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「見ない髪の毛の色だね。それから……あぁ、瞳の色も」
「ふへっ」
男がじっと俺を見つめてきた。
いまだに腕の中にいるので、ものすごく顔が近い。
「……珍しい。興味深いな」
「え、あの、あぅ」
ちなみに。俺はしゃべるのがめちゃくちゃ苦手だ。
心の中じゃわりと流暢に憎まれ口を叩いているが、家でも学校でもバ先でも、ろくにしゃべる機会がなかったので、いざ話をしようと思うと、すぐろれつがまわらなくなってしまう。
「……?言葉が、分からない?」
「ん、や、ちが」
俺は首を振った。居心地が悪くてたまらない。
「どこから来たんだい?」
唇をハクつかせる俺に苛立つ様子もなく、男は穏やかな顔で、俺の言葉を待ってくれた。
「私はシルヴァンという名だが、きみは?名前は言えるかな?」
「あ、ほ、星野、です」
「ホシ……ノ。変わった響きだね。すごく素敵だ。それは、サーネームかな?」
「サーネーム……?」
「ホシノ。きみのラストネーム?」
サーネームは分からなかったが、ラストネームはたしか苗字のことだったはず。俺はこくこくとうなずいた。
「そうか。ファーストネームも、聞いていいかな」
「あ、え、えと。し、志得」
「シエル」
男は繰り返した。耳に心地のいい深みのある声だ。
それに、優しい。こんなに優しく名前を呼ばれたのは初めてかもしれない。
「シエル。いい名前だね」
にっこりと笑う。その笑顔に思わず見とれてしまう。
細められた目は、くっきりした二重まぶたで、その虹彩は、森林を思わせる緑色だった。深緑をふち取るまつ毛は、濃くて長い。髪はゆるくウェーブのかかった銀髪で、柔らかな日差しを弾き、宝石のように輝いている。
体つきはしっかりとたくましい。抱き寄せられた体はぶあつく、しっかりとした骨組みを感じる。服の上からでも。
そういえば、と俺はシルヴァンと名乗った男をまじまじと観察した。
あまりの美貌に目を奪われていて、気づくのが遅れたが、シルヴァンが身につけている、服。服が。
なんか、違う。
よれたTシャツと、色褪せたジーンズ姿の俺。
対してシルヴァンは、なんていうか、むかしの貴族?王族?が着てるみたいな、きらびやかな衣装を身につけている。で、似合ってもいる。
なんだろう……俺はやらないけど、バナー広告で見た乙女ゲームのプリンス……みたいな?
オウジサマにしては、歳がいきすぎてる気もするけど。
「ふへっ」
男がじっと俺を見つめてきた。
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「……珍しい。興味深いな」
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「……?言葉が、分からない?」
「ん、や、ちが」
俺は首を振った。居心地が悪くてたまらない。
「どこから来たんだい?」
唇をハクつかせる俺に苛立つ様子もなく、男は穏やかな顔で、俺の言葉を待ってくれた。
「私はシルヴァンという名だが、きみは?名前は言えるかな?」
「あ、ほ、星野、です」
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「サーネーム……?」
「ホシノ。きみのラストネーム?」
サーネームは分からなかったが、ラストネームはたしか苗字のことだったはず。俺はこくこくとうなずいた。
「そうか。ファーストネームも、聞いていいかな」
「あ、え、えと。し、志得」
「シエル」
男は繰り返した。耳に心地のいい深みのある声だ。
それに、優しい。こんなに優しく名前を呼ばれたのは初めてかもしれない。
「シエル。いい名前だね」
にっこりと笑う。その笑顔に思わず見とれてしまう。
細められた目は、くっきりした二重まぶたで、その虹彩は、森林を思わせる緑色だった。深緑をふち取るまつ毛は、濃くて長い。髪はゆるくウェーブのかかった銀髪で、柔らかな日差しを弾き、宝石のように輝いている。
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そういえば、と俺はシルヴァンと名乗った男をまじまじと観察した。
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なんか、違う。
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