シエルの言うとおりだ。きみに、まだ明かしていないことがある」
「い、生贄に、す、するん、だろ」
「生贄に?まさか。そんなことするわけないよ。きみは私たちの、救世主になるんだ。御宣託があっあんだよ。異界より現れし青年が、この世界を救う、とね」
「は、ぁ?そ、そんな、こと、信じられるわけ、な、ない、だろッ」
「そうだね。じつを言えば、私も信じていなかった。きみのことも、ただの迷子だと思ったよ、初めはね」
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