地味顔陰キャな俺。異世界で公爵サマに拾われ、でろでろに甘やかされる

冷凍湖

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「落ち着いた?」

ひぐひぐと、引きつるように鳴っていたのどが、シルヴァンのおかげで、少しずつ静かになっていく。

「は、ぁ、」
「そう、ゆっくり呼吸して」
「は、い……、はー、は、あ」
「じょうず。シエルはおりこうだね」
「あ……♡」

おりこうだなんて、まるっきり幼児扱いされているみたいだ。
ふだんの俺なら、ハァ?って思うだろう。
キレる。へたれだから内心で……だけど。
でも、シルヴァンにそういうふうに扱われるのは、ぜんぜん嫌じゃなかった。
それどころか、嬉しい。
こんなのが嬉しいって、なんか、めちゃくちゃ恥ずいってか、情けないけど、でも、嬉しい。
へら、と口もとがゆるんでしまう。

「笑ったね。うん、よかった」
「あ、あの、俺、その、す、すみません、や、やっぱり混乱してる、みたいで、び、びっくり、して、えっと、ここってどこ、なんですか。に、日本じゃないんでしょう、か」
「ニ、ホン?」

シルヴァンは上品に首をかしげた。

「はい、日本……。あの、ジャパン、です」

英語で言い直しても、やはり通じなかった。
形のいいカーヴを描く眉が、微かにひそめられる。

「ごめんね。日本……という国を、私は知らないんだ」
「そ、そう、ですか、あっ、じゃあ、じゃあ逆に、ここはどこ、なんですか?」

そこでようやく俺はあたりをを見まわした。
森の中、である。
時間は、たぶん昼過ぎ?くらい。
事故に遭ったのは、夕方だったはずなのに、木漏れ日から降りそそぐ太陽は、きらきらまばゆい。
土の匂い。花の匂い。小鳥のさえずり。木々の葉っぱが風に揺られるざわめき。
いい場所だな、と俺は単純に思った。
こんな状況でなければ、ピクニックでもしてみたくなるような森だ。

「逆に、ね」

シルヴァンはくすくすと笑った。
薄い唇の間から、行儀よく整列した歯がのぞく。

「シエルの話し方はおもしろいね。ここは、エメラという街の、ずっと外れの森だよ。どう?心当たりはあるかな」

俺は首を振った。えめら。聞いたことがない。
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