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釈然としない気分で午後の業務をこなしていく。っていうか、さっきのまじか。新名は俺が好きだったのか。究極の二択に気を取られて聞き流してしまったが、俺、新名に告られた?まじか。どうすんだ、これ。
さんざん甘えて金を借りてきたものの、俺はやつをかわいい後輩だと思ってるし、大切な友達だと思ってる。けど、それ以上はない。絶対にだ。
なのに、あの新名がね……。
相手なんかいくらでも選びたい放題だろうに、よりによって俺か。容姿は平均より多少上かもしれないが、風俗に通うために借金するような男だぞ。
……うん、やっぱり趣味が悪いな。
そんなことを考えているうちに、あっという間に終業時間になってしまう。
「道端先輩、行きましょうか」
「……おー」
デスクで帰り支度をしていると、新名に声をかけられた。俺はしぶしぶうなずいた。
「晩飯、蟹しゃぶのコース予約したんですけどよかったですか?先輩蟹好きですよね」
「好きだけどさあ……」
「あっ、もしかして蟹の気分じゃなかった?べつの店にしましょうか」
「や、蟹でいいです」
新名はめちゃくちゃ楽しそうだった。
いまだに信じられないが、こいつ、俺のこと好きなんだよな……。惚れた相手と初デートか。しかもベッドインが確約されている。そう考えると、弾むようなこのテンションも理解できなくもない。
こうなったら、たらふく蟹を食ってやる。あと酒もめちゃくちゃ奢らせる。初めて男に抱かれるってときに、しらふでいられるわけない。
いくら新名がいい男でも、ほかの男に抱かれるよりはよっぽどましだったとしても、しょせんそれはナシの中のアリでしかない。
なんか混乱してきた。正直すげぇ動揺してる。けど、悟られるのは悔しくて、しれっとした顔で新名について行った。
「先輩、蟹おいしかったですか?」
「ん~♡うまかったあ」
「お酒もたくさん飲んじゃいましたね。酔っぱらってる先輩かわいい。足もと気をつけてくださいね」
「うん」
満腹で店を出る。新名が選んだ蟹しゃぶの店は最高だった。しゃぶしゃぶだけじゃなくて、蟹の刺身や和風蟹グラタン、それから寿司なんかも出る蟹づくしの豪華コースに大満足だ。
ふだんあまり飲まないアルコールもずいぶん飲んだ。酒は嫌いじゃないが、酒代にまわす金があるならソープに行きたい。俺の価値観はそんな感じ。
今回は新名の奢りだから久しぶりにふらつくまで飲んだ。それにこの後にセックスが控えてるんだと思うと、飲まないではいられなかった。
「ここです、入りましょう」
「あー……」
ラブホについてしまった。ここまで来たらいよいよ逃げられない。新名は俺の手を取った。恋人つなぎされて、打ちっぱなしの箱の中へとエスコートされる。新名の手は指の先まで温かくて、この手で今から触られるのかと思うと、奇妙に心がざわついた。
さんざん甘えて金を借りてきたものの、俺はやつをかわいい後輩だと思ってるし、大切な友達だと思ってる。けど、それ以上はない。絶対にだ。
なのに、あの新名がね……。
相手なんかいくらでも選びたい放題だろうに、よりによって俺か。容姿は平均より多少上かもしれないが、風俗に通うために借金するような男だぞ。
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